ふるさとでの新生活を支援
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、内戦後故郷に帰還した住民の支援を行っています。帰還民は、故郷に戻っても、家も財産もなく、農地も一から耕さなくてはいけないという状況のため、新たな生活を始めるために支援を必要としています。
2009年5月、スリランカでは20年以上に及ぶ内戦に終止符が打たれました。内戦中、戦闘の激しかった北部から逃れた人々は「国内避難民」となり、避難民キャンプでの生活を強いられたり、親戚等の家に身を寄せたりしました。内戦終結から2年が過ぎ、国内避難民になっていた大部分の方々が故郷に戻りました。しかし、一部の地域では地雷除去作業が進行中であり、いまだ故郷に帰れない人々もいます。
(左)国内避難民キャンプで使っていたテントをそのまま使って住居にしている
(右)中の様子
(C)PWJ
PWJの支援は、帰還した家族に「生計支援パッケージ」を配布して、生活を立て直し、現金収入を得るのに役立ててもらうというものです。例えば、パッケージの中身は下記のようなものです。
・農業パッケージ: 野菜の種子、耕作用具等
・家畜パッケージ: 鶏、ヤギ、乳牛等
・仕立屋・洋裁パッケージ: ミシン、布等
・行商パッケージ: 自転車、はかり、カゴ等
支援はまず、事業地を選ぶことから始まります。PWJはスリランカ政府とも協議しながら、「必要な人びとに、必要な支援を」目指して、事業地を選択します。事業を行う村を選択した後、村人に説明会を開き、PWJの事業に参加する意思のある人を募ります。
(左)村人への説明会。村全体の9割以上の世帯が参加。
(右)真剣に説明に聞き入る村人。内戦で夫を亡くした寡婦世帯も多い。
(C)PWJ
パッケージは、対象となる家族それぞれが、自分たちのニーズやスキルに合うものを選びます。その後、村人と協力して、戸別インタビューを行い、パッケージがその家族に妥当なものか、また、本当に支援を必要としているか、家庭状況などを確認します。
(左)戸別インタビューを手伝ってくれる村の若者へトレーニング。
(右)リラックスした雰囲気の中でも真剣にインタビューは行われる。
(C)PWJ
インタビューの後、集めた情報を総合して、受益者を選定していきます。これは政府の村レベルの行政官、村の自治体組織のリーダーたちとの共同作業です。この度の事業(2011年1月から6月)では、3つのコミュニティで合計297世帯を受益者として選定しました。
(上)村のリーダーたちと受益者を選定。一つの村で4時間以上の協議に及ぶことも。
(C)PWJ
受益者が決まったら、希望に応じたパッケージの物資を調達します。これはPWJの現地スタッフの仕事。足しげく店に通い、品質が良く、価格も妥当なものを選んでいきます。スタッフの「人々のためにより良いものを、より多く届けたい。ドナーからのお金を無駄にしてはいけない。」という言葉に、スリランカのNGOスタッフの心意気を垣間見ました。物資の調達が完了したら、いよいよ村で配布。事業のハイライトです。
(左)整然と並んだ水ポンプ。農業パッケージのメインアイテムの一つ。
(右)農業パッケージを受け取り、喜ぶ家族。
(左)鶏小屋資材配布の様子。釘もキロ単位ではかりで測って配布。
(右)鶏小屋製作のデモンストレーション。村の男性が助けてくれます。
(左)ヤギの配布。小さなヤギは小脇に抱えられるほどの大きさ。
(右)PWJと政府行政官が、ヤギのキロ数を計算し、公平にいきわたるように話し合う。
(C)PWJ
受益者は、政府の農業局や家畜局によるトレーニングに参加。トレーニングは知識を広めるだけでなく、政府の担当官と村人の関係作りの役割も果たします。配布の「後」に、受益者自らが生活向上を実現できる環境づくりを目指しています。
(左)農業局によるトレーニングの様子。
(右)女性のトレイナー。スリランカでは要職で活躍する女性が多い。
(C)PWJ
この事業は、内戦終結直後の緊急支援から、開発・復興支援への過渡期の事業として位置づけられます。「緊急」から「中長期的」な社会・経済発展へ。「配って終わり」ではなく、配るのは初めの一歩。支援を受けた人々が長期的に自らの力で生活を改善していく方向に持っていけるよう、今後も必要なサポートを続けていきます。