住民と行政の関係強化を目指して
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、2009年からスリランカで支援を展開しており、2012年7月からは、北部州ワウニア県とムラティブ県にて、仮設住宅の建設および生計支援パッケージの提供を始めました。この事業は、帰還先で、家もなく、農地も荒れ放題で、家畜も持たない人びとが、少しでも早く安定した生活を始められることを目的にしています。今回は、この事業の実施過程における住民や行政とのかかわりについて紹介します。
住民組織との連携
スリランカの村では、複数の住民組織を形成し、選出されたメンバーが、村を代表して政府の行政官と話合いを進めます。村の主な住民組織としては、自治組合や女性自治組合、寺組合、農業組合などがあります。住民組織のメンバーは、住民や村の現状について精通しているため、PWJは計画段階からモニタリングまで、これらの住民組織と協力して事業を進めます。
住民組織のメンバー
住民組織トレーニングと事業の継続性
行政と住民組織とが良い関係にあることは、村の開発に不可欠ですが、長年の対立や、行政の役割が周知されていないことから、行政官と村民の間の関係が構築されていないこともあります。そこで、事業が円滑に継続されるよう、PWJは住民組織向けのトレーニングを実施することで、住民組織の能力を高めるとともに、行政との関係が強化されることを目指しています。
真剣にノートをとる参加者
トレーニングの3つの狙い
1.住民組織としての役割を理解し、自力で運営できるようになる。
2.村の事業にリーダーシップを持って参加し、一緒に創り上げていくことの重要性を理解する。
3.事業の受益者を選定する上での公平性と議論の透明性について理解する。
PWJは、住民組織および政府行政官とともに、事業の受益者を選定しています。その際には、個人的な利害関係(友人や親戚)を優先せず、より支援が必要な人たちへ必要な支援を届けるように配慮する重要性、皆で話し合いながら合意形成していくことの重要性を伝えます。
講師は行政官
村人との関係作りを促すため、トレーニングの講師を住民組織担当の郡行政官に依頼しています。この住民組織のトレーニングの講師として、初めて村人たちと直接話したという人もいて、このトレーニングは、講師たちにとっても、よい学びの機会となっています。読み書きができない村人もいるため、講師は例えば、リーダーシップの役割を説明するのに、鳥が群れになって飛ぶ様子の絵を示すことで、村人が団結して物事を進めていくことの重要性を表すなど、分かりやすく伝えるための工夫をしています。
また、PWJの支援内容と照らし合わせながら、仮設住宅を建てるための物資を配布するにはどうしたらよいか、ゲーム感覚で楽しめるように、工夫を凝らしていました。
絵を用いた物資配布のシミュレーション
「私の村のために、一生懸命がんばりたい」
トレーニング終了後のアンケートでは、「今回初めて住民組織について学ぶことができ、大変ためになった」、「住民組織のメンバーだけでなく、家族や村人全員に内容を共有したい」、「みんなが連携して組織を運営していくことの重要性を伝えていきたい」、「私の村のために、一生懸命がんばりたい」との回答が寄せられました。
さらには「同じようなトレーニングをまた受けたい」という声もありました。
PWJは、緊急支援物資の提供を通して、事業終了後も、住民自らが行政と協力して生活環境を改善できるコミュニティづくりを目指し、支援を継続していきます。