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コラム&インタビュー

【ウクライナ】3年間戦禍の止まないウクライナ(2)

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部

「3歳以下の子どもたちは戦争のある暮らししか知らない」
チェルニヒウ第72幼稚園ユーゲニア園長インタビュー

ピースウィンズは2022年2月から続くロシア軍による侵攻で大きな被害を受けた北部チェルニヒウ市のふたつの幼稚園の改修工事を手伝い、幼稚園は2023年秋、20ヶ月ぶりに再開することができました。ただ、ロシア軍による攻撃はその後も頻発し、とりわけ電力施設への攻撃が続くことから、突然の停電や計画停電が毎日のようにあり、市民生活は厳しい状態が続いています。現在、ピースウィンズはふたつの幼稚園のうちのひとつである第72幼稚園に発電機を送るためのクラウドファンディングを行なっています。厳しい寒さの中、子どもたちが部屋でも地下シェルターでも辛い思いしないで済むよう願っての支援です。この幼稚園のユーゲニア園長に幼稚園の様子を聞きました。

戦争が子どもに与えるストレスはとても大きい

――改修を終えて2023年秋に再開してから、幼稚園の生活はどうですか?

園長 壁や窓を改修して幼稚園は再開できましたが、毎日のようにミサイルやドローンによる攻撃があって、昼も夜も不安に怯える暮らしが続いています。昨日の夜もドローンによる激しい攻撃が自宅のそばであったので、あまり眠ることができませんでした。

――子どもたちは地下シェルターに避難することが多いですか?

園長 はい。警報が出され、実際に攻撃もあるので、毎日のようにシェルターに移動します。3歳くらいの子どもは戦争のある暮らししか知らず、これが日常になってしまっていますが、子どもの成長にとって良いことであるはずがありません。

暗くて寒い地下シェルターで長時間過ごすことも多い

――20年近く幼児教育に関わってきた経験を踏まえて、戦争が続く中で育つことは子どもの成長にどんな影響を与えるでしょうか?

園長 戦争が子どもに与えるストレスはとても大きなものです。子どもたちの中にはお父さんやお母さんが前線で戦う子どもがいます。彼らは毎日、親は無事に帰ってくるだろうかと心配しています。爆音や破壊された建物などを見るストレスも大きなものです。子どもですから楽しい時は笑っていますが、大人の不安を敏感に感じとって、心の深いところで不安を抱えているのはわかっています。大人も子どももストレスを解消する機会を持たないといけませんが、戦時下では十分にできません。

子どもたちがストレスを感じないで済むように、私たちは攻撃で破壊された部分を修復したり、壊れている建物などを見せないようにして、戦争のインパクトが及ばないよう最大限の努力をしています。幼稚園のインスタグラムには子どもたちの笑顔を載せるようにしていますが、その笑顔の背景には、悲しい光景を見せないようにしているスタッフやボランティアの親たちの多大な努力があるのです。

教育の機会が失われている

――子どもたちにとって、戦争の影響は他にどのようなことがありますか?

園長 教育の機会が失われています。その日にやるプログラムを決めていても、警報が出て地下シェルターに避難するたびに中断せざるを得ないので、計画通りに進めることができません。

――園長先生は毎日どんなことを祈っていますか?

園長 (涙で言葉につかえながら)毎日、子どもたちのために祈っています。彼らの安全と、保護者の安全、無事の帰還を毎日、毎日祈っています。

――先生たちの心労も大きいと思います。園長先生の支えは何ですか?

園長 子どもたちの笑顔が一番大きな力になります。園児を支えているのは私たちですが、私たちもまた園児に支えられています。保護者のボランティアも大きな支えになっています。前線の兵士たちへの贈り物を用意するために保護者と一緒にボランティア活動をするのですが、それがみんなをひとつにまとめる大きな力になっています。

子どもたちの笑顔がみんなを支える

――1日も早い戦争の終結を願っていますが、戦争が終わったら子どもたちと何をしたいですか?

園長 お祝いをします。そのあとは、日々の暮らしを生きて、楽しみます。何かクリエイティブなことをして、それができる喜びを味わいたいです。

――本当に早くそんな日が来ますように。

園長 ええ。日本にも平和な空がずっと広がっていますように。それが何より大切なことです。日本のみなさんからの支援は私たち一人ひとりを守ってくれるエンジェルのようです。どうか、みなさんが平和に暮らせますように。

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広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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