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【フィリピン】3メートルの濁流が奪った日常 ― セブ州バランバン市カバグダランで、69歳の男性がひとり泥を運び続ける

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集会所の柱に刻まれた水位

セブ州バランバン市カバグダラン(Cabagdalan)。
集会所の柱には、黒く刻まれた文字が残っています。
「NOV.04, 2025」
その横には、当時の水位を示す線。
台風Tino(ティノ)の影響で11月3日の夜から雨風が強まり、川が氾濫。水は約3メートルの高さまで押し寄せました。それは、人の背丈をはるかに超える高さです。

4日の明け方、バランバン市の村々は一気に水に沈みました。

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「WE NEED HELP」と書かれた壁

水が引いたあと、壁に残された言葉。
「WE NEED HELP」
それは誰かの落書きではなく、助けを求める切実な思いが記されたものでした。
そして洪水の爪痕は、今もなお、この町のあちこちに残されています。

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手押し車を押すマリオさん

マリオ・サントスさん(仮名)、69歳。
濁流は彼の家をのみ込みました。水が引いた後も、室内は泥に埋まり、床は見えなくなりました。
それから何日も、彼は一人で泥を運び出しています。
手押し車に積み、家の外へ。
また戻り、すくい、積み、押す。
室内に残る泥は重く、乾けば固まり、さらに作業を難しくします。
終わりの見えない作業です。

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室内で土砂をすくう様子

私たちがマリオさんに出会ったのは、2026年1月14日。
あの洪水から2ヵ月以上が過ぎていましたが、それでもなお、家の中には泥が残り、彼は一人でかき出し続けていました。
「自分の家だから、自分でやるしかない」
その言葉の奥には、暗く重い現実を抱えながらも、それでも前に進もうとする静かな決意が感じられます。

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多くの住民が離れた村に残る洪水の爪痕

洪水の影響は、村の人口にも及んでいて、住民の多くが生活の場を離れたと伺いました。実際、私たちが訪れた際にも、人の気配はほとんどありませんでした。そのような中でも、マリオさんはこの場所に残り、今日も一人、泥をかき出し続けています。

水が引いた後に始まる、本当の困難

カバグダランでは、多くの世帯が浸水被害を受け、家が丸ごと流された世帯も少なくありません。家をゼロから建て直そうとしている世帯もあれば、修繕に取りかかっている世帯もあります。
しかし、洪水によって仕事を失い、立て直しや修繕に必要な資金を確保できず、親戚の家に身を寄せたり、壊れた家での暮らしを続けている世帯も少なくありません。
水が引いた後も、暮らしが元に戻るわけではありません。
洪水によって生活の基盤そのものが揺らいでいるためです。
自然災害は、一瞬で暮らしを変えます。
たとえ命が助かったとしても、本当の困難は、水が引いた後から始まり、長く、重く、日々の暮らしにのしかかります。

支援は、日常を取り戻すために

ピースウィンズは、台風の影響を受けたバランバン市の村々で支援を継続しています。
被災世帯が少しでも早く日常を取り戻せるよう、現地提携団体や行政と協力しながら家の修繕に必要な資材や寝具、衛生用品など、暮らしを立て直すための物資を届けています。

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修繕中の家の様子
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物資配付の様子

「WE NEED HELP」という言葉が、必要のない日常へと変わるまで。

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