増え続ける国内避難民の支援を開始
イラクでは、激しい宗派抗争などを逃れて国内のより安全な地域へ移動する国内避難民が増え続けています。ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は2007年4月から、多くの避難民が流入しているイラク北部ニネベ州のファイダ地区で、国内避難民を支援するため、小中学校の改修・増築と職業訓練、職業訓練修了者への収入向上事業を実施しています。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、2006年初頭以降に発生したイラク国内の避難民数が70万人以上にのぼり、毎月約5万人のペースで増え続けていると推定しています。PWJが活動する北部3州はクルド自治政府が管轄しており、イラクの他地域に比べると、比較的情勢が落ち着いてしているため、武力衝突の激しい地域を逃れた避難民が多く移動してきました。しかし、地域内の治安悪化を懸念するクルド自治政府が入域に厳しい姿勢を取り始めたため、クルド地域と中央政府管轄地域との事実上の境界地域「グリーンライン」に多くの避難民が集中してきています。
(C)Peace Winds Japan
「グリーンライン」は長年にわたりクルド系勢力と旧中央政府軍との戦場となったところで、学校や医療施設などの公共施設の多くは老朽化し、避難民が急増する状況に対応できません。そのためPWJは今回、UNHCRと共同して、ファイダ地区の元軍事施設に避難する避難民約2000家族を対象に支援を開始することになりました。
改修・増築している学校は、アラビア語で授業を行う地域で唯一の学校で、イラク中南部からきたクルドが話せない多くの生徒が集中しています。元々は幼稚園として使われていた建物で老朽化が激しく、教室も生徒数増加でパンク状態でした。PWJでは4月下旬に工事に着手し、これまでに増築部分の基礎・壁部分の工程を終了。現在は天井部の工事に取り掛かっています。
(C)Peace Winds Japan
職業訓練は、治安状況から避難生活の長期化が懸念されるため開始しました。帰還後も就職の道が開けることを念頭に置いて、建設技術と整髪技術の指導をすることにしました。イラク北部は建設ラッシュが続き、建設現場で働く避難民も少ないのですが、技術を持たないために給与は低水準にとどまっています。専門技術を身に付けることにより、雇用のチャンスを高めるとともに、高収入を得られることを期待しています。
整髪研修は、現地在住の女性が講師を務め、夫を亡くし一家の家計を支えている女性などが優先して受講できるように配慮しています。
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これらの訓練の終了時には、建設技術を学んだ受講者に店舗の建設にあたってもらい、その店舗を職業訓練修了者に提供することも計画しています。