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【ケニア】「飢えか、帰還か」生存の危機が続くカクマ難民キャンプの現状

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ケニア北西部の乾いた大地に広がるカクマ難民キャンプには、南スーダンやソマリア、コンゴ民主共和国、ブルンジなどから逃れてきた約30万人の難民が暮らしています。この難民キャンプは彼らが命をつなぐための避難先であるはずでした。しかし今、この地では生きることそのものが難しいという状況にあります。

子どもたちに1日1食しか与えることができない

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カクマに暮らす人びと

今年3月、国連世界食糧計画(WFP)は深刻な資金不足により、一人につき1ヶ月に9kgは最低限必要とされる食料の配給を、わずか3kgにまで削減しました。配られるのは米やレンズ豆、少量の食用油だけ。

南スーダン難民の母親リリアンさん(仮名)は、3人の子どもを育てていますが、「今では1日1食しか子どもたちに与えることができません。子どもたちは空腹で泣きながら寝るしかありません」と語ります。配付物では補えない食料を、市場で野菜や肉を買うために支給されていた現金給付も止まり、多くの子どもたちが栄養不足に追い込まれています。

助けられるはずの命が失われていく

現地の医療施設では、急性栄養不良で入院する子どもたちが急増しています。2025年4月に146人が治療を受け、そのうち15人は命を落としてしまいました。診察を待つ母親たちは疲れた表情で赤ん坊を抱え、栄養不良で泣く力もない子どもたちを見守っています。医療施設のスタッフは、「助けられるはずの命が、治療食の不足で失われていく現状を見るのはつらいです」と話します。

深刻な水不足に食料配給の削減と制度変更により現場は限界に

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居住エリアに十分な水が届かず、地面を掘って水をくむ子ども

ピースウィンズは、カクマ難民キャンプで給水設備の整備や維持管理、トイレの設置、衛生行動の普及など、水と衛生を守るための支援を続けています。極度に乾燥し、昼間は気温が40度近くまで上がるカクマでは、水を十分に得られるかどうかが生存を左右します。

ところが、近年は資金不足が深刻化し、井戸で地下水を汲み上げるための燃料や施設を運営する人員、壊れた水道管や井戸を修理する部品が足りず、安全な水を安定して届けることが難しくなっています。その結果、2025年4月以降、一人当たりの給水量は1日15リットルにまで減少し、開発期における最低基準である20リットルを大きく下回っています。

水の不足は生活全体に影響を及ぼしており、さらに食料配給の削減とあわせて現金給付も打ち切られたため、追い詰められた一部の難民は、水道管に穴を開けて水を盗み、それを売ってわずかな現金を得ようとするようになっています。

飢えのスピードのほうが早い

こうした中、飢えに耐えきれず、難民として避難してきたケニアから南スーダンへ帰る人びとが増えています。6月以降、9,300人以上がカクマを離れました。しかし帰還先の南スーダンも、政情不安、民族間紛争、物価高騰等により安全かつ最低限生活が保証されるとは言えません。人びとは「ここでは飢えます。でも帰れば命を落とすかもしれません」。このような“選べない選択”を迫られている人が少なくありません。

さらに、2025年8月に導入された「差別化支援(Differentiated Assistance)」は、難民世帯を「脆弱性」に応じて分類し、配給量を変える制度です。限られた資源を最も必要とする人に届けることが目的ですが、実際には「自立可能」とされ、支援を打ち切られた人びとの多くが安定した収入源を持たず、食料支援を失ったことで深刻な食料不足に直面しているとも指摘されています。

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給水の状況について話す難民と当団体スタッフ

ピースウィンズは主に、給水・衛生・食料安全の三つの側面から支援を続けていますが、食料配給の削減や制度変更による影響は大きく、現場は限界に近づいています。現地で活動するスタッフはこう語ります。

「水を確保し、家庭菜園で野菜を育てる支援をしても、飢えのスピードのほうが早いのが現実です。だからこそ、この現状を知ってもらうことが大切だと思います。」

支援の網からこぼれ落ちる人びとが増え、多くの人びとが飢えと帰還の狭間で揺れるカクマ難民キャンプ。難民を統合した社会開発を掲げる一方で、生き延びることすら困難になった現実に直面しています。

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