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コラム&インタビュー

【2025世界難民の日に寄せて(3)】
「世の中には運に恵まれなかった人がいる。 恵まれた人は持っている知恵をどうシェアするか」
――南スーダン駐在代表 ジェイムズ・オティエノ・オウマ

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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東京事務所を訪れた時のオウマ=左から3人目

南スーダン共和国は、2011年にスーダンから分離して独立した世界で一番新しい国です。以前からエチオピアやコンゴ民主共和国などから難民が流入していましたが、2023年に隣国スーダンで武力衝突が激しくなると多くの人が南スーダンに難民として逃れました。加えて、今年に入ってスーダンで南スーダン人が襲撃された死傷事件をきっかけに南スーダン国内で報復的攻撃が起き、首都ジュバ近郊のゴロム難民居住地区には新たに6800人の難民が増えて居住地区の人口は22,000人に膨らみました。このため同地区の生活環境が悪化し、給水施設が足りないことでコレラの感染拡大も起きました。WFP(世界食糧計画)は4月「南スーダンの食糧不足が史上最悪レベルになる瀬戸際」として支援を訴えています。こうした情勢下、ピースウィンズ南スーダン駐在代表のジェイムズ・オウマはどんなことを考えながら活動しているのか聞きました。

複雑な南スーダンの人道状況

―― 南スーダンは近隣諸国から難民を受け入れる一方で、南スーダンの人がウガンダなどへ難民として流出していて、状況は複雑に見えます。

南スーダンの人道状況はとても複雑です。建国からもうすぐ14年の政府はいまだ十分に機能しておらず、政治的背景や地域対立からくる衝突は後を絶ちません。物価高は続き、人々は日々の暮らしに四苦八苦しています。加えて毎年のように気候変動の影響を受けて夏から秋にかけて洪水が起きます。このため外からの難民45万人に加えて国内避難民は200万人を超え、UNOCHA (国連人道問題調整事務所)によると南スーダン全体で540万人が人道支援を必要としている危機的な状況です。

2023年には、スーダン国内での武力衝突が激しくなったことで、数多くのスーダン人が南スーダンに逃れてきました。また、それ以前にスーダンで暮らしていた南スーダンの人が大量に戻ってきています。ですから、近隣諸国からの難民に加えて、帰還民、彼らを受け入れるホストコミュニティの人たちがみんな支援を必要とする状況になっているのです。

Photo 2 Engaging with beneficiaries at a water point

photo 3 PWJ Project Manager assisting new arrivals to access water
新たに居住地区に到着した難民にピースウィンズのスタッフが給水施設の使い方を案内する

――ピースウィンズ・ジャパンは難民居住地区での給水事業を担っているのですよね?

はい。首都ジュバから25キロほど南西にあるゴロム難民居住地区の給水衛生分野の支援を担当するUNHCRの事業実施パートナーとして、貯水タンクを設置したり太陽光で稼働する給水システムを整備したりして、定期的にメンテナンスしてきました。

また、仮設トイレや手洗い場を設置して、排水管理も行っています。ただ今年2月に入ってアメリカの海外支援が凍結されたことで、資金拠出を受けていたUNHCRが手配していた給水トラックの運用や衛生啓発活動の継続が困難になりました。そのため既存の給水設備を修理して、できる支援を続けていますが、居住地区の人々は水を手に入れるために長い列で待たなければならないなど厳しい状況は続いています。

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人々の声になりたい

――オウマさんが最初に南スーダンに駐在したのが2016年。その後、ケニア、ウガンダ駐在を経て2023年に南スーダンに戻ってきました。この間に南スーダンは変わりましたか?

着実だけれどゆっくりした進歩、という感じでしょうか。

――対立の種が尽きない地域で平和を構築していくためには、教育をはじめ複合的なアプローチが必要だと思います。南スーダンではどのような取り組みが行われていますか?

私たちは常に、支援を受ける人を中心に置いたアプローチをとっています。つまり、難民居住地区で暮らす難民とホストコミュニティの人たちが平和的に共存していけるように、設備のメンテナンスなど積極的に共同参加を促し、難民だけでなくホストコミュニティにも恩恵が届くように、対話を重ねながら一緒に事業を進めることを心がけています。

Photo 4 PWJ CR handing over water points to water user committee
給水施設の管理を居住地区の人たちに委ねるセレモニー

――ケニア出身のオウマさんが南スーダンで難民支援をするようになったのはどうしてですか?

エンジニアとしてケニア・エンジニアリング・コンサルティング会社で働いていた時、ウガンダやタンザニアなどアフリカ各地で仕事をする機会がありました。話を聞くうちに地元の人々の苦しみがわかるようになりました。世の中には運に恵まれなかった人がいる。私が持っているものを持っていない人がいる。それならば、知識であれ経験であれ、持っている人が知恵をシェアするにはどうすればいいか考えはじめたのです。

――オウマさんの目標は何ですか?

私の故郷はビクトリア湖畔の漁業の町キスムです。いつかここに戻って、故郷の問題を解決する人間になりたい。それまでに、地元が抱える様々な困難を乗り越える道を示すことのできる知識と経験を蓄えておきたいのです。政治権力を握るのではなく、人々の声になりたいのです。

 

ジェイムズ・オティエノ・オウマ
ケニア出身。エンジニアとして2016年南スーダンにおけるピースウィンズ・ジャパンの事業に参加。2020年ケニアの事業に関わり、2020年から2023年までウガンダのプログラムオフィサー。2023年から南スーダン現地調整員を経て、2024年2月から現職。

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広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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