耐震工法のモデルハウス完成目前、普及へ2日に研修会
イラン南東部地震の被災地バムの住宅展示場に、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が建設を進めている耐震工法のモデルハウスが完成目前です。レンガ住宅に住むことに不安を感じる住民たちも、現地の風土に合わせたPWJの耐震工法を知り、住み慣れた形の住宅を再建することに意欲を取り戻しているようです。耐震工法の普及を図るため、現地では11月2日にワークショップ(研修会)が開かれ、PWJなども発表を行います。
PWJは、イランのバムで2003年12月26日に発生した地震直後に現地に入り、以後、継続して支援を行っています。水、ストーブ、テントなどの緊急支援物資の配布を経て、仮設校舎設置などの復興支援へと移行。今年の5月16日には、建物倒壊の分析や耐震工法の普及、阪神・淡路大震災やトルコ、インドの震災復興経験の共有を図るため、被災地で初の本格的なワークショップを開き、建築技術者ら200人以上を集めました。耐震工法を紹介するため、ワークショップに合わせて住宅公社の敷地内にデモンストレーションモデルを建設。ワークショップとともに大きな反響を呼び、イラン住宅公社から住宅復興の展示場建設にぜひ参加してほしいとの要請を受けることにつながりました。住民は自宅再建する際、展示場にあるモデルから形式を選ぶと、住宅公社から金銭的補助や税金の免除を受けることができます。
写真左:完成間近のモデルハウス
写真右:耐震性を考えた工法を採用
(C)Peace Winds Japan
バム市郊外の展示場で、PWJが7月から建設しているモデルハウスは、バム周辺で伝統的に使われてきた組積造(レンガを積上げた構造)とデザインを生かした工法。PWJのインドでの震災支援やアフガニスタンでの耐震技術普及の経験を反映させた耐震建築です。完成が近づくと、連日、多くの市民が訪れ、PWJの工法について熱心に質問をしていきます。伝統デザインというと地震での悲惨な体験を思い出して怖がる人も多いのですが、耐震性について説明した後は、PWJの工法に関心を示します。安全さえ保証されれば、住み慣れた形の家に住みたいという気持ちを持っている人が多いようです。
写真左:住宅展示場を訪れた市民
写真右:シェークテーブルテスト用のモデル
(C)Peace Winds Japan
展示場ではいくつものNGOやイラン国内の建設業者がそれぞれの考えるモデルハウスをつくっていますが、PWJでは理解を図るため、他団体が用意していないペルシャ語のパンフレットや案内板も作っています。また、今後の普及方法を検討するため、アンケートも実施しています。
11月2日には、この展示場で、神戸のNGO「海外災害援助市民センター」(CODE)や国際連合地域開発センター(UNCRD)などとPWJが協力して、耐震性能を比較する「シェークテーブルテスト」を中心としたワークショップが開かれます。バムの伝統的な「組積造」と「組積造に耐震技術を加えたPWJ工法」の10分の1の大きさの住宅モデルを振動台に乗せ、地震のような揺れを人工的に起こして、耐久構造を比較します。
こうした一連の取り組みを通じ、PWJは、被災地の復興と地震に強いコミュニティーづくりに支援していきたいと考えています。