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【ミャンマー地震 緊急支援】震源に近いザガインで医療支援を開始。支援者同士のネットワークで命をつなぐ

4月6日、マンダレーからさらに震源に近い町ザガインに入ると被害の様相は一変しました。

すでに発災から1週間以上経過しているのに、現場の空気感はまるで発災2日目の能登半島地震の被災地のようだ」(『ミャンマー地震』緊急支援チームリーダー稲葉医師)。

倒壊家屋の多くは煉瓦づくりの建物で、バラバラになった煉瓦が山のように積み上がり、果たしてその家がどんな形だったのか想像することすらできない状況です。消防署までもが倒壊し、立ち並ぶ消防車や救急車が潰れた1階の中に取り残されていました。

ミャンマー医学生との出会い

現地の病院を訪ねると、余震による病棟の倒壊を恐れてか、患者の多くは外のテントで寝かされており、野戦病院さながらの異様な空気に包まれていました。医療のニーズは明らかに高く、医療関係者と話し合いと調整を行った結果、ピースウィンズの空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”による臨時診療所を開設することが決定。医療チームは、即座に指定された設置場所に向かいました。

臨時診療所の設営準備を進めていたところに、ミャンマーの医学生に出会います。

「自分にはまだ医師免許はないけれど、地域を巡回しながら医療につなげる必要がある人たちを探して回っていて、すでに何名か早く治療しないといけない人が見つかっている。私たちにできることがあるなら手伝うから、その診療所で診てあげてほしい」

ボランティアとしてザガインに来ていた彼らは真剣な表情で状況を説明します。患者の写真や状態から即座に現場に向かうべきと判断したチームは診療所の設営と同時進行でその患者たちの待つ家に看護師を向かわせました。

放置される重症患者「お金がないから病院には行けない……」

到着してすぐ、竹のベッドでぐったりと横になる男性をみて坂本看護師は愕然とします。

崩れてきた家屋の下敷きになったという50代の患者は両足を骨折しており、片方の足は骨が筋肉を突き破り飛び出している開放骨折。さらに腰と胸にも痛みを訴えており、腰も骨折の疑いがある重度の外傷を負っていました。両足は定規ほどの小さな竹で固定され、わずかな包帯が巻かれているのみ。傷口は腫れて熱感もあり、破傷風などの感染のおそれもある状態です。しかし……

なぜ病院に行かないのか。その理由は「お金がないから行けない」といいます。治療費はもちろん、病院へ行くための交通手段(現地では救急車を呼ぶにも多額のお金がかかるとのこと)もないために、家族は彼を家のベッドに寝かせ自力で必死に看病していました。薬も包帯も十分にない中、男性はひたすら全身を襲う激痛に1週間以上耐え続けていたそうです。

病院に行くことに異常なほど警戒心をもつ家族に「診療所では決してお金は取らない。このままでは傷が治らないどころか、進行する感染症で命を落とす。一刻も早く治療につなげなければ死んでしまう」と必死に説得し、急遽、男性を診療所に連れていくことに。すでに担架での搬送は不可能な状態だったため、ベッドごと搬送できるトラックを手配して、空飛ぶ捜索医療団の臨時診療所まで搬送しました。

稲葉医師はすぐに診療を開始し、運び込まれた男性の症状を確認すると、両足の切断も検討しなければならないほどに症状が悪化していることが判明。稲葉医師は、ご家族に対して症状を説明し、命の危機すら迫っていることを丁寧に伝えました。


残念ながら臨時診療所では手術できるほどの設備はなく、地元の病院も、建物が被害を受けていたり、患者でパンクしていたりするため、搬送することは難しい状況です。

こうしたときに必要なのが、支援者同士のネットワークです。すぐに手術設備の整っている他国の支援チームにも応援を要請し、手術も可能な大規模な医療テントを持つインドの医療支援チームが患者を受け入れてくれることになりました。

「もっと早くこの地に支援が届いていれば、この男性は両足切断などという究極の選択を迫られることはなかったかもしれない……」

痛みと恐怖に顔を歪める彼を見て、もっと何かできることはなかったのかと、医療チームの誰もが葛藤しました。しかしあのとき、ボランティアで来ている医学生が彼を見つけ、また臨時診療所がザガインにできてすぐに診断ができたからこそ、適切な処置ができる場所へと命のバトンを渡すことができました。

医療チームは、彼の元に駆け寄り、震える男性の手を握り締め、大きな声で「よくがんばった。これで助かるんだ!」と声をかけて見送りました。

ザガインで臨時診療所を本格始動

ザガインには、有名な寺院がいくつも存在します。その多くの寺院が今回の地震による被害を受けましたが、一部の寺院が避難所や物資の配布場所になっています。空飛ぶ捜索医療団が医療支援を行う臨機診療場所もお寺の敷地内の一角。4つのテントを借り受け、持ち込んだ医療資機材を設置して臨時の診療所を立ち上げました。前述した患者は、まさにその設営中に起きた出来事です。

ミャンマーの被災地に入った当初、医療チームは「発災からすでに一週間以上が経過しているのだから外傷患者はもう減っている」ものだと考えていました。

しかし、実際に臨時診療所を開始すると、未だに骨折などの外傷患者が多くやってきます。現場の医療の混乱に加え、最初に診た重症患者同様、治療費などが払えない経済的な理由や、医療サービスへのアクセスがない、病院への不信感など、さまざまな理由で未だに適切な治療を受けられずにいる被災者が多く存在していたのです。

また、地震による直接的な外傷でなくとも被災して持病のお薬がなくなってしまったり、避難生活で体調を崩してしまったりする方も多くみられました。「そういった被災者から日本の支援はとても期待されている」と、稲葉医師はいいます。

「現在、被災地周辺では複数国が医療支援を展開していますが、日本の医療テントにはほかの国のテントと比べて多く患者が訪れていると聞きます。実際、今日診察した女性も、10年間病院にはかかりたくなかったけれど、日本人の医師が来ているなら相談したいと言って私たちのテントを訪ねて来てくれました。その期待に私たちは答える義務がある」

この日臨時診療所を受診した患者は22名。お医者さんに診てもらえて喜ぶ人もいれば、辛い被災経験をとつとつと語り涙を流す患者もいました。

被災地には、家も家族も失い、将来に希望の持てない人がいます。稲葉医師をはじめ医療チームは、医療という枠を超えて一人ひとりと向き合い、時に手を握り、共に涙を流し、肩に手をあて、背中をさすり、言葉は通じなくとも “心の通う”支援を続けています。

【ミャンマー 地震 緊急支援】寄付受付を開始

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https://lp.peace-winds.org/support_myanmar_earthquake

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