【ケニア】ごみが難民を救う?
年中真夏のような気候の乾燥地帯、カクマ。ケニアの首都ナイロビから800km(徳島県から見れば栃木県と同じくらい)離れた北西部トゥルカナ郡に位置し、常に水や資源不足の問題を抱えています。こうした厳しい環境の地域にあるのが、約37万人(うち難民が約28万人)、7か国以上の人びとが居住する、カクマ難民キャンプとカロベエイ統合居住地区です。難民の受け入れが始まってから32年もの年月が経った今、現地住民と難民がともに居住する巨大な統合居住地区へと拡大し、昨年、政府により一つの地方自治区として認められるまでになりました。
人口増加に伴い悩まされるのが、ごみ問題です。この地域では、穴を掘り、その中へごみを捨てたり、野焼きをしたりといったごみの処分方法が一般的です。不法廃棄も多く、あちこちで巨大なごみ山や道端に捨てられたゴミの散乱を目にします。これは地域の衛生の悪化につながり、腐敗した食物などは、感染症を媒介するハエ、蚊、ネズミの生息を促し、下痢やマラリアなどの感染症を引き起こす要因にもなっています。
こうしたごみ問題に対処するため、私たちは現地の住民団体と協力し、ボランティアによるごみ回収を行っています。同時に、地域の市場では公共のゴミ箱を設置し、住民にごみの適切な処理や分別を促します。一連の活動のポイントは、ごみを捨てるのも、管理するのも、適切な対処方法を指導するのも、すべて難民を含む住民たち自身が主体となって取り組むことです。一部地域では「もっと定期的にゴミの回収に来てもらわないと困る」と他人事のような住民も見られ、理解を得るのに苦労することもあります。その一方で、心の奥底ではどうにかしなければと思いながらも、あまりに大きな問題を前に行動を起こせなかった住民が大多数であることも分かりました。今、彼らに必要なのは「自分たちの生活は自分たちで守る、自分たちのごみは自分たちで処分する」という決意です。住民たちが互いに意識や行動を変えようと働きかけ、行動を起こすきっかけを作ると同時に、人びとが納得できる方法を一緒に探すよう、試行錯誤しながら取り組んでいます。
しかしながら、こうしたサービスをボランティアで続けていくことには限界があります。そのため、私たちはごみ回収に留まらず、分別したごみを元に収入を得ることで住民が自ら継続的に回収サービスを行い、地域を清潔に保っていけるよう計画しています。そのほかごみ回収を含む公共サービスの整備など、現地住民と難民が平等に生きる社会へ向けて、政府とも協同しています。将来的には生ごみやプラスチックごみを新たな製品として生まれ変わらせる設備が地域に整い、地域内でごみが循環・リサイクルされる仕組みの実現を目指しています。
ごみという新たな収入源は、カクマという資源に乏しい環境下で難民居住地区が大きく変わる可能性を秘めているだけに、期待が寄せられています。ピースウィンズは、今後も地域に合った方法で、難民を含む地域住民に寄り添いながら、さまざまな課題解決に取り組んでいきます。
本事業は、外務省日本NGO連携無償資金協力、鹿児島県大崎町様のご協力のもと実施しております。