【ウクライナ】自宅から100メートルの場所にドローン攻撃を受けたピースウィンズ・スタッフの証言
各国の仲介で停戦を模索する動きが続く中、ロシアによるウクライナ各地への攻撃はむしろ激しさを増しています。3月23日未明、ピースウィンズ・キーウ事務所で働く私たちの同僚ユリヤ・ヴィフリスチュクの自宅からわずか100メートルのところにある集合住宅がドローン攻撃を受け、火災が起きました。ロシアによる本格侵攻から3年以上を経て、警報が日常になって警戒心が緩んでいた中での痛烈な一撃でした。キーウ市民の日常を如実に語るユリアの話を聞いてください。

――ドローン攻撃で爆発が起きた時の様子を教えてください。
ユリヤ 土曜の夜、近所の友達が孫ふたりを連れて遊びに来ていました。9時くらいに攻撃警報が発令されましたが、ほとんど毎日夜になると出されるので、大人も子どもも気に留めませんでした。普段通り一緒に食事をして、楽しくおしゃべりして、11時ごろ友人一家は自宅に帰っていきました。そのあと寝る支度をしていると、ドローン特有の音が近づいてきて、我が家の上空を飛んでいるのがわかりました。
――ドローンは、どんな音がするのですか?
ユリヤ:バイクのような音がします。それも、安物のエンジンオイルで走るバイクのような。ダンダンダンダン、と。それがとても大きな音で聞こえてきました。それで、「これは、いつもと違うかも」と思い始めました。
――シェルターに逃げましたか?
ユリヤ:いいえ。警報は毎日出されるし、ドローンも毎晩のように飛んできます。北から飛来するもの、東から来るもの、南からドニプロ川に沿って北上してくるもの、あちこちからやってきます。キーウ市の郊外に住んでいるので、大抵は防空システムが機能して撃ち落としてくれます。丘の上に住んでいるので、バルコニーから空の攻防を眺めることもあります。ちょっと花火みたいです。不謹慎に聞こえるかもしれませんが、戦時下でもささやかな楽しみというか、おもしろみを見つけて、人生を生きたいのです。とにかく、警報が鳴るのもドローンが飛ぶのも日常になってしまったので、あまりシェルターに避難しなくなっています。これが今の私たちの日常です。
――そのあと何が起きましたか?
ユリヤ:午前零時ごろ大きな爆発音がしました。そしてその2、3秒後、また大きな爆発音がしました。とても近いと思ったので、キーウ市の公共情報SNSを見ると、我が家から直線距離で100メートルほどのところにある集合住宅に攻撃があって火災になったことを知りました。


――巻き込まれていても不思議ではない距離でしたね。無事で何よりでした。
ユリヤ:本当に近くて危ないと思いましたが、この日は他の地区でも大規模な攻撃があって、キーウ南部の地区では父子2人が犠牲になるなど、ロシアの攻撃は激しさを増しています。東部ハリコフに住む友人は1日で15回もの攻撃を受けたと話し、南部ザポリッジャに暮らす元同僚も状況が悪化しているので、いつでも逃げられるよう荷物をまとめたと話していました。停戦交渉が行われているとの報道はありますが、私は楽観していません。ロシアが平和を望んでいるとは思えないし、停戦するにしても、その前に少しでも多くの領土を確保しようとしているとしか思えません。
――平和な日常を取り戻せない中、どんなことに喜びを見出していますか?
ユリヤ:仕事があること。友だちに会うこと。家族と猫のオルフィと一緒にいることが救いです。たまに旅をすると気分転換になります。できるだけ戦争前と同じように普通の暮らしをしようと思っています。みんなそう思っているのではないでしょうか。今、完売が続いて劇場のチケットが買えないのですよ。芸術から前向きなエネルギーを得たい、日常の喜びを得たいと思う人がそれだけ多いということだと思います。

「これが私たちの日常です」と語るユリヤの言葉が耳に残りました。彼女をはじめ、ウクライナの人びとが1日も早く、本当の穏やかな日常を取り戻せることを祈らずにはいられません。ピースウィンズは引き続き、ウクライナの人びとに寄り添った支援を続けていきます。みなさまからのご支援をよろしくお願いします。