【ケニア】旅路の途中で~難民一時収容施設での衛生改善活動~
23歳の2児の母であるアカッチ(仮名)は、ケニア北西部の乾燥地にあるカクマ難民キャンプの一時収容施設で、毎朝早くから、日々の生活に必要な水を求めて奔走し、泣きわめく子供たちと自分の食事を得るために配給カードを持って食料配給の列に並びます。アカッチは、他の11家族と、共同宿舎に滞在しています。彼らは避難や亡命、あるいは単に教育の機会向上を求めて遠くからやってきた家族です。アカッチは、南スーダンで自営業をしていた夫が亡くなり、生活の糧を失いました。家族に対する迫害もひどくなり、家族の何人かが既に生活していたカクマ難民キャンプに向かうことを選びました。
同施設は、アカッチのようにカクマに辿り着いた難民たちが、難民キャンプのコミュニティで暮らし始める前に約1ヶ月間、滞在する宿泊所です。ここでは各難民家族にどのような支援が必要とされているかを知るために健康状態や逃れてきた背景についての調査が実施され、難民キャンプでの生活に関するオリエンテーションが行われます。同施設では、生活に必要な寝袋、毛布、バケツ、石鹸、生理用品、そして毎日の食事が提供されます。不安定な治安、政情、干ばつ等の影響で、南スーダン等周辺国からやってくる難民は後をたたず、定員1000人の同施設に、現在は2200人近くが滞在しています。
ピースウィンズは、この施設で、人々が健康的に暮らすための環境整備の支援を、衛生啓発員や同施設で活動する他の団体と共に行っています。2200人近くの滞在者に対してトイレは20戸しかありませんが、新たにトイレを建設する資金のみでなく、そのための土地もありません。そのような状況で、衛生を保つためには人々の理解と行動に頼るしかありませんが、長い旅路の後に疲弊していたり、トイレを使う習慣のない地域から逃れてきたりした難民も多く、それも容易ではありません。
キャンプで暮らす難民から選ばれた衛生啓発員は、毎日、同施設を訪れ、トイレや水場を点検して衛生状況が保たれているか確認した後、共同宿舎をまわり、そこに滞在する難民に対して、トイレの適切な利用、手洗い、子どもや生理中の衛生、ゴミをゴミ箱に捨てること等について話し合います。難民出身の衛生啓発員が日々、自分たちの経験をもとに新たな難民に働きかける啓発活動により、衛生行動の向上が促され、野外排泄が減少したり、ゴミが散乱していた共同スペースがきれいになったり、衛生の改善が見られています。南スーダン難民で衛生啓発員として活動するマリミンギ(仮名)は、「以前は色々なところに排泄物が落ちていましたが、今は劇的に減りました。なので、今は安心して木の下に座って、ここにいる人たちと衛生について話し合うことができるようになりました。」と言います。
ピースウィンズは、これからも、祖国を逃れてきた人々が、衛生的な環境で、尊厳を持って生活できるよう支援を続けていきます。皆さんのご支援をよろしくお願いいたします。
(ピースウィンズ・ジャパン カクマ事務所 水衛生オフィサー トリザベル・オリワ)
※本事業は、欧州委員会人道援助・市民保護総局(ECHO)から助成を受け、Norwegian Refugee Councilと共に実施しています。
難民出身の衛生啓発員
月経衛生管理について話し合う難民女性たちと啓発員
PWJが一時収容施設に建てた衛生啓発のメッセージ付きの手洗い場