【パレスチナ】「天井のない監獄」にいるガザ地区の人々を支援するために
10月7日現地時間の朝7時前(日本時間13時前)、パレスチナのガザ地区からイスラエルに向けて大量のロケット弾が発射されました。
イスラエル軍は、これに応戦してガザ地区を空爆し、双方に死傷者が出ています。
パレスチナ側の武装勢力がイスラエル側に侵入し、各地で戦闘が続いている状況です。
パレスチナ・ガザ地区内の状況
ガザ地区では16年間イスラエル政府による封鎖で人や物の出入りが厳しく制限され、「天井のない監獄」と言われています。
その結果、経済状況は悪化の一途を辿っており、人口の約半数にあたる若年層の約7割が失業状態にあるなどガザ地区の人道状況は極めて劣悪な状況です。
また、毎年のようにイスラエルによる大規模な空爆が行われ、市民が居住するビルや商業ビルなどにも被害がおよび、空爆の度に子どもを含む民間人が犠牲になってきました。ガザ地区沿岸やイスラエルとの境界付近では、ガザの漁師や農夫がイスラエル兵に銃撃される等の事案も日常的に起こっています。
このような状況下で、人々は疲弊し、希望を失いつつあります。
9月中旬から連日行われていた数百人の若者も参加するイスラエルとの境界地域での抗議運動にイスラエル軍が発砲して犠牲者が出る等、イスラエルとガザ地区の間の緊張は今までになく高まっていました。
パレスチナのその他の地域の状況
今回の攻撃の背景には、こうしたガザ地区内の緊張の高まりに加え、聖地エルサレムやヨルダン川西岸地区の状況も含まれます。
今年に入ってからはヨルダン川西岸地区の各都市で、イスラエル軍の攻撃が激化していました。
本年8月末時点でのパレスチナ人の犠牲者は167人 に上り、「テロ行為を行った、もしくは計画した」と見なされた多くの人が拘束されています。
国際法で不法とされる「行政拘禁」が予防的懲罰的目的で常態化し、その措置に抗議するパレスチナ囚人によるハンガーストライキにより、5月には西岸地区での政治的指導者が亡くなりました。
現在も何度目かの長期ハンストを続ける囚人がおり、絶命の危機にあります。
また、10月上旬、ユダヤ教の祝祭であるスコット(仮庵の祭り)の期間中に、数千人のユダヤ教徒がイスラム教の聖地であるエルサレムのアル・アクサー・モスクの敷地内に入るという事案がありました。
アル・アクサ―・モスクの敷地は(モスク建造時から)継続してイスラム教の第3の聖地です。
その歴史的な事実を尊重して、日本も含め国際的にも「現状維持」が合意されています。
合意では、このイスラム教の聖地に他の宗教の信者が自由に入域すること、また敷地内で礼拝行為を行うことは禁じられています。
特に、紛争が続くイスラエルとパレスチナにとっては、この聖地の問題は極めて重要で、イスラエル建国によって郷土を奪われ、難民やイスラエル占領下での不当な境遇を強いられているパレスチナ人にとって、死守すべき最後の砦とも言えます。
しかし、この敷地内にかつてのイスラエル王国の神殿があったと主張し、神殿の再建を目指すユダヤ教過激派が、近年はより組織的にイスラエル軍の護衛のもとに入域し、さらにはユダヤ教の礼拝行為を実行し、イスラエル国旗をかざすなど、この聖域を奪取する目的が顕著な行為が繰り返されています。
それに抗議するイスラム教徒(パレスチナ人)をイスラエル軍が武力鎮圧し、モスク内を破壊するなど聖地への冒涜も繰り返されてきました。
国際社会が有効な介入をしないまま、現在の極めて右派のイスラエル政権のもとで着々と目的の実行が目指されており、パレスチナ人ひいては世界のムスリムにとっても聖地が奪われる危機的な状況に直面しています。
西岸でもエルサレムでも、イスラエルとパレスチナの緊張は非常に高まっていました。
ピースウィンズのこれまでの支援と今後行う緊急支援
ピースウィンズは、これまでガザ地区にて子どもや若者への支援、また、空爆後には被害を受けた市民への緊急食糧配付などを行ってきました。
今回も、安全に活動できることが確認でき次第、被害者への支援活動を直ちに実施できるよう、準備を進めています。
ピースウィンズは、いかなる理由があっても武力による暴力には賛同しません
ガザ地区からのロケット弾発射とイスラエルによるガザ地区の空爆は、これまでも繰り返されてきましたが、今回はこれまでと規模が違います。
ハマス戦闘員がイスラエル側に侵入し、イスラエル兵士を人質にとっていることに対し、イスラエルは「戦争状態にある」と宣言し、状況のさらなる悪化が懸念されます。
ピースウィンズは、いかなる理由があっても武力による暴力には賛同しません。
人々の安全が一日も早く確保されるよう、武力攻撃の停止を求めます。