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インタビュー

クーデターから3年 ミャンマーの人々を支え続ける意味

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部

~ミャンマーに駐在した経験がある束村康文に話を聞きました~

ミャンマーで軍事クーデターが起きて2月1日で3年となりました。政府軍と少数民族や民主派武装勢力との衝突は続き、多くの人が食料や医薬品の支援を必要とする状況が続いています。学生時代からミャンマー(当時ビルマ)と関わりを持ち、NGO職員としてミャンマーに駐在した経験もあるピースウィンズの束村康文に、なぜ私たちはミャンマーを忘れてはいけないかを聞きました。

──ウクライナやガザの危機的状況や能登半島大地震など大きなニュースが続くなかで、ミャンマー情勢が忘れられがちですが、最近の様子はどうですか?

束村 クーデター後も何度かミャンマーを訪れて、昨年12月にも行ってきました。国内各地で軍事衝突が続き、緊急事態宣言が延長されるなか、人口の1割近くに相当する400〜500万人ほどが依然として国内外で避難生活を送っていると言われます。長い間ミャンマーと関わっていますが、以前のどの時代とも違う異常な事態だと思います。タイ側の国境の町メソートでは人口の3分の2がミャンマーの人というくらい流入が続いていて、ミャンマー人学校は生徒数が1.5倍から2倍に膨らんで収容しきれない状態になっています。

──クーデター後、ミャンマー国内でピースウィンズはどのような支援事業をおこなっていますか?

束村 地元提携団体と協力して、少数民族地域などで食糧支援や妊産婦の検診や必要物資の提供などを行ってきました。春からは新たな食糧支援と病院に医薬品を届ける支援を行います。武装した少数民族や、軍事政権に対抗する民主派による武装勢力と政権との間での衝突が激化しているため、スタッフの身の安全を確保しながら慎重に、今できる支援を続けています。助けが必要な人たちは本当にたくさんいます。

ヤンゴン郊外で妊産婦に食料支援をしています

「家族を大切にする文化が根付いていて、とても暮らしやすいところ」

──束村さんがかつて駐在された頃のミャンマーはどんなところでしたか?

束村 1995年から別のNGOの職員としてミャンマー中部にある世界遺産の町バガンに家族で駐在しました。乾燥地帯にあって水不足だったので、給水施設を作る仕事をしました。バガンは素朴ながらコミュニティがしっかりしたところで、家族を大切にする文化が根付いていて、とても暮らしやすいところでした。子どもが小さかったこともあり、周囲の人に本当に助けていただき、学ぶところの多いところでした。

カレン州の村で2014年に水質検査をした時の束村=右
カレンの民族衣装を来た子どもたちと2019年に撮影した写真

ミャンマー人は私たちにとって身近な隣人

──でもミャンマーは遠い国だと感じる人もいるでしょうね。

束村 そんなことはありません。実はミャンマーの人は数多く日本に暮らしていて、クーデター以降その数は増えています。私が現在暮らしている島根県の小さな町でも、介護の仕事のためにミャンマーの20歳前後の女性が来ていて、家のすぐ近所に十数人が暮らしています。彼女たちが、私たちに代わって日本を支えてきてくれたお年寄りたちの支援をしてくれています。ミャンマー人は私たちにとって身近な隣人です。

──アジアの隣人としてミャンマーの現状や行末を考えることは日本に暮らす私たちにとっても大切だと思いますが、束村さんはどうして私たちがミャンマー問題に関心を持たないといけないと考えますか?

束村 第一にミャンマーの人々が日本に寄せる期待の大きさがあります。日本政府と日本の人々に対して、ミャンマーの人々はきっと支援してくれるはずと大きな期待を寄せています。そして第二に、今ミャンマー国内にいる人は声を上げられない状況にいるので、海外にいる私たちが代わって声を上げないといけないのです。民主化を求めたくても、軍事政権に抗議したくても、自分と家族の安全を考えると自由な発言ができないのが今のミャンマーです。仕事に行かない公務員の抵抗運動や人々の沈黙のストライキも、身柄拘束の危険と背中合わせのギリギリの抗議活動です。沈黙を守らざるを得ない人々がいるのを知っておくこと、彼らに代わってできることをやるのが大切なことだと思います。私自身、大きなことができるわけではないけれど、ミャンマーの人たちがかつてのように穏やかに笑って自由に暮らせる日を取り戻せるように、精一杯の支援活動を続けていくつもりです。

束村康文(つかむら・やすふみ)
日本国際ボランティアセンターを経て1993年、BAJに入り、ミャンマーやスリランカで駐在代表を務める。2013年よりピースウィンズでアジア地域を担当している。

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広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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