インドネシア事業終了報告
2009年9月30日にインドネシアのスマトラ島西部パダン沖で起こった地震から1年以上が経ちました。ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、被災直後に現地入りし、物資の緊急配布などの支援を行いました。その後は復興に向け、地元のNGOであるビナスワダヤと協力して農村部6ヶ所での給水施設建設を実施しています。ビナスワダヤは、40年以上の歴史を持ち、農村での支援に実績を上げているインドネシアの代表的なNGOです。2010年11月に給水施設がすべて完成し、11月30日にはPWJスタッフの立会いの下、ビナスワダヤから地域への引渡し式が行われました。
パダンパリアマン県の農村部は、都市部から離れているため男性は出稼ぎで家を空けることが多く、女性、子ども、老人が多い貧しい地域です。事業を実施したスンガイプール・タンジュンムトゥス地区には317世帯1,044人が住んでいますが、今回の地震で住宅333戸のすべてが全壊あるいは半壊という大きな被害を受けました。
復興支援開始後からスタッフは村に泊まりこみ、どのような村にしたいか、村人と何回も話し合いを重ねました。その中で、全壊住宅の再建や壊れた灌漑施設の修復が必要なだけでなく、それまで川や雨水を使用していた習慣を改め、きれいで安全な水を使いたい、さらには、今後のために防災知識が必要だという意見が多く出るようになりました。被災をきっかけとして、よりよい村にしていこうという気持ちが生まれてきたのです。
その後PWJは、村の6ヵ所に給水施設を建設。掘削井戸に電動ポンプをつなげて揚水し、貯水タンクに水を溜めるものです。タンクには蛇口がつき、村人は川まで行かなくともきれいで安全な水が手に入るようになりました。
村人はお金を出し合って給水タンクから自宅そばまでパイプを延長したり、水使用料を回収することにして補修費用を貯めるなど、自主的にプロジェクトに参加してくれました。さらには、村人から防災訓練を実施しようという声があがり、秋には大地震が起こったことを想定した避難訓練や、けが人を救助するための訓練も行いました。津波警報が発令された際などに村中に警報を伝えるための、防災委員も任命されました。
11月30日の引渡し式には、防災委員を筆頭にたくさんの村人が集まり、ビナスワダヤとPWJのほか、住宅改修や灌漑施設の修復を支援したオランダのNGOや、県の防災担当官が参加しました。防災担当官は、「このような地域で、災害に強いコミュニティーをつくる試みはまだ新しく、行政としても見習ってこの仕組みを取り入れたい」という話がありました。
この給水施設の完成をもって、PWJはインドネシアでの活動を終了しました。たくさんのご支援、ありがとうございました。インドネシアでの経験を生かし、PWJはこれからも、より支援の必要な地域で活動を続けていきます。