【バングラデシュ】ロヒンギャ難民危機から5年
2017年8月25日、ミャンマーでの武力弾圧を逃れ、大量のイスラム少数民族ロヒンギャが隣国のバングラデシュに流出しました。ロヒンギャ危機の発生から今年で5年が経ちます。いまも、バングラデシュ南東部のコックスバザールにあるロヒンギャ難民キャンプでは、90万人を超える難民が避難生活を強いられています。
キャンプ内の様子
援助機関、およびバングラデシュ政府は、ロヒンギャのミャンマーへの帰還を前提としています。しかし、ミャンマー国内の政治的混乱から、帰還の道筋は全くたっておらず、先行きが見通せません。更なる長期化は必至ですが、ロヒンギャ危機から5年が経ったいま、世界各地で勃発する新たな人道危機が起きる中で、ロヒンギャ難民への国際社会の関心は薄れ、支援は先細っている現状です。長引く避難生活を見据え、限られた資源の中で、難民たちが支援の受け手ではなく、支援の担い手として活躍し、避難生活を乗り越えるための活力を見出せるような支援が求められます。
ピースウィンズ・ジャパンは、2017年10月よりロヒンギャ難民への支援を開始し、現地の提携団体であるダッカ・コミュニティ・ホスピタル・トラスト(DCHT)とともに、診療所支援や保健衛生啓発などの保健医療支援を中心に行ってきました。支援開始当初は、緊急の医療ニーズに対応するための処置や投薬などの「医療」支援が中心でしたが、徐々に難民たちが健康的に生活できるための予防や衛生啓発などの「保健」の活動にシフトしてきました。現在も、診療所支援を通じて医療支援を継続しつつ、コミュニティヘルスワーカーやコミュニティボランティアなどの人材を活用して、健康を守るための活動に注力しています。コミュニティボランティアには、住民が病気にならないための予防方法や健康行動を実践できるための啓発活動、住民が必要時に必要なサービスを受けられるための情報提供や、医療ニーズが高い住民を把握し緊急時に適切な支援が受けられるようにするための活動を行っています。
コミュニティボランティアが、身体障害がある患者を当診療所に紹介しました。受診に支えが必要であるため、肩を組んで歩行をサポートしています。
コミュニティボランティアが活動するキャンプ内の地区の住民からの聞き取りでは、このような声が聴かれています。
「初めての妊娠で不安だったけど、(コミュニティボランティアが)産前健診や施設分娩の大切さを教えてくれました。陣痛が来た時は夫が不在でした。一人で診療所に行くことは遠くて難しいので、近くに住むコミュニティボランティアに連絡したら、診療所までの移動手段を用意してくれて、無事に診療所で出産できました。」
「糖尿病と高血圧と診断され、不調が続いていました。コミュニティボランティアが、日頃から家に来て気にかけてくれて、健康的な食習慣や運動の必要性について教えてもらいました。忘れずに定期受診し、運動をする習慣もつきました。いまはすっかり調子が良いです。」
当診療所にかかりつけの患者。コミュニティボランティアが定期的に訪問し、体調を確認している。
住民たちがコミュニティボランティアの助言により、診療所の受診や、健康的な生活習慣の実践をする姿は、彼らにとっても活動のモチベーションになります。しかし、活動を始めた当初は、住民たちからの相談に対して、適切な対応や助言を行うことができませんでした。例えば、キャンプ内で下痢が増えていた時期に、下痢を予防するための啓発活動を実施する中で、トイレが詰まっていて使用できないため、住民たちが野外で排泄している地域がありました。住民たちもコミュニティボランティアも、トイレが故障した際に誰に相談すれば良いかを知らず、そのトイレは使用できないまま放置されていたのです。トイレを管理する団体、およびそのボランティアに相談をしたことでこの問題は解決し、同様の問題が起きた際には、住民自身やコミュニティボランティアの働きかけにより対応できるようになりました。誰かが対応してくれるのをただ待つのではなく、自分たちが行動をすることで生活や健康の改善につなげられるのだと、些細で当たり前のことかもしれないですが、長引く避難生活で支援の受け手でいることが多い環境や仮住まいという意識下で気付きにくくなっているのかもしれません。このような活動を通して、コミュニティボランティアが支援の担い手として難民の生活をよくするために貢献しているという自信をもって活動できるように支援しています。
住民への聞き取り。コミュニティボランティアがトイレの不具合を一緒に対応してくれたことで、野外排泄や遠くのトイレに行かなくて済むようになったと話してくれました。
活動を通して、ミャンマーの帰還についてどう思うかを話してくれる方もいます。大人たちからは、環境が整えば生まれ育った故郷に帰りたいという意見や、「帰還の話がどうなってるか知らない?」と聞かれることもあり、ミャンマーへの帰還を気がかりに感じていることが伺えます。子どもたちの中にも、「ミャンマーで通っていた学校は大きくて、遊ぶ場所がいっぱいあった。」と、いまのキャンプの学習施設や、人口密度の高いキャンプでの生活を窮屈に感じ、ミャンマーでの生活を懐かしむ声も聞かれました。ただ、幼い子どもたちの中には、ミャンマーのことは覚えていない子も当然います。避難生活の長期化により、ミャンマーを知らずに、難民キャンプで子どもたちが育っていく現実がそこにはあります。
診療所に来ていたモハメド君。ミャンマーで通っていた学校の絵を描いて見せてくれました。
ロヒンギャ難民がバングラデシュへ逃れてから5年が経過し、新型コロナウイルス感染症の拡大や、故郷の政情不安など次々と新たな課題が生じ、国際社会からの関心も低下する中で、解決の道筋が見通せない状況ではありますが、私たちは彼らが安心し、長引く難民キャンプでの生活で、健康的な生活を送れるための支援を今後も継続していきます。
引き続きみなさまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。
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