気候変動と災害#03|SDGsとは?気候変動への具体的な対策と私たちにできること


近年、気候変動による自然災害の増加や気温上昇が深刻化し、私たちの生活や未来に大きな影響を及ぼしています。こうした問題に対処するため、国際社会が掲げる目標の一つがSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)です。なかでも目標13「気候変動に具体的な対策を」は、温室効果ガスの削減や環境保護を進める上で、私たち一人ひとりの意識と行動が欠かせません。連載「気候変動と災害」を考える今回は、SDGsと気候変動の関係や各国の取り組み、そして私たちが日常生活で実践できる具体的なアクションについて解説します。
SDGsとは?

SDGsは、より良い未来を築くために国連が定めた指標です。はじめにそもそもSDGsとはなにか、また目標13の概要や、パリ協定との関連について解説していきましょう。
SDGsの概要
SDGsは、2015年の国連サミットで採択された持続可能な社会の実現に向けた国際目標です。17の目標と169のターゲットで構成されています。
最大の特徴は、「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」という理念のもと、発展途上国から先進国まで、すべての国が協力しながら目標達成に向けて取り組む点です。具体的には、環境問題の解決、経済の安定成長、ジェンダー平等の推進など、幅広い社会課題に対応することが求められています。
また、SDGsの達成には政府や企業だけでなく、エネルギーの節約やエコバッグの使用など、私たち一人ひとりの身近な行動が不可欠です。
SDGs目標13について

SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」は、地球温暖化や異常気象の影響を軽減するため、迅速な行動を求めています。産業革命以降、人間の活動、特に化石燃料の使用が気温や気象に影響を与え、食料不足や水不足など深刻な問題を引き起こしていることから、温室効果ガスの排出削減と気候変動への対応を主な課題としています。
SDGsとパリ協定
SDGsとパリ協定は、どちらも気候変動に関する国際的な枠組みですが、対象範囲が異なります。2015年12月の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)にて採択されたパリ協定は、地球温暖化対策の国際協定です。温室効果ガスの排出削減を目的としており、主な目標は以下のとおりです。
●気温上昇を産業革命前比で2℃未満に抑え、可能なら1.5℃未満にする
●各国が自主的に削減目標(NDC)を設定し、取り組みを強化する
※2021年のCOP26で「グラスゴー気候合意」が採択され、1.5℃が事実上の国際目標となりました
一方、SDGsは貧困や不平等など幅広い課題に取り組むなかで、目標13を通じて気候変動対策を強化します。パリ協定とSDGsは、気候変動に対する取り組みを補完し合い、持続可能な未来を実現するための重要な枠組みといえます。
世界各国と日本の取り組みと進捗状況
2024年のSDGs進捗評価によると、2030年までに達成可能なターゲットは169のうち17%にとどまり、18%は停滞、17%は後退しています。目標13の気候変動については30%以上後退しており、対策の強化が急務です。

日本はSDGs達成度で167カ国中18位にランクインし、昨年から3ランク上昇しました。しかし、目標13(気候変動対策)を含む5つの目標では依然として課題が残り、改善の遅れが指摘されています。特にCO2排出量や化石燃料依存度が高く、今後の取り組み強化が求められています。
2023年SDGs達成度ランキング
順位 | 国名 | スコア |
1 | フィンランド | 86.4 |
2 | スウェーデン | 85.7 |
3 | デンマーク | 85 |
4 | ドイツ | 83.4 |
5 | フランス | 82.8 |
6 | オーストリア | 82.5 |
7 | ノルウェイ | 82.2 |
8 | クロアチア | 82.2 |
9 | イギリス | 82.2 |
10 | ポーランド | 81.7 |
18 | 日本 | 79.9 |
世界の取り組み
世界では目標達成に向けたさまざまな施策が実行されています。ここでは、環境問題に早くから取り組んできたデンマークと北欧諸国、グローバル企業Amazonの取り組みをご紹介します。
デンマーク
デンマークは、1970年代から化石燃料からの脱却を目指し、再生可能エネルギー、特に風力発電を推進してきました。その結果、ヴェスタスやオーステッドといった世界的な風力発電企業が誕生しています。
また、2019年には2030年までに1990年比でCO₂排出量を70%削減し、2050年までに実質ゼロを目指す「気候法」を可決しました。これらの取り組みは、政府の積極的な政策、企業の努力、そして国民の協力によって支えられています。
ノルディック・スワン・エコラベル
「ノルディック・スワン・エコラベル」は、北欧5カ国が運営する環境制度(1989年制定)です。商品の生産から廃棄までの環境負荷を考慮し、基準を満たした製品にラベルが付与されます。2022年時点で40,000以上の商品が認証を取得しました。
また、EUのエコラベルとも協力し、国際的な環境基準の向上に貢献。企業や国民の意識改革を促し、行動変容を支える制度として、国境を越えて重要な役割を果たしています。
Amazon
Amazonは、環境負荷の低減に向けた取り組みを強化しています。2023年には、当初の予定より7年早く、事業全体の電力を100%再生可能エネルギーでまかなう目標を達成しました。さらに、輸送網の電動化を進め、2万4,000台以上の電気自動車を導入。梱包材の削減にも取り組み、プラスチック製緩衝材を紙製に置き換えています。
また、気候誓約基金を通じて企業のカーボンニュートラル化を支援し、再生可能エネルギーの普及と脱炭素化の加速に寄与しています。
日本の取り組み
日本政府はSDGs目標13に基づき、地球温暖化対策計画と第7次エネルギー基本計画を閣議決定し、温室効果ガスの削減目標を掲げています。具体的には、以下のとおりです。
●2035年度までに2013年度比60%削減(2040年度には73%削減)を目指す
●再生可能エネルギーを2040年度までに電源構成の4〜5割を占めるよう導入する
さらに、2050年にはカーボンニュートラル達成を目指し、気候変動対策と脱炭素社会の実現に向けた積極的な取り組みを推進しています。
気候変動対策で個人でできること

気候変動対策は国や企業レベルで進められていますが、SDGsの目標を達成するためには個々人が自覚を持ち、行動することが求められます。以下に、個人ができる具体的な行動についてご紹介します。
省エネを意識し、エコ家電を導入する
日常生活の中で節電を意識し、LED電球の使用や省エネタイプの家電を導入しましょう。冷暖房の使用を控えめにし、適切な温度設定を心掛けることで、エネルギー消費を削減できます。
再生可能エネルギーの利用
電力会社が提供する再生可能エネルギーのプランを選択する、または自宅に太陽光発電を導入するなど、化石燃料の消費を減らすための対策を講じます。
移動手段を見直す
自動車の利用を減らし、公共交通機関や自転車、徒歩での移動を積極的に取り入れましょう。環境負荷を軽減できるだけでなく、健康維持にもつながります。日常的に体を動かすことで、心身の健康を守りつつ、地球にも優しい生活を実現できます。
食生活を見直す
食品ロスの削減や地元産食材の利用、肉の消費を控えることも気候変動対策の一環です。少し意識を変えるだけで、食料生産にかかるエネルギー消費や温室効果ガスの排出を減らせます。
使い捨てプラスチックを減らす
エコバッグやマイボトル、マイカトラリーの使用を習慣化し、プラスチックごみの削減に努めましょう。リサイクル可能な製品を選び、適切に分別する行動も重要です。
環境に配慮した企業を支援し、情報を発信する
環境問題に積極的に取り組む企業の商品を選び、持続可能な消費を心掛けましょう。さらに、SNSなどを活用し、気候変動に関する情報を広めることで多くの人の意識改革に貢献できます。
小さな行動の積み重ねが、やがて大きな変化につながります。国や企業だけでなく、私たち一人ひとりも気候変動対策に積極的に取り組むことが気候変動を食い止めることにつながるのです。
ピースウィンズの取り組み|災害で苦しむ人びとを支援する

私たちピースウィンズは、気候変動が引き起こす自然災害で苦しむ人びとに対し、人道支援活動を行っています。これらの活動は、SDGsの目標である「貧困をなくす(1)」「飢餓をゼロに(2)」「すべての人に健康と福祉を(3)」「安全な水とトイレを世界中に(6)」などにも該当し、気候変動による災害によって被災した人びとの命を守り、生活再建へとつながっていきます。
アフリカを絶え間なく襲う気候変動の被害
2019年、大型サイクロン“イダイ”がアフリカ南東部に位置するモザンビークを襲い、甚大な被害をもたらしました。ピースウィンズは被災地に支援チームを派遣し、食料や生活必需品の提供、避難所の設営など緊急支援を実施。しかしその後もモザンビークは、ほぼ毎年のようにサイクロン被害が発生し、2024年12月にも大きな被害を受けました。
同年4月29日には、3月から続く大雨による影響で、東アフリカのケニアでダムが決壊し大規模な洪水が発生。ケニアを含む東アフリカ地域一帯で深刻な被害が出ました。アフリカは、気候変動の主な原因とされる温室効果ガスの排出量は世界でも少ないにもかかわらず、その影響を深く受けています。
【関連記事】気候変動と闘う。アフリカ・ケニアで起きている“不公平な”人道危機とは

バングラデシュ、ベトナム、連続した台風被害

2024年8月22日、バングラデシュでモンスーン豪雨による大洪水が発生、南東部の主要都市フェニなどを中心に約580万人が被害を受け、多くの人々が生活の場を失いました。ピースウィンズは、東南部4県にわたり、約5,600世帯に食料や衛生用品を配布する支援活動を実施しました。
その直後の2024年9月7日には、最大風速時速166キロを記録した大型台風11号(ヤギ)がベトナム北東部のクアンニン省海岸に上陸。21人の犠牲者を生み、229人が負傷する甚大な被害が発生。ピースウィンズは、大きな被害を受けたベトナムに緊急支援チームを派遣し、生活に必要な物資支援を実施しました。
気候変動による災害の頻発化で、人道危機にさらされる被災者が後を経ちません。その多くが、脆弱な立場にある人びとです。私たち一人ひとりが協力し、持続可能な社会の実現に向けて行動することは、こうした気候変動の影響を受けた人道危機に対するアクションにもつながります。
まとめ
気候変動は、私たちの暮らしに直結する現実の課題であり、気候変動がもたらす自然災害で苦しむ人びとが世界中にいます。政府や企業だけに任せるのではなく、個人が日々の生活のなかで節電や再利用、環境に優しい製品を選択するなど、小さな行動を積み重ねることが大きな変化を生み出す力になります。「自分一人では何も変わらない」と考えるのではなく、できることを少しずつはじめてみませんか。それが、気候変動を食い止める力となり、自然災害で生活の場を失った人びとの未来をつくる力にもなるのです。
【参考資料】
国連広報センター|SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは? 17の目標ごとの説明、事実と数字
ユニセフSDGsCLUB|SDGs17の目標
The ASAHI Shinbun SDGs ACTION|SDGsとは 17の目標と日本の現状、身近な取り組み事例をわかりやすく解説
SDGs JOURNAL|SDGsとは 17の目標と日本の現状、身近な取り組み事例をわかりやすく解説
ユニセフSDGs CLUB|13気候変動に具体的な対策を
朝日新聞社|SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」とは?事例付きで解説
朝日新聞社|【SDGs達成度ランキング】日本、2024年は世界18位に上昇 気候変動対策など最低評価
Spaceship Earth|SDGs13「気候変動に具体的な対策を」の日本や世界の具体的な取り組みを紹介!
EDU TOWN SDGs|SDGs取り組み事例
JICAつながる世界と日本|より良い世界にするためのみんなの目標「SDGs」
JICAつながる世界と日本|全世界で取り組む新たな温暖化対策「パリ協定」を知ろう!
千葉商科大学|2020年SDGsの歩みは順調? 世界のSDGs達成状況と取組事例
Edu Town SDGs|SDGsの目標:13気候変動に具体的な対策を
国連広報センター|個人でできる10の行動
経済産業省 資源エネルギー庁:今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~
