【ケニア】難民に安全な水を届けるための給水チームの奮闘
東アフリカに位置するケニア。その北東部にあるダダーブ難民キャンプ、北西部にあるカクマ難民キャンプ及びカロベエイ統合居住地区には、それぞれ約40万人、約30万人の難民が滞在しています。ピースウィンズは、このキャンプ及び居住地区において、ケニア政府と国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)の委託団体として難民に安全な水を供給する役割を担っています。水の入手自体が容易ではない乾燥地にありながら、日本の大阪府吹田市(人口35万人)や、東京都新宿区(同25万人)規模の人々が暮らす難民キャンプで、安全な水を届ける仕事には様々な困難が伴います。ピースウィンズは、難民や難民受け入れ地域の人びとが生活のために最低限必要な量の水をどんな時も供給できるよう、日々奮闘しています。様々な活動を展開するピースウィンズのケニアチームから2024年の暮れにお伝えするのは、人々が人間らしく生活する上で一番基本となる「水の確保」の裏側です。
給水の仕事は大きく4つに分けられます。まず一つ目は井戸の運営と保守(設備や機械が正常に動作するよう、点検・整備すること)です。カクマもダダーブも難民への給水は地下水(井戸水)に頼っており、カクマでは23基、ダダーブでは21基の井戸が水源として使用されています。地下水の汲み上げは、日中は太陽光発電、日暮から早朝まではディーゼル発電が利用されていますが、その操作や管理はピースウィンズで働く難民や難民受け入れ地域出身の井戸管理士が担っています。また、発電設備や汲み上げのためのポンプの定期的な点検や修理には、同じくピースウィンズの電気や機械の技術工が活躍しています。
難民キャンプでは水を平均12mの高さの貯水タンクに汲み上げ、地表までの高低差を使って水道管に押し流すという給水方法が使われていますが、貯水タンクや水道管の運営、整備も私たちの仕事です。両キャンプとも、1990年代初めに設立以降、人口増加によるキャンプの拡大に伴い、給水網も拡張されてきました。各地域に平等に水を届けるためには、緻密な技術計算に基づいた水道管の配置が求められますが、難民キャンプの人口動向は予測が難しく、計画に則った給水網の開発は困難であった上、多くの施設は老朽化しており、その結果、給水量の地域的な格差や貯水タンクからの水漏れ、頻繁な水道管の破裂等の障害が生じています。ピースウィンズの技師たちは、このような問題を理解した上で、可能な限り平等に、安定した給水ができるよう、システム全体の運営、整備計画を立て、それに従って、水道管整備士や給水弁管理士が日々の作業にあたっています。かれらは住民から水道管破裂などの障害が報告されたときには、週末でも水道管、修理道具を携えて修理に駆けつけます。
給水の仕事の3つ目は、安全な水を届けるための水質管理です。汲み上げられた井戸水の安全性は定期的な検査で確認されていますが、水が水道管を通って人々に届けられる過程で、病原菌が混入する可能性があります。よって、汲み上げられた水に機械を使って殺菌効果のある低濃度の塩素を添加することで、細菌等が混ざっても水の安全性が保たれるようにしています。塩素注入器の操作は井戸管理士の仕事ですが、水質検査技師がさらに各井戸を訪問し、決められた量の塩素が添加されているか点検、指導します。また、水質検査技師は、難民の衛生啓発員が各家庭から採取する水サンプルを使って、人々が使う水が汚染されていないことを確認するための検査も行っています。
安全で平等な水の供給は、住民の協力なしには実現できません。難民キャンプ、居住地区では各家庭に水道管が届いているわけではないため、約30世帯が一つの公共の水汲み場を共有しています。水汲み場で人々が平等に水を汲めるようにすること、水汲み場で決められた時間に水が出なかったり、水道管が破裂したり等の問題が生じた際にピースウィンズにすみやかに連絡がなされること、コミュニティ内にある水道管を壊さないよう大事に管理することなど、住民が担うべき役割について、住民リーダーと協力し伝えていくこともまた、給水活動を支えるピースウィンズの重要な仕事です。
生きるために必要な安全な水の供給、すなわち難民たちの命を守るために、今回取り上げたピースウィンズの現地職員たちは、日々、困難に立ち向かいながら、献身的に業務に取り組んでいます。新年を迎えてもその挑戦は続けられます。皆さんが日々の生活で蛇口をひねって水を出す時、暑く乾燥した厳しい環境にいる難民たちのために現場で活動するピースウィンズの職員たちにも思いを馳せていただけると幸いです。