【スリランカ】「買えないけれど、必要なもの」を届けた支援

2025年11月末、スリランカを襲ったサイクロンは、国内全土にわたって洪水や土砂崩れを引き起こし、スリランカという国、そして人びとの生活に大きな爪痕を残しました。
私たちが平常時から事業を行ってきたスリランカ東部に位置するトリンコマリー県では、大きな河川が複数氾濫したほか、河口付近ならではの砂質土壌による地盤の緩さなど地理的条件が積み重なり、広範囲にわたって浸水被害が発生しました。住宅の浸水や農地の冠水、道路の寸断など、洪水によって被災した人びとは一時9万人にものぼりました。

発災直後から、当団体の緊急支援チームは、一時孤立状態となっていた集落など県内各地へ赴き、状況調査を行いました。1週間にわたる現地政府との調整、避難所や被災した家屋に住み続ける人びととの対話を通じて、収入源を失ったことによる生活への打撃の大きさ、そして元の生活へ戻っていくことの難しさが明らかになりました。
トリンコマリー県に限らず、スリランカでは多くの家庭が農業や畜産を主な収入源にしています。今回のサイクロンで私たちが目にしたのは、普段なら青々と広がっているはずの田んぼが一面泥水に覆われ、川とも湖ともつかないような姿でした。


「私たち家族の田んぼは、もうそろそろ稲穂がつき始める頃でしたが、洪水によって浸水し、収穫が見込めなくなってしまいました。それでも牛やヤギ、鶏がいれば売ってお金にすることもできたのですが、水に流されて死んでしまうなどして、多くを失ってしまいました」(被災者の声より)
収入を失った家族にとって、日々を生きるのは至難の業です。洪水の後、どうにか現金を得ようと、日雇いの仕事を探しにバスで遠くの街まで出稼ぎに行っても、そこで仕事を得られる保証はありません。こうした被災状況に対して、地元企業や一般個人による寄付や、地域の教会、モスクなどの各宗教施設による物資配付、ボランティアによる被災した家や病院の泥かき作業など、相互扶助の動きは活発にみられます。また、政府による自宅清掃のための支援金も早々に決定し、順々に給付が始まりました。
しかし、発災後1ヶ月の間、被災者に届く物資の多くは「数日間を生き延びるための食料」です。収入源にも大きな被害を受けた人びとには、生活を立て直すのに十分な量が届いていません。そのため、政府から給付された清掃用の支援金を食料の購入にまわすケースが多くみられました。

一方で、洪水により一時的に床上浸水し、水が数日間引かなかった家が多いことも、調査によって明らかになりました。
家の中に入ってきた水は、家畜の排泄物などを含む汚水です。清掃や消毒をせずに放っておけば、カビを含む雑菌が繁殖し、健康に害を与える可能性があります。また、家の周りに残った水溜まりや放置された井戸の水からは蚊が発生し、洪水発生前から警告が発されていたデング熱のさらなる蔓延にも繋がりかねません。
限られたお金では食料や水を優先にし、その結果、消毒剤や蚊帳、蚊取り線香のような「健康を守るのに本当は必要だけど後回しになりやすいもの」が買われにくくなります。私たちは、まさにそのギャップを埋めるために、12月中旬から後半にかけてトリンコマリー県内で最も洪水被害の大きかった南部4郡の1,267人へ、清掃用品と衛生用品のセットを提供しました。

実際に配付を行った現場では、人びとは列を作って並び、両手一杯の荷物を受け取りました。
母親についてきた小さな子どもが枕を抱えてお手伝いする姿もありました。


配付対象となる家族は、被災状況などを加味して現地政府が決定しますが、ここは緊急対応に追われ誰もが混乱している状況下。手違いが起き、配付対象ではない人びとが配付会場へ来てしまうという場面もありました。そうした中でも、奪い合いなどのトラブルには発展せず、再度出直してくるという私たちの説明に住民の皆さんは最終的には納得してくれました。後日、配付のために再訪した際には「約束を守ってくれてありがとう」との言葉が聞かれました。

現地の支援チームは、2026年2月現在、スリランカ中央地帯の山間で起こった土砂崩れによる被害のため、今も親類や知人の家で避難生活を続ける人びとへ支援を届けるため、準備を進めています。
皆さまからいただく応援や激励のお言葉が活動を続ける力になっています。これからも、私たちの活動を温かく見守ってくだされば幸いです。
※本活動は皆様からのご寄付やジャパンプラットフォームからの助成で実施しています。

