【モザンビーク】それぞれユニークなトイレ作りが進んでいます
イラストやポスターを壁に貼ってあるトイレと作った女性
モザンビークでは家庭にトイレがある世帯が未だ少なく、世界銀行の調査によると人口の40%の人々が野外排泄をしているそうです。実際に、農村部の家庭でトイレを借りると、家の裏の囲いも何も無い場所に案内されることがあります。また、物音もしない草むらから、用を足した人が突然現れる、ということも珍しくありません。しかし、野外の排泄物は雨水に混ざって散乱し、コレラなどの感染症蔓延の原因にもなり、子どもたちの健康や命を脅かす危険もあります。そのため、トイレでの排泄を習慣付ける活動が各地で行われています。
PWJの活動地で、サイクロン・エロイーズで住居が浸水した被災者が移住して暮らしている「再定住地域」でも、国連機関やNGOの支援で公衆トイレが設置されていますが、その数は住民の数に比べて圧倒的に足りません。「男性用と女性用のトイレが近いため、使うのが恥ずかしい」、「公衆トイレが汚くて使いたくない」といった声もありました。更に、再定住地域には電気が全く無いので夜間は非常に暗く、女性や子どもが「公衆トイレまで行くのが怖い」と言って我慢したり、近くで排泄してしまったりという状況も確認されており、家庭用トイレの建設が急務となっていました。
そこでPWJは、住民に対して啓発を行う「アクティビスタ」と呼ばれる活動員を再定住地域の住民から登用して、トイレ建設の促進と衛生知識の普及活動を始めました。アクティビスタは毎日、住民の住居を訪問し、トイレ建設の方法を指導しています。
再定住地域で住民が作った仮設トイレ
住民が作ったトイレを確認するPWJスタッフとアクティビスタ
PWJは、これまでの一般的な支援方法である「トイレ建設資材の配布」の代わりに、地元の資材(木の枝、ヤシの木の葉を束ねたもの、土など)を使ったトイレの建設を住民へ勧めています。これによって、「配給があるまで自分たちでは行動を起こさない」という援助依存体質から抜け出し、地元にある材料を住民自らの力で集め、自分たちのトイレを建設する姿勢を育んでいます。
今では、地元の若者(アクティビスタ)に励まされ、住民たちが続々とトイレを完成させています。
地元の資材でトイレを建設する住民
トイレの壁に土を塗る女性
竹でトイレのドアを作る女性
完成したトイレ
この地域を視察すると、多くの住民が自慢のトイレを見てもらいたくて「うちのトイレを見て!」と声をかけてきます。実際に行ってみると、特に臭いもなく、ハエ1匹飛んでいないとても清潔なトイレを見ることができます。他にも、トイレの壁にイラストや感染症予防のポスターが貼ってあったり、トイレの横の手洗い場に石鹸置きが設置されていたり、古い鍋の蓋でトイレの蓋を作っていたりなど、私たちが想像していなかったアイデアに遭遇し、私たちも驚かされることがあります。
住民の自慢のトイレ
トイレの横の手洗い場に石鹸置きが設置されている様子
鍋の蓋でトイレの蓋を作っている
今後も、地域住民とアクティビスタ、PWJスタッフが互いに知恵を出し合いながら、今よりもっと丈夫で衛生的なトイレを作る方法を確立していく過程で、自らの主体性と自立心の向上に努めていきたいと考えています。そして、全ての家庭が自慢のトイレを保有し、住民一人一人が正しい衛生知識を身に付け、地域の衛生環境の改善に貢献できるよう、活動を続けて参ります。
※本事業は、ジャパン・プラットフォームの助成金と皆様からの寄付によって行われています。継続的な支援を実施するために、皆さまからの温かなご支援・ご協力をお願い申し上げます。