【スリランカ】広島県神石高原町の有機農業をスリランカへ
今年3月、広島県神石高原町在住で有機農業の専門家である田邊真三さんが、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が活動するスリランカ・トリンコマレ県を訪問し、現地の稲作農家に向けて日本における有機農業の紹介や堆肥作りの指導などを行いました。
土の酸度を図ってみせる田邊さん(右端)
自然が豊かな神石高原町に本部を構えるPWJは、地の利を生かして、日本の地方の経験や人材を国際協力に役立て、国内外の地域の交流を促す活動も行っています。昨年11月には、農業を主要産業とする同町と島根県邑南町にトリンコマレ県から6名を招き、参加者らは農業や産直市を通した地域活性化について学びました。その際に田邊さんの農場も訪問し、有機農業の取り組みを間近で学ぶ貴重な機会となりました。現在、研修員たちは同町での学びを元に、それぞれの活動地域において、よりよい土壌づくりや乳製品の開発などに取り組んでいます。
今回のスリランカへの派遣で田邊さんは、現地での稲作と野菜栽培の様子や、PWJが支援する協同組合の精米所を視察後、現地の農家に対して堆肥づくりに関する講習会を実施。土中細菌の採取や堆肥の混ぜ方など、地域の資源を使い、地域の気候や水事情に合った有機堆肥の作り方を実演を交えて伝授しました。
写真左:堆肥づくりについての講習会、同右:堆肥づくりの指導を行う田邊さん(左端)
実習を受けた農家はその後、有機堆肥を田畑の一部に利用し、堆肥を使用した箇所と使用していない箇所での野菜の成長の違いや、収量の違いについて観察と記録を続けています。さらに、スリランカの農業省の県事務局を表敬した際には、有機農業を通した食の安全と環境改善に前向きに取り組む意向を表明しました。
また、昨年PWJの事業で行った有機伝統米の栽培についても、地域の学校から買い取りのリクエストが来るなど、少しずつ有機農業への関心が高まっています。現地では今後も田邊さんの指導を継続して受け、スリランカの有機農業の発展に活かしていく計画です。
田邊さんは「実演を交えた講義をしていくうちに、受講者がやる気を示し、手ごたえを感じました。今後も農業省など行政関係者も巻き込みながら、現地の人たちに指導していきたい。神石高原町とスリランカが、農業を通じて交流を深めるきっかけになるといいですね」と話していました。
講習会の参加者たちと田邊さん
これからもPWJは、日本の地域の人材を活かした国際協力の在り方を模索しながら事業を行っていきます。
※本事業は、外務省「NGO連携無償資金協力事業」による資金や寄付金などにより実施されています。