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コラム&インタビュー

【仕事場は地球#11】「防災のソフト面こそNGOの役割」――海外事業部・事業担当 スベトラーナ・バビナ

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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代々木公園で開かれたアースデイにて

フィリピン、イラク、インドネシア、パラオなど各地の緊急支援や継続的な支援、そして海外事業部全体の事務やピースウィンズ・アメリカとの連携役も担うスベトラーナ・バビナは、アメリカ、ロシア、モルドバ、そして日本で教育を受けました。彼女が専門とするのは防災。災害が起きてから対処するのではなく、起きた時に被害が大きくならないように前もって備えておくことの大切さをわかってほしいと熱く語るバビナの話を聞きました。

日本語の勉強はしたくないから大学を辞める

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中国で開かれたUNESCO国際青年会議に民族衣装で参加

―― 生まれはどちらですか?

バビナ:旧ソ連時代のタジキスタンです。ソ連の崩壊でタジキスタンは独立しました。

―― タジキスタン生まれのバビナさんが日本にやってくるまでを聞かせてください。

バビナ:アメリカに留学して高校を卒業して、大学進学の前の準備コースで航空機エンジニアリングを勉強しました。その頃はとても興味があったのです。でもやってみて違うと思ったので進路を変更して、奨学金を得てモスクワ国立言語大学に入りました。フランス語を勉強したいと思っていたのですが、入学の日に掲示された振り分けを見ると、想像もしていなかった「日本語と英語」のコースでした。すぐに母に電話して「日本語の勉強はしたくないから大学を辞める」と泣きつきました。でも、日本のドラマを見るようになって、日本語が好きになって、日本にも興味を持つようになりました。

―― どんなものを見たのですか?

バビナ:「花より男子」とか(笑)。イケメンに惹かれました。それからは楽しく勉強しました。言語大学は言葉だけではなくて、地域研究や国際協力についても学ぶ大学なので、視野が広がりました。

大学院はモルドバで進学したので、(モルドバで使われる)ルーマニア語も勉強しました。仕事をしながら大学院に通っていた2015年、最初は休暇で日本に遊びに来て、次にボランティアとして福島県に来ました。3ヶ月間、南相馬市から避難していた人たちに英語を教えました。

その時に、南相馬の人たちの話を聞いて、人道支援の仕事に興味を持ちました。被災者の支援をしたいと思うようになったのです。ボランティアを終えてモルドバに戻ってから、日本の文部科学省の奨学金を申請しました。東北大学からも合格通知をもらったのですが、仙台は寒いと思って、神戸大学を選びました。その時は1995年の阪神淡路大震災のことはあまり知らなかったのですが、結果的に防災を学ぶのにぴったりのところでした。

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神戸に留学していた頃の写真。神戸布引ロープウェイ、神戸王子動物園

防災は成果が見えにくい

―― そして会社勤めを経て、2021年からピースウィンズで働いているのですね。

バビナ:はい。最初は国内事業部で仕事をして、その後、アメリカ国際開発局(USAID)の助成を受けて日本国内で行なっていた防災関連事業の担当になりました。これには4種の活動があって、ひとつは北海道から沖縄まで日本各地での地域住民を対象とした防災の公園や地域の防災訓練に参加する事業。救助犬捜索のデモンストレーションや防災グッズの使い方のレクチャー、心肺蘇生法の指導など、ピースウィンズの医療従事者も加わって行なわれました。

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高知市の小学校で行われた防災オープンデーの様子

ふたつ目は、行政職員や地域の防災リーダー向けの被災地での実地研修。災害を経験したことのない自治体職員を被災地に招いて、具体的に実体験から学んでもらう事業です。

もうひとつは医師、看護師などの医療従事者や行政職員など災害時の初動対応者を対象とした訓練や研修で、最後は災害支援者同士のネットワーク拡大のためのイベントへの参加や企画・開催でした。災害の多い日本ではとても重要なプログラムでしたが、残念なことにUSAIDの資金がなくなって大幅に削減されました。

多くの場合、支援は災害が起きた後に始まるのですが、本当はそうではなくて、災害が起きる前にもっと対策を講じておけば、被害をおさえることができるし、緊急支援も速やかに行うことができます。防災こそが大事なのに、「まだ起きていないこと」にはなかなか予算を割いてもらえないし、寄付も集まりにくい。それが、とてももどかしいです。防災は成果が見えにくい。これは日本だけでなく、世界中どこでも同じです。

今、博士論文を来年には提出したいと思って準備しているところですが、そのテーマがまさにこの防災とNGOの役割です。ピースウィンズは大地震の被害を受けた能登半島で支援を行っていますが、2024年1月1日の地震発生の翌日には現地に入って支援ができたのは、2022年と2023年に起きた地震で支援に入っていて人間関係ができていたからです。

珠洲市とは協定を結んで防災事業を一緒に進めていたために、拠点があって、人間的な繋がりがあって、信頼関係ができていた。だからすぐに活動を始めることができたのです。こうした経験を、発生が予想される南海トラフ地震に活かしたい。その観点から論文を書くつもりです。

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―― 防災という観点で、NGOの役割はどういうことですか?

バビナ:防災にはハードとソフトの両面があります。ハードは防潮堤を築いたり、避難タワーを作ったり。そういう仕事は行政の仕事だと思います。一方、ソフトは地域のコミュニティづくりや地域の防災力の強化で、ここがNGOの仕事だと思っています。防災のソフト面が大切で、実際に効果があることを私は証明したいと思っています。

ささやかなことからでいいのです。たとえば、近所の人と一緒に芋掘り会をやるついでに、備蓄食料がおいしく食べられることを紹介したり、飲み会の席でも何でもいいので、ちょっとした集まりでハザードマップについて話しましょうとか、できることはたくさんあると思います。



スベトラーナ・バビナ
1990年タジキスタン生まれ。高校時代にアメリカ留学。奨学金を得てモスクワ国立言語大学に入学。卒業後、モルドバ国際自由大学で修士号(政治学)取得。文科省の奨学金を得て神戸大学大学院より修士号(国際関係論)取得。博士課程単位取得退学。学業の傍ら2014年よりデータアナリストとして働き、2021年よりピースウィンズで働く

【取材・文】
草生 亜紀子(くさおい あきこ)
The Japan Times記者、新潮社『フォーサイト』副編集長などを経て独立。ピースウィンズ海外事業部の業務を行いつつ、フリーランスで執筆や翻訳をしている。著書に『理想の小学校を探して』『逃げても 逃げてもシェイクスピア』、中川亜紀子名での訳書に『ふたりママの家で』がある。

WRITER
広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
国際支援や世界情勢に関わる情報をお伝えしています。本当に困っている人たちに、本当に必要な支援を届けるために、私たちにできることを一緒に考えるきっかけになればと思います。

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