【イラク】COVID-19感染症対策指定病院の対応能力の強化を支援
世界各地でCOVID-19感染拡大予防と対応能力の強化が課題となる中、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が活動を行っているイラク北部においても、対策が求められています。イラク北部では、長期にわたる紛争とそれによる経済停滞の影響で医療インフラが慢性的に不足しており、また、難民や国内避難民、帰還民など、脆弱な立場にある人びとが多くいます。
特に多くの難民、国内避難民を抱えるドホーク州においても、COVID-19感染症対応能力が課題となっており、PWJは、COVID-19感染症対策指定病院の能力強化支援を実施しました。支援対象とした病院は、中等度~重度の症例を扱う州の指定病院です。
事業実施前には、ドホーク州内唯一の総合病院も、同様に中等度~重度のCOVID-19症例を扱う病院に指定されていました。しかし、当該病院が本来の総合病院としての機能を取り戻し、小規模の病院では対応できない疾患に対応できるようにすることは、人びとの医療へのアクセスを確保するために重要です。本事業により、支援対象の病院の能力強化を行うことで、この州唯一の総合病院のCOVID-19感染症対策指定病院からの指定解除にも貢献しました。
増設した仮設入院病棟にて、現地保健局との協議の様子
支援対象としたCOVID-19感染症対策指定病院の対応能力を強化するために、PWJは、プレハブの仮設入院病棟の増設により、当該病院における新型コロナウイルス感染症重症患者受け入れのための空間を10床分確保しました。また、ICUベッドや人工呼吸器、医療モニター、吸引ポンプの設置を行い、現地保健局が持つ既存の設備や現地保健局が他機関より供与を受けた設備とともに活用することで、重症患者に対応する病床を10床増床することができました。
重症患者に対応するため増設した病床
加えて、増床後に重度の症例に対応するため、あるいは重症化を防ぐために必要な医療提供を行うためには、酸素供給の不足を予防することが重要です。このため、PWJは、病院敷地内に設置された医療用酸素発生装置の増設および酸素供給用配管設備の設置などにより、患者に必要な医療設備を整備しました。
完成した仮設入院病棟の様子
これらの支援を通して、国内避難民を含むドホーク州の人びとがCOVID-19感染時に必要な治療を受けるための対応能力を強化しました。本事業の成果は、現地保健局からも高く評価され、2022年1月4日には、ドホーク州保健局長、在イラク日本国大使館大使、国連児童基金(UNICEF)視察団、PWJイラク事業現地代表により、増設した病棟の開所式が行われました。COVID-19感染症が収束するまではCOVID-19感染症対策指定病院として、そしてその後はCOVID-19に限らない感染症対策指定病院として活用され、人びとの医療へのアクセスを支えていくことが期待されています。
※本事業は、ジャパン・プラットフォームからの助成金やみなさまからのご寄付により実施しました。
※開所式に関しては、関連ページ(以下)を参照ください。
https://global.peace-winds.org/news/20748