【シリア】シリアの高齢者に尊厳と笑顔を取り戻す心のケア
人道危機が長引くシリア国内において、ピースウィンズは2022年より「心のケア」を目的とした心理社会的支援を実施しています。長引く内戦や避難生活、経済危機に加え、家族や社会とのつながりの希薄化、公的サービスの悪化によって、シリアの人びとの心理的ストレスは増大しており、心理社会的支援のニーズが続いています。
ピースウィンズはこれまで、子どもや女性等、幅広い人びとを対象に心理社会的支援ワークショップを実施してきました。そして、2024年12月からは、新たに高齢者を対象としたワークショップを開始しました。


シリアでは長年の危機や大地震の影響で、かつて大家族で暮らすことが当たり前だった日常が失われてきました。その結果、多くの高齢者が孤独感や無力感を抱え、社会から軽んじられていると感じています。また、家族からの支援も十分でないため、社会的に孤立し、経済的な困難にも直面しています。
こうした状況を受け、私たちは高齢者の方々が再び社会とつながり、生きがいを見つけ、幸せを感じられるようサポートしたいと考えました。具体的には、彼らが地域社会の一員として尊厳ある生活を送れるよう支援するとともに、若い世代が高齢者への理解を深めることで、結果として高齢者の心理的ストレスが軽減されることを目指しました。
ワークショップでは、自分を大切にする気持ちや人間関係、健康や栄養、体のケア、心の健康維持、ストレス対処法、レクリエーションなど、多角的なテーマでアプローチしました。最終セッションでは、子どもたちとの合同でアクティビティを実施。高齢者の方々が、子どもたちに園芸を教えたり、郷土料理の作り方を伝えたり、母国の物語を語り聞かせたり、伝統音楽を一緒に鑑賞したりと、世代を超えた温かい交流が生まれました。


参加者からは、このような声が聞かれました。
「セッションに参加して、本当に楽しかったです。まるで、自分の中に眠っていた美しいものが再び呼び起こされたような気がします。希望を失いかけていた私にとって、毎週グループの皆さんとファシリテーターの方にお会いできるのが、何よりの楽しみでした。これからもずっとつながっていたいと心から願っています。この場に出会えたことに深く感謝しています。」
「セッションを通して、生きていくために必要な『農業』といった大切なテーマについて孫たちと一緒に向き合う機会を設けてくださり、本当にありがとうございます。私たち高齢者が若い世代に大切な価値観を伝えることができました。」
「正直、私の人生はもう終わったものだと思っていました。しかし、今では一日一日が充実していて、意味があると感じています。」
ワークショップを通じて、高齢者には大きな変化がみられました。生きがいやつながりを再発見し、社会の中で自分の役割が認められていると感じることで、自身の存在価値を見出し、自信を持てるようになりました。自分の感情や考え、そして豊かな文化的な知識を生き生きと表現できるようになりました。
参加者からは、「もっとセッションを増やしてほしい」、「同年代の仲間と交流できて嬉しい」といった喜びの声が多数寄せられ、ワークショップへの高い満足度がうかがえます。


ピースウィンズは今後も、シリアの人びとが笑顔と生きがいを取り戻し、未来へ向かって歩めるよう支援を続けていきます。今後とも、皆様の温かいご支援、ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
※ピースウィンズの活動は、ジャパン・プラットフォームからの助成金や個人・法人の皆さまによるご寄付により、実施しています。

