【イラク】国内避難民に対するニーズ調査を実施
近年のシリア内戦により、何百万人ものシリア人が、戦火を逃れるために隣接する国々へ避難し、異国の地で難民として厳しい生活を送っています。しかし、シリア難民を受け入れた国々の状況も、決して楽観視できるものではありません。イラクのシリア国境付近の地域では、戦況の悪化に伴い、イラク国内のより安全な地域へ移動しようとする国内避難民が大量に発生しています。
今夏、中東各国を猛烈な熱波が襲い、摂氏52度を超えるような暑さが何日間も続いたことで、イラクの国内避難民の健康状態に大きな懸念が示されました。ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)はこの状況に迅速に対応し、暑さに苦しむ国内避難民の生活環境を改善するため、13,000人以上が避難生活を送っているドホーク州バジッドカンダラ国内避難民キャンプで303個の冷風機を配布しました。
2014年12月から同キャンプで生活するDawoodさん(男性、16歳)は、「私たちにとって、冷風機はなくてはならないものだったので、PWJからの支援物資は本当に助かりました」と、この暑い夏を乗り切る上で、PWJの支援が欠かせなかったことを強調しました。
5人の子供を抱えて戦火を逃れ、キャンプへと辿り着いたBasimaさんは、ようやく安全な生活が送れると喜んでいます。「私たち一家は、安心して生活できる環境にとても満足しています。特に子供たちは、テントの中で遊んだり、安心してぐっすり眠ったりすることもできるようになりました。PWJの支援により、子供たちが真夏の酷暑を乗り切ることができ、本当に感謝しています」
PWJのイラク事務所スタッフは、国内避難民に対する調査を継続しており、シリア・トルコ国境近くにある2ヶ所の国内避難民の集落を訪れ、より正確な情報及びニーズを把握するために、インタビューを行いました。
~ダラル地区~
ダラル地区は、PWJアルビル事務所からおよそ160キロメートル離れているドホーク州に属し、PWJはこの州内で1996年から活動を続けています。この地区で生活する国内避難民の多くは、2014年の8月から、建設中の建物を住まいとして暮らしています。避難民の多くは、イラク西部、シリア国境に近いシンガルという町の出身で、故郷がシリア内戦の影響を受け、生活を続けることが難しくなったため、この地に移住してきました。
イラク政府はこれらの避難民が建設中の建物から立ち退くよう求めていますが、彼らには他に行く当てもありません。また、建設中の建物には電気・水道も通っておらず、避難民の多くは何らの収入源も持っていません。ダラル地区は都市部から離れており、台所用品等の生活必需品を買いに出ることが難しい上、食事をする際には2~4家族が小さな調理ストーブ1つを共同で使用せざるを得ない状況になっています。
~デラボン地区~
デラボン地区は、ダラル地区のさらに西のシリア・トルコ国境沿いに位置しています。この地では、国内避難民が生活できるように政府が用意したキャンプもなく、ダラル地区同様、建設中の建物やテントを仮住まいとしています。PWJは8月に、この地区に住む785家族を対象にニーズ調査を行いました。その結果、この地区では4月に衛生用品が一度配られたきり、食料配給券以外に、追加の支援物資は全く受け取っておらず、多くの家族が調理器具の不足に困っているということが分かりました。
PWJスタッフは、ダラル地区とデラボン地区で目にした劣悪な生活環境は、国内避難民キャンプに支援が集中し、それ以外の地域に支援が十分に行き届いていないが故の結果であると考えています。そこで、キャンプ以外にも存在する避難民居住地区においても、迅速に支援を実施できるよう尽力していきます。引き続き、皆さまの温かいご支援をどうぞよろしくお願い致します。
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