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コラム&インタビュー

【ウクライナ それぞれの4年(2)】テティアナ・プロホトニク――「新しい生活」に適応しようとするウクライナの人々を支える

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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「ファミリーハブ」スタッフと共に(右端がテティアナ)

ピースウィンズはウクライナのジトーミル州ズヴィアヘル市で、現地NGOエレオス・ウクライナと連携して、戦争の影響を受けた女性や子ども、近隣で暮らす国内避難民や地元住民に無料で法的、社会的、心理的支援を提供する「ファミリーハブ」活動を行っています。ここでさまざまな活動のコーディネーターを務めるピースウィンズスタッフのテティアナ・プロホトニクに、変化するウクライナの暮らしと人々の思いについて聞きました。

心のバッテリーの能力が落ちている

――2025年にピースウィンズに加わる前はどんな仕事をしていたのですか?

テティアナ:大学院で組織管理を学び、広告の仕事をするかたわら、UNDP(国連開発計画)やUNFPA(国連人口基金)など国連機関のプロジェクトの一環として、ウクライナ各地の社会人口学的調査をしていました。電話や面接で戦争に対する人々の意識を調査したり、こうした調査をする人々への指導を行っていました。

――こうした調査でどんなことがわかったのですか?

テティアナ:ロシアが侵攻する前、ウクライナの人たちは戦争が起きるなんて想像もしていませんでした。万が一に備えての非常持ち出し袋さえ、備えてある家はほとんどありませんでした。侵攻が始まってからも、多くの人は数週間で終わると思っていました。でもそれが過ぎたとき、人々は2〜3ヶ月続くことに備えました。そしてそれがどんどん伸びて、もうすぐ5年目に入ってしまいます。これまでの4年間をどう受け止めるかは、住んでいる地域によって大きく違うと思います。私が住んでいるジトーミルでは、数週間前にロケットが落とされて、近所で大きな被害が出るなど緊迫した状態が続いています。

こうした暮らしの中で私が感じるのは、たとえて言うならば、人々の心のバッテリーがどんどん摩滅していることです。攻撃があるとバッテリーの電力は落ちてしまいます。でも、しばらく穏やかな日があると徐々に回復してなんとか日々の暮らしをやっていけるようになりますが、だんだん充電が満タンに戻らなくなっているように思います。年を重ねるごとに、バッテリーの能力が落ちていくのです。

――回復力が落ちていくのですね。そんな生活が4年も続いて、今、どんなことを考えますか?

テティアナ:私たちは「新しい生活」に向けて頭を切り替えていかなければならないと思います。たとえ戦争が終わってもウクライナの生活は元通りにはなりません。戦争前のように「安全」と思えることはないでしょう。ですから、子どもの将来を考えて海外に移住する人もいれば、国内にいてもポーランド寄りの地域に移ろうと考える人など、考え方はさまざまですが、いずれにせよ前とは違う「新しい生活」を考えざるを得ないと思います。これは高齢者にはとても難しいことですし、若い人でも悩みます。さらに、戦場で戦って戻ってきた退役軍人たちも体や心に傷を負って人生が変わってしまった人が数多くいます。その意味でも多くの人が「新しい生活」に適応していくために、ウクライナには臨床心理士が数多く必要なのです。

――ピースウィンズに加わって、今まさにその支援を行う「ファミリーハブ」活動をやっているわけですが、この仕事のやりがいはどんなところにありますか?

テティアナ:人々が変わっていくのを支援することにやりがいを感じます。市当局やNGOなどと連携して、コミュニティとしての変化を促せば、影響は大きく広がっていきます。

Activity in Family Hub SW
「ファミリーハブ」のソーシャルワーカーによる「新しい生活」に適応するためのグループセッション

――ファミリーハブで行っているビジネス・トレーニングでは、起業を目指す人々に講義や実践的な訓練を行っているそうですが、受講生にどんな話をしますか?

テティアナ:私は講師ではなくコーディネーターですが、休憩時間や聞き取り調査の時に受講生と話をすることがあります。私自身ビジネスの経験があるので、求められればアドバイスすることもあります。その時に言うのは、起業はお金のためだけでなく、「自分が心から大切だと思うこと、心に火をつけるもの」のためにすること。今のウクライナで将来はとても見通しにくいけれど、それでも前に進まなければならないのだから、「5年先」を見据えて準備をしてくださいと伝えています。

――テティアナさんの「心に火をつけるもの」は何ですか?

テティアナ:私は新しいことに挑戦するのが好きです。ルーティンワークが好きという人もいますが、私はルーティンは30%以内に抑えたい。新しい場所に旅をして、おもしろい人たちと新しいことを常にやっていきたいです。ピースウィンズで、平等や尊厳など価値観を共有できる日本のスタッフとローカルスタッフと、とても良いチームワークでウクライナの人々を支援できる今の仕事はとても充実しています。イベントなどで日本人スタッフを見かけると、みんな驚くのです。「どうしてここに日本人がいるのか?」と。「ウクライナ支援のために来ている人です」と紹介すると、すごく喜んでくれて、「遠い日本から来てくれる人がいるのなら、自分たちもできることはやらないと」とウクライナの人々のモチベーションも上がるので、本当に励まされます。

PWU Ladies
互いに刺激し合いながら良いチームワークで活動しています

ピースウィンズのウクライナ支援事業は、みなさまからのご寄付やジャパンプラットフォームからの助成金、外務省のNGO連携無償資金協力によって実施しています。引き続き、温かいご支援をよろしくお願いします。

【取材・文】
草生 亜紀子(くさおい あきこ)
The Japan Times記者、新潮社『フォーサイト』副編集長などを経て独立。ピースウィンズ海外事業部の業務を行いつつ、フリーランスで執筆や翻訳をしている。著書に『理想の小学校を探して』『逃げても 逃げてもシェイクスピア』、中川亜紀子名での訳書に『ふたりママの家で』がある。


【ウクライナ それぞれの4年】
(1)イグナット・トゥレンコさん――前線付近からペットの救出活動を続ける
(2)テティアナ・プロホトニク――「新しい生活」に適応しようとするウクライナの人々を支える
(3)ハリーナ・ツィンバリュクさん(救急医)――危機的な状況で働く医療従事者の育成が急務


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広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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