支援から広がるつながり
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が2010年1月のハイチ大地震の被災者支援を始めてから2年以上が経過しました。震災直後、PWJはテントや瓦礫除去のための道具配布とともに、被災した学校の再開も支援しました。これは、ニーズ調査の際、より弱者である子どもたちへの支援、特に授業を行うだけではなく、子どもたちが安心して過ごせる場所として、学校を早期に再開する必要性を強く感じたからです。
学校の再開を図る支援としては、これまでに4期の事業で計23校の整備を終了しており、現在、5期目の事業として6校について施設の整備を行っています。
(上)Enfantine校に提供した学校家具、
(下)CCS校で配布したスクールバッグ(C)PWJ
各校において、より安全に、より良い学校運営ができるように、キャパシティ・ビルディング(能力向上)のワークショップ、トラウマやストレスが生徒に与えうる影響や症状などの心理社会的な基礎知識を学ぶワークショップ、保健衛生向上のワークショップや防災についてのワークショップなども実施しています。これらのワークショップは、学校運営スタッフ、教員、生徒、親、地域の人から構成される「学校支援委員会」メンバーや教員を対象として開催してきました。ワークショップの参加者からは、「新しい知識を得ることができた」、「新たな考え方を学ぶことができた」、「より長期的な視点から学校運営の計画を立てることができた」といった意見を多く聞くことができ、ワークショップが今後の学校運営に役立っていくことが大いに期待されます。
(上)学校運営5カ年計画を作成中のワークショップ参加者、
(下)心理社会的サポート・ワークショップ(C)PWJ
さらに、こうしたワークショップの実施は、PWJの支援対象校間でのネットワークの構築に寄与しています。ワークショップは、通常、複数の学校合同で行います。そのため、これまで面識のなかった学校関係者同士が知り合う機会となり、ワークショップ後も連絡を取りあい、情報交換や相談などを行う関係が構築されていることを確認しています。
また、過去にPWJが支援した学校からもうれしい報告が来ています。PWJが各校において整備した施設は、あくまで仮設であり、必要最低限のものに留めています。これは、PWJのハイチにおける支援が緊急支援であり、学校再開後は、各校がそれぞれの力で施設等を徐々に改善してほしいという考えに基づいています。そのため、キャパシティ・ビルディングのためのワークショップでは、学校の問題を自ら発見するだけでなく、その原因分析方法の伝授、そして、学校の5カ年計画を立てるところまで行います。このワークショップが功を奏し、過去の支援校を訪れると、学校が主体となった様々な改善が実施されています。例えば、生徒の安全のために校門を追加で作ったり、日差しによっては暗くなってしまう教室に電灯を設置したり、職員室のドアを二重にして強化したり、国旗掲揚用の柱を設置したりと、小さなところから、各校でできることを工夫して取り組んでいることが分かります。
(上)Michel de Montaigne校で電灯を設置した教室、
(下)Ideal Plus校では校門を追加(C)PWJ
このように、PWJが支援した各校は、学校当事者の手によりその後もさらに発展し続けていることが確認できたことは、PWJスタッフが各校関係者と協力してきた成果と考えており、現在整備を進めている学校についても、これまでの教訓を活かして事業を進めていきます。
*本事業は、ジャパン・プラットフォームによる資金や寄付金などにより、実施しています。