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インタビュー

アフガニスタンから逃れてきたSさんがアメリカ行きのビザを手にするまで

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部

去年の初夏に会った時と違って、Sさんは晴れ晴れとした顔をしていました。ようやくアメリカ行きのビザが取れたからです。2021年夏、米軍の撤退と同時に政権が崩壊し、タリバンに再び支配されたアフガニスタンでSさんは命の危機を感じ、日本に逃れてきてからずっとアメリカのビザを待ち焦がれていました(以前のインタビューはこちら)。その間、どんな思いを抱えていたのか振り返ってもらいました。

――日本にやってきて2年以上かけて、やっとビザが手に入ったのですね。その経緯を教えてください。
 
Sさん アフガニスタンを逃れる前、米政府系援助団体で働いた経験があったので、アメリカで暮らすためのビザを申請しました。でも申請を受理したというメールが来たのは何ヶ月も後のことでした。それからさらに1年以上経った去年の暮れ、アメリカの移民局から突然電話がかかってきました。忘れもしない湯島の駅にいた時のことでした。ビザのための審査を行うので東京の事務所に来てくださいと。それから1週間のうちに面接や健康診断などがありました。そして3月に入って、IOM(国際移住機関)から電話がありました。電話口の人は「おめでとうございます。ビザが承認されました」と言ってくれました。
 
――どんな気持ちでしたか?
 
Sさん  とにかく嬉しくて、ワクワクしました。
 
――日本での暮らしは意に沿わないものでしたか?
 
Sさん  日本で暮らしたことには忘れられない経験になりました。支えてくれた人々、アルバイト先や手伝いをした千葉大学で知り合った先生と日本人の友達、みんなが親切にしてくれました。とりわけピースウィンズのみなさんには家族以上に支えてもらいました。でも、どうしても埋められない心の空洞がありました。周りに人がいるとかいないとか、そういうことではない孤独感に悩まされました。アフガニスタンは人間関係が緊密な社会です。長く続いた紛争で誰もが辛い経験をしているだけに、家族や友人は互いを支え合って生きてきました。そういうものから切り離されて、身分もはっきりせず、将来が見えない中、一人で暮らすのは精神的に辛い経験でした。
 

「友達」と呼んでいた代々木公園の木

 
―― アルバイト先でも不本意な思いを味わったとか?
 
Sさん 生活をしていかなければならないし、アフガニスタンに残る家族も支えなければならないので、アルバイトをしました。でも、日本語ができないために思うような仕事にはつけませんでした。アフガニスタンの大学院で法律を学びましたが、言葉の壁があって専門知識を活かせる仕事にはつけません。レストランや居酒屋、運送業界でアルバイトしましたが、理不尽な目に遭ったり、重い荷物で体を壊したりしました。
 
―― Sさんが日本にいる間に、ロシアによる侵攻でウクライナの人が日本に避難してきました。日本政府は経済的支援をしましたが、どのような思いでご覧になりましたか?
 
Sさん ウクライナの人たちもとても辛い思いをしていると思います。日本政府が支援したのは良いことだと思います。ただ、私自身も含めて日本に逃れてきたアフガニスタンの仲間たちが日本政府から何の支援も受けられなかったことを考えると、複雑な気持ちになります。
 
⚫️ 「難民を助ける仕事をしたい」
 
――アメリカに行ったら、どんな仕事をしたいですか?
 
Sさん まだわかりませんが、できることをまずは探してみます。国連やNGOなどで、難民を支える仕事に就けたらいいと考えています。アフガニスタンに限らず、政治に翻弄されて苦しい思いをしている人がたくさんいますから、そういう人たちの力になりたいと思っています。
 
―― もうすぐ日本を離れるわけですが、今、どんなことを考えていますか。
 
Sさん  すでに日本が恋しくなっています。今はできるだけ東京を歩き回って、いろいろなものを心に焼き付けようとしています。日本での日々は本当に忘れ難いものです。ここで大切な経験をさせてもらいました。
 
――いつの日か、アフガニスタンに帰れる日が来たら帰りますか?
 
Sさん はい。タリバンが支配する間は帰れませんが、いつか状況が許せば、帰りたいです。アフガニスタンを出る前は知らないことがたくさんありました。でも今は、外から自分の国を見る経験を経て、さまざまなことを学んで、自分がアフガニスタンのためにできることはたくさんあると感じています。アメリカでもっと多くの経験を積んで、いつか国に帰って役に立ちたいです。
 
―― ありがとうございました。どうかお元気で!
 

国を離れる時、Sさんが飛行機の窓から撮影したカブール

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広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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