【動画】26年ぶりのふるさとの地で、生活を再開するために(2)
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、スリランカの内戦中に避難生活を余儀なくされた人々が故郷に帰還後の生活を再建するための支援を2009年から続けています。2012年7月からは、北部のムラティブ県ウェリオヤ郡にて、生計支援パッケージを配布しています。前回のルポに引き続き、今回は農業パッケージと畜産パッケージの受益者をご紹介します。
▼前回の記事はこちら
2012.11.02【動画】26年ぶりのふるさとの地で、生活を再開するために(1)
https://global.peace-winds.org/jp/act/srilanka/121102_1500.html
生計支援パッケージ×トレーニング
生計支援パッケージは、人びとの希望に応じて提供しています。畜産パッケージでは、鶏・ヤギ・牛のいずれかを選ぶことができます。一方、農業パッケージとしては、水ポンプ、農作物の種子などを受け取れます。
PWJはパッケージの配布だけでなく、行政と連携して農業と畜産のトレーニングを実施しました。農業トレーニングでは、農業普及員がバナナの皮やココナッツの殻を用いて鉢植え代わりにし、野菜の苗を栽培する方法を紹介しました。畜産トレーニングでは、獣医が家畜の予防接種や雨季での飼育方法の注意点について説明しました。
環境や気候に左右されやすい農業と畜産業ですが、新しい栽培方法や、家畜が病気にかかった際の対処法を学ぶことができました。
農業普及員によるトレーニング
配布する牛は獣医により選定される
畜産パッケージ
ランジット バンダラさん(46歳)夫妻は、畜産の牛パッケージを選び、妊娠中の牝牛を受け取りました。子牛が産まれたら、搾ったミルクを売って生計に役立てることができます。また、牛の糞と生ごみを混ぜて発酵させた堆肥を、農作物の肥料としても活用しています。これまでは、農作物を育てたくても肥料を買うお金がなく、牛糞はトラクター1台分当たり約400ルピー(約250円)で買わなければなりませんでした。しかし、今はお金をかけずに自分で作ることができるようになりました。
ランジットさん夫妻にインタビューするPWJ佐藤
「私たちは、これまで誰からも何も支援を受けられませんでした。PWJからの支援が初めてです。今は、牛糞を使って農作物を育てることができます。子牛が産まれたら、ミルクを売ることもできるし、栄養のある食事を摂ることができます。いつもお礼を言いたかったけれど、言葉の壁があり、うまく伝えられませんでした。今日は(シンハラ語、タミル語、英語を話せるスタッフのおかげで)この機会に感謝の気持ちを伝えたいです。」
この地域の住民はシンハラ人で、現地スタッフはタミル人のため、タミル語とシンハラ語の両方を話せる現地の人を短期間雇用することにしました。タミル人スタッフも、言葉の壁にぶつかりながらも真摯に受益者と向き合っていました。今回の支援を通して双方の気持ちがさらに通じ合ったように思います。彼らの姿を見て、市民レベルでの民族融和は可能なのだということを感じました。
農業パッケージ
ピヤセーナさん(63歳)は、農業パッケージを選びました。避難する前は20エーカー(約81,000 m2)以上の土地を持ち、主に稲作を営んでいました。しかし、現在その土地は、スリランカ軍の基地となっています。16歳の時から農業に携わってきた彼は、スイカの名産地であった避難先で、新たにスイカの栽培方法を学びました。故郷に帰還してからも、長年の農業経験を活かし、PWJから提供された水ポンプを使って、この地では初めてのスイカ作りに挑戦しています。
(右)ピヤセーナさん夫妻、(左)故郷で作られたスイカ
「この辺りでは、気候や土質の関係でスイカは作られていないので、とても珍しいのです。高く売れるかもしれません。」そう笑いながら、まだ熟れていないスイカを私たちのために切ってくれました。長期に渡る避難生活で得た知識や経験を活かして力強く前向きに生きていく姿勢が、とてもたくましいと感じました。
雨季を迎えたスリランカでは、雨の恵みを存分に受けながら、農作物や植物がすくすくと育っています。その植物をえさに家畜を育てながら、人びとは営みを再開しています。昨年はサイクロンや干ばつに見舞われ、農作物や畜産業に大きな影響がありましたが、PWJの支援が、少しでも人びとの生計再建につながることを願っています。