ハラブジャ母子病院の建設開始
先天性異常の新生児の出生や妊娠異常になる率が周辺地域に比べて高いため、化学兵器による後遺症が疑われ、母子医療体制の強化が課題となっているイラク北部のハラブジャで、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が2007年から準備を進めてきたハラブジャ母子病院の建設が始まりました。産婦人科・小児科の機能と十分な設備を備えた2階建て50床の病院は2009年中にも完成の予定です。
(C)Peace Winds Japan
イラク北部クルド地域は1980年代にイラク軍による化学兵器の攻撃を受け、スレイマニア州ハラブジャに88年3月、毒ガス爆弾(サリン、VXなどの混合ガス)が落とされました。この爆弾により、当時人口8万人だったハラブジャでは、市民約6000人が死亡し、約2万5千人が負傷したといわれています。さらに、被害は直接被害を受けた人にとどまらず、先天性異常の新生児や妊娠異常が高率で発生しています。
こうした状況に対応するため、PWJは産婦人科と小児科専門の病院建設と、医療にかかわるスタッフの研修を実施することになりました。建設予定の母子病院は2階建て50床。手術室、分娩室、新生児室、検査室、産婦人科病棟、小児科病棟、緊急手術室を備えます。総事業費は約9億円です。
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病院の建設では、イラク保健省が土地を確保し、法律で細かく定められた基準に従って建物の仕様などが決まりました。設計は、日本人とイラク人の合同デザインです。意匠設計は荒木洋建築士が担当し、詳細設計を実施した地元の建築士や保健省などとの調整で、イラクと日本を何回も往復しながら作業が進みました。
(C)Peace Winds Japan
工事にあたっては、公開入札を実施しました。たくさんの業者が応札しましたが、1回目の入札では希望価格に見合うところがなく、2回目の入札でようやく施工業者が決まりました。決定した業者と土地の確認、契約の確認などが終了し、8月から工事がようやく開始されました。
(C)Peace Winds Japan
8月のイラクは気温が45度になることも珍しくないほど熱く、続く9月はイスラム教の断食月が始まったため、日中の飲食ができませんでした。しかし、こうした事情があるなかでも、工事は着々と進んでいます。
※ハラブジャ母子病院の建設は、国連開発計画(UNDP)の協力も得て進めています。