【南スーダン】命をつなぐ支援の現場から~人道危機の現状と課題~
南スーダンの現在の人道状況は非常に深刻で、壊滅的な状態にあります。政治情勢は大きく悪化し、経済も混乱しています。
2025年3月6日には、アッパーナイル州のナシール郡とウラン郡で、南スーダン人民防衛軍(SSPDF)とホワイト・アーミー(WA)、そしてスーダン人民解放軍・反政府派(SPLM/A-IO)の間で戦闘が繰り返されました。その結果、8万3,000人以上の住民がエチオピアやスーダンなどの近隣国に避難したと報告されています(UNOCHA報告、2025年7月)。国連人権報告書によると、2025年1月~7月の間に多くの人権侵害が発生し、民家が焼かれ、財産が奪われ、命を落とす人も出ました。3月26日にはSPLM-IOの議長でもあるリアク・マシャール第一副大統領が、野党メンバー7名とともに自宅軟禁下に置かれ、これにより、首都ジュバやアッパーナイル州では政治的緊張が一気に高まりました。
南スーダン全体の人道状況も悪化を続けています。西エクアトリア州、アッパーナイル州、西バハル・エル・ガザール州、そしてジョングレイ州およびその周辺地域などでは、南スーダン人民防衛軍(SSPDF)とスーダン人民解放軍・反政府派(SPLM-IO)の戦闘が激しくなっており、さらに家畜の略奪や報復殺人、子どもの誘拐などの事件も発生しています(UNICEF報告、2025年7月)。これらの争いによって、2025年1月以降だけで35万人以上の人々が避難を余儀なくされています。こうした状況の中、生活の基盤は壊され、子どもの重度の栄養失調や飢餓が広がっています。さらにコレラの流行も深刻で、東エクアトリア州のラフォン郡やマグウィ郡、アッパーナイル州のルボクナ郡、ユニティ州のマイエンディット郡、アビエイなどでは、少なくとも8万7,000人以上の感染患者数と1,500人以上の死亡が報告されています。
加えて、今年の洪水によってジョングレイ州およびその周辺地域とユニティ州では12万人以上が避難しました。報告によると、2025年末までに160万人が洪水の影響を受け、さらに40万人以上が追加で避難する可能性があるとされています。洪水が農地に大きな被害を与え、ボール、アラリ、ポチャラ、ファンガク、アコボ(ジョングレイ州)やマイエンディット、パンイジエール(ユニティ州)などでは、さらなる避難が懸念されています。
また、南スーダンと隣国スーダンの紛争拡大により、難民や帰還民、国内避難民(IDPs)の数も急増しています。たとえばゴロム難民居住地区では、2025年1月にスーダンから約6,800人が新たに到着し、キャンプの人口はこれまでの1万6,000人から2万2,000人を超えました。この難民居住区には、エチオピア出身のアニュアク族、ブルンジ人、スーダン人、そしてコンゴ民主共和国出身の人々が暮らしています。

このような中、ピースウィンズは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の支援を受けて、中央エクアトリア州内のゴロム難民居住地区に住む約1万8,400人の難民に対し、保健・栄養サービスを提供しています。キャンプ内のプライマリーヘルスケアを提供する一次医療保健センター(PHCC)では、命を守るための支援を行い、死亡率の低下にもつなげています。また、安全な水を提供することで、コレラや赤痢などの感染症の拡大を防いでいます。これらの活動はすべてUNHCRの助成金で実施されていますが、この資金は2025年12月で終了する予定です。


このように、南スーダンの人道状況は依然として極めて深刻です。隣国スーダンでの紛争も広がる中、避難民の数は増え続けています。今後も、シェルターや医療サービス、安全な水の確保といった基本的な支援が不可欠です。
ピースウィンズは支援活動の手を止めることなく、国際社会や支援団体に対し、南スーダンの人びと、特に国内避難民や帰還民、難民のことを忘れないでほしいと強く呼びかけ続けていきます。
