【ウクライナ】「着弾すれば『壁2つルール』は意味をなさない」-生存者が語るミサイル攻撃
7月のロシア軍による大規模攻撃では、小児病院だけではなく、キーウ市内の住宅地も大きな被害を受けました。シェフチェンスキー地区の5階建て集合住宅にも、ミサイルが直撃。建物が倒壊したり、部屋が吹き飛ばされたりし、多くの住民が一瞬にして家を失いました。ピースウィンズは8月14日、ウクライナ赤十字とともに、被害にあった150世帯に緊急支援物資を届けました。
今回この支援物資を受け取ったタチアナさんが、当時の様子を語ってくれました。今回のミサイル攻撃で、彼女が住んでいた建物も跡形なく崩れ去りました。
タチアナさんは、攻撃があった7月8日の朝、空襲警報を聞いて、徒歩圏内にある地下鉄の駅に避難していました。一方、同じ集合住宅に住む一部の住民は、毎日のように鳴り響く警報に心も体も疲弊。「警報慣れ」し、シェルターに避難することをやめていました。その代わり、爆風から身を守るため窓から少なくとも壁2つ隔てた場所への移動を推奨する「壁2つルール」に従っていました。窓から離れれば生存確率は上がるものの、決して安全というわけではありません。その日も、彼らはいつものように2つの壁で隔たれた廊下やトイレにいました。そこにミサイルが直撃するという悲劇が起こりました。
警報が解除されてタチアナさんが家に戻ると、破壊された建物、炎と煙、助けを求める人々で現場は大混乱しており、「みんな叫んでいてとても怖かった」と当時の惨状を語りました。間もなく救助隊が到着。建物内に取り残されたり瓦礫に埋もれたりした人々の救出が始まりました。しばらくして、崩れた建物の下から17歳の少女の遺体が見つかりました。彼女は飼い猫とともに廊下にいて命を落としました。崩れた建物の下敷きとなった子ども5人を含む13人が犠牲となりました。タチアナさんは、犠牲となった人々のこともよく知っていました。
「ミサイルが直撃すれば『壁2つルール』はまったく意味をなさない」と、悲痛な面持ちでつぶやきました。
被害にあった集合住宅の人々は、いま、避難所や親族の家に身を寄せています。ピースウィンズは今後も、このようなロシア軍による攻撃で被害し、避難生活を余儀なくされている人々を支援します。