【インドネシア】地元行政も巻き込んだ避難訓練を開催
インドネシアも日本同様、地震や洪水などの自然災害が多い国の一つです。
インドネシアでの過去20年間(2000年~2020年)、自然災害における死者数は、18万8千人を越え、これは日本の約7倍にものぼります。
災害時の瞬時の決断と迅速な行動は人の命を救うことに確実につながります。だからこそ、防災・減災の正しい知識を身につけることは非常に大切であると考え、PWJは昨年10月からスラウェシ島中部スラウェシ州シギ県の2村において、提携団体のINANTAと共に防災・減災事業を実施しています。これまで地元行政(防災局、国家捜索救助局)や赤十字の協力を得ながら、各村から選出された10人の「防災ファシリテーター」に対し、災害発生時、彼らの任務となる村人を安全な場所に避難するための誘導、負傷者の対処といった被災者への対応などについて、研修を実施してきました。
5月中旬、これまで得た知識をもとに実際災害が起きた時に適切な行動ができるかどうかを確認するため、洪水と地震発生を想定した避難訓練を実施しました。参加者皆、生まれて初めての体験でした。今回はその様子や感想をお伝えします。
防災ファシリテーターが避難訓練実施前にそれぞれの役割を最終確認している様子
村では発災時には竹を鳴らして周囲に危険を知らせます。
竹の音が村に鳴り響き、子どもたちや大人たちが避難を開始。
大地震で破壊された建物内にいる生存者を救出するため、救助隊が酸素を担いで建物内に入っていきます。
救出された生存者を防災ファシリテーターたちが救急車に運び入れます。
つづいて、避難訓練参加者からの感想とそこでの学びについてもいくつかご紹介いたします。
アグスティナエーさん(シギ県カラワラ村の防災ファシリテーター)
「人生初の避難訓練は、予想外のことばかりでした。避難訓練時の私の役割は、救援テントに来た被災者を軽傷、重症、死者に分けることでしたが、被災者が一気に運ばれてきてしまったためにうまく分けることができませんでした。もし実際の発災時に同じことが起きた場合には、救援チームが迅速に適切な治療を行うことができません。私は、自身の役割の重要さを再確認し、災害に備えて今後も村人たちと一緒に避難訓練に取り組みたいと思いました。」
アブドゥルさん (シギ県パクリ村の防災ファシリテーター)
「避難訓練は想定していたよりもずっと大変でした。これまでの研修ではリスク分析、リスク回避のための行動やそのための準備、発災時の対応方法の原則など主に理論を学び、私は防災減災に関する知識を十分に身につけることができたと思っていました。しかし、避難訓練を行ってみて、頭で理論を理解することと行動に移すことは全く別ものであること痛感しました。」
タスワンさん(シギ県グンバサ地区長)(写真右から3番目)
「避難訓練のような発災時を想定した模擬訓練を行うことで、みんなが落ち付いて行動できるようになり、被害を最小限に防ぐことができると思います。震災はいつ起こるかわかりません。わからないからこそ、このような準備や練習が非常に大切だと思いました。」
アマティアニさん(地元防災局の救急部部長)
「避難訓練は非常に大変でした。特に村長、国家捜索救助局の救助チーム、赤十字の救護チームや村の防災チームと私達防災局が円滑に連携することが一番難しいと感じました。避難訓練は、チームの5、6名が負傷者1人ずつを順番に救助するようなシナリオでした。しかし、実践してみた結果、救助チームからはこの方法では多くの人を救うことができないと言われてしまいました。その時に、どのような指示を出すことが一番良いのか非常に悩みました。しかし、これはまさに発災時も同じ、もしくはこれ以上に混沌とした状況になる可能性があるので、今回の避難訓練は非常に学びの多い訓練だったと思います。」
他の参加者も「大変だった。」、「難しかった。」と人生初の避難訓練に難しさを感じている反面、「有意義な時間だった。」と答えていました。
また、参加者の多くが、避難訓練だけではなく本事業を開始してからの約半年間の学びもたくさん語ってくれました。その中で、パクリ村の防災ファシリテーターであるアブドゥルさんの言葉が特に印象深かったので、ご紹介します。
「防災事業に参加したこの半年間で、地元行政の職員と村の住民たちみんなが同じ知識を身につけ、協力して村の災害管理書を作り、災害時の対応方法に関して共通認識を持てたことはとても意味のあることだと思いました。そして何より、防災・減災の知識が人の命を救うことができると確信を持てたことが私の大きな励みになりました。私は村のファシリテーターとして、村人一人ひとりが発災時の対応方法をしっかり理解し 、発災時に適切な行動がとれるよう 、他のファシリテーターたちと地元行政の方々と研修会を開き、村全体に広めていきたいと思います。」
防災や減災活動の成果を目で見ることは難しいです。しかし、今回のインタビューを通して、一人ひとりの知識が向上し、さらには人々の防災・減災に関する意識や行動の変化(災害への備えの実施など)があったことは明らかだと実感しました。
PWJは今後もINANTAと協力し、現地のための防災・減災事業に尽力していきたいと思います。
この事業は、皆様からのご寄付のほか、ジャパン・プラットフォーム(https://www.japanplatform.org/) からの助成金で実施しています。
今後とも、温かなご支援をよろしくお願いいたします。