【パラオ】2年ぶりに南西諸島での検診を実施しました!
2年ぶりにたどり着いた600㎞離れた島での検診
ピースウィンズは、2025年2月10日から16日にかけて、パラオの南西諸島で生活習慣病の早期発見を目的とした健康診断を行いました。南西諸島は、首都コロールから約600km、船で最長38時間以上かかる離島地域です。いくつかある離島の中で、今回はソンソロール島、プルアナ島、トビ島、そして初めてヘレン環礁へ巡回検診を行いました。

なぜ検診が必要なのか?
パラオの離島には医療機関が少なく、特に今回検診を実施した南西諸島地域は、医師も看護師もいない孤島群で、何かあってもすぐに診察・検査・治療を受けるのが難しい状況です。高血圧や糖尿病の人にとっては、薬を手に入れることさえ大きな課題となっています。そのため、島民たちは、できる限り自分自身で病気やけがから身を守っていくしかないのです。
そこで、ピースウィンズはパラオの保健省と協力し、3年間にわたり離島を含むパラオ全土で検診を続けてきました。検診を通じて病気の早期発見をし、生活習慣を見直すことで生活習慣病を予防するとともに、薬が必要な人にすぐ処方できるよう保健省と患者情報の連携を行っています。ピースウィンズの検診では、以下の検査を行っています。
■体重、身長、腹囲の測定
■血圧測定
■尿検査
■血糖値(HbA1c)の測定
■医師の診察
■必要に応じた血液検査、エコー、心電図

KENSING号と南西諸島での検診と啓発活動
南西諸島での検診は、2023年4月にピースウィンズが運航管理していた船舶「KENSING I号」を使い、初めて実施されました。今回2回目となる検診は、新しく日本からパラオにやってきた船舶「KENSING II号」を使用しました。2024年4月に検診を計画していましたが、船のトラブルにより中止を余儀なくされました。そのため、今回の検診活動は、昨年たどり着けなかった思いを胸に、私たちピースウィンズスタッフにとっても特別な意味を持つものとなりました。
今回の検診には、ピースウィンズの医師1名、看護師2名、調整員1名、そしてパラオコミュニティカレッジ(PCC)の看護学生3名が参加しました。ピースウィンズでは、現地の医療従事者だけでなく、地域のコミュニティヘルスワーカーや看護学生などを検診の実践に受け入れ人材育成にも力を入れるようにしています。4つの島で検診対象住民の90%以上にあたる45名が検診を受けました。島民の皆さんは2年前の検診を覚えており、前回配布した「Health Passport(検診の結果を記録した手帳)」を大切に保管し、今回の検診にも持参してくれました。島民からは、「これで日本の医師にも診てもらえるパスポートを手に入れた!安心だー」と冗談を言いながら、遠くの島までわざわざ来てくれた感謝の言葉をあふれるほどもらいました。

トビ島では、医師や看護師が常駐しておらず、定期的に到着する船も少ないため、薬を手に入れる機会がなく、高血圧の治療中にもかかわらず、2カ月間も服薬を中断せざる負えない患者さんもいました。その方の血圧は危険なレベルまで上がり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが非常に高い状態でした。ピースウィンズはこの情報を現地の保健省と共有し、確実に薬が届くように連携を進めています。
また、NCDの予防には生活習慣を見直すことが大切です。島民にきいたところ、料理で使う砂糖や塩の量について、目分量で入れている人が多いことが分かりました。ジュースや加工食品に入っている砂糖や塩は、 どのくらいなのかをクイズ形式で確認した後、自分たちがどのくらいの砂糖や塩を使っているのかを知るために、スプーンで計って料理をすることを呼びかけました。

初めてのヘレン環礁での検診
今回初めて訪れたヘレン環礁は、徒歩10分で一周できるほどの小さな島です。そこには、海難事故の初動対応を行う海上警備隊員が生活しています。ヘレン環礁に駐在する女性隊員の一人は、「ここでの生活は、雨水を貯めて飲み水を確保し、3か月ごとに船で物資を受け取っています。しかし、天候によっては水が確保できず、物資が届かないこともあります。それでも、パラオのために働いていることを誇りに思い、やりがいを感じています。」と語ってくれました。

彼女は検診でHbA1c値(糖尿病の診断指標の一つ)が高いことが判明し、国立病院へ紹介されることになりました。「私は血糖値が高いとは思っていなかった。でも、医師の話を聞けて良かった。ここまで来てくれてありがとう。」と話してくれました。この検診の目的である早期発見、治療につながったケースの一つです。
4つの島を合わせても50名足らずの島民、そこにたどり着くには大きな資金と労力・精神力(船酔い続出)がかかりました。それでも、検診で「尿検査は異常なし!」と太鼓判を押された島民の安心した笑顔は尊いと心から思った航海でした。

島の皆さんは、私たちを温かく迎えてくださり、検診への感謝の言葉をいただきました。また、悪天候の中でも検診に足を運んでくださり、島民の皆さんの健康への関心の高さを改めて感じました。
ピースウィンズは、これからもパラオの離島で検診を続け、島の皆さんが健康に暮らせるよう支援していきます。この活動を継続するためには、皆様のご支援が必要です。引き続き、温かいご協力をよろしくお願いいたします。
