ミャンマーサイクロン「ナルギス」被災者支援【中間報告】
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、5月初旬にミャンマーを襲ったサイクロン「ナルギス」の被災者に対し、緊急生活物資の配給等の支援を行ってきました。2008年5月10日から12月31日までの支援状況をまとめましたので、ご報告します。PWJのミャンマーサイクロン被災者支援は、皆さまからのご寄付や、会員の皆さまのご支援を得て、これまでの成果をおさめることができました。心よりお礼申し上げます。
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<現地の概況>
2008年5月2日・3日にミャンマー沿岸部を襲ったサイクロン「ナルギス」は、死者・行方不明者14万人、被災者240万人(ミャンマー政府・ASEAN・国連による発表)という甚大な被害をもたらしました。被災直後より、ミャンマー国政府や、ミャンマー国内の寄付者の他、国連機関、ASEAN諸国をはじめとする各国政府、および国際NGOによる緊急支援が、さまざまな分野で展開されてきました。
サイクロン被災から8か月あまりが経過し、被災地域には復興の兆しが少しずつ見えてきています。しかし、被災地の多くの人びとは、サイクロンの打撃を受けた暮らしを立て直すため、いまなお、たゆまぬ努力を続けています。
<ピースウィンズ・ジャパンの支援活動>
サイクロン被災が報道された直後から、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、支援を行うための情報収集を始めました。5月11日には、被災状況を確認し、支援実施の可能性を探るため、日本からスタッフが現地に入りました。ミャンマー商工会議所連盟(UMFCCI)と協力して支援を実施することが可能と判断し、支援内容の検討を進めました。5月末には第2陣スタッフがミャンマーに入り、最大都市のヤンゴンに事務所を開設。現地スタッフを採用し、事業実施体制を整えました。
[第1期事業:緊急生活物資の配給]
最初の事業として、サイクロンの被害が甚大であった、沿岸部のエヤワディ管区に住む被災者10,000世帯に対する緊急生活物資の配給を開始しました。
鍋やステンレスのボウルなどの台所用品や、インスタント麺や豆などの食品、Tシャツなどの衣類のほか、現地の習慣に合わせ、「タナカー」という伝統的な日焼け止めや、巻きスカート「ロンジー」も入れました。また、学校の生徒用に、鉛筆、ノート、制服の配布も決めました。これらの物資は、現地パートナーのUMFCCIを通じて、すべてミャンマー国内で調達しました。
今回の被災地域は、多くの河川が海に注ぐ沿岸部の低地(デルタ地帯)。被害の大きかった地域へ通じる道路はなく、10,000世帯分の配給物資を船で輸送しましたが、それはPWJとしても初めての経験でした。ヤンゴンのUMFCCI本部で、各世帯に配る品目を「ファミリーキット」として一袋に詰め、トラックと船で対象地域まで運びました。現地では、PWJスタッフとUMFCCIのチームが協力し、被災者に物資を直接配給しました。こうして8月27日までに、ディディエ、ピヤポン、ボガレ、ラビュッタの4地区で10,000世帯への物資配給を完了しました。
ファミリーキットの配給(中央はPWJスタッフ齋藤)
(C)Peace Winds Japan
[第2期事業:基礎インフラ整備、学校修復など]
9月からは、サイクロンで壊れた道路や船着場などを、村人たちと協力して修復する事業を始めました。これまで地域の農業、漁業に従事することで生活していた農地を持たない人びとは、サイクロン被災後は収入の道がなく、施設を復旧するこれらの事業は、そのような人びとに限られた期間ながら、収入の機会を提供しました。12月までに、3つの村で、道路、船着場、橋、そして海水遡上を防ぐ堰の修復を完了することができました。
左:修復した村内道路 右:修復した船着場
(C)Peace Winds Japan
左:修復した橋 右:修復した河川堰
(C)Peace Winds Japan
このように、いろいろな施設の修復を進めてきましたが、それぞれの村で強く要望されたのは、これまで村人たちが運営してきた学校の修復でした。サイクロンの後、村人たちがかろうじて修復した建物は、使い古した木材の骨組みに、やしの葉とビニールシートで屋根と側面を覆ったもので、床はむき出しの地面。床の一部は、雨期には水溜りになっていました。PWJは、関係機関との話し合いや建物の設計などの準備を進め、12月には、2つの村で学校の修復を開始しました。地元の大工や村人の参加も得て、現在急ピッチで建設を進めており、2009年2月までに2校が完成する予定です。
建設中の校舎
(C)Peace Winds Japan
また、2009年1月以降PWJは、農地を持たない人びとの暮らしを助けるため、各家庭に子豚を配布し、飼育させて、将来の収入源につなげる事業を、村と協力して実施していく予定です。
【PWJミャンマー現地代表 齋藤雅治より】
このたびは、PWJのミャンマーでのサイクロン被災者支援のために、温かいご寄付をいただきまして、誠にありがとうございました。現地で支援に携わるスタッフを代表いたしまして、心からお礼申し上げます。
「真っ暗な中で流され、木にしがみついて、やっと助かりました。周りには流されてしまう人もいて、誰かが泣いている声も聞こえました」。人口の半数近くが亡くなった沿岸部の村で、かろうじて助かった子どもたちは、サイクロンが村を襲った夜のことを、こう話してくれました。大切な家族や友だちを一夜にして奪われた人びとの心の痛みが、いつの日にか癒されるようにと祈るばかりです。
そして今、ミャンマーの人びとは、厳しい現実と向き合いながらも、ともに助け合ってたくましく立ち上がろうとしています。PWJが村と協力して直した道路や船着場から、多くの人びとが、近くの村や、川の上流の町まで出かけるようになり、村には少しずつ活気が戻ってきました。人びとが笑顔を取り戻し、未来に向けて新しい一歩を踏み出した姿を見るとき、私たちとしても、与えられた役目を果たせたものと感じています。
こうして人びとが暮らしを立て直していく過程を、私たちがお手伝いすることができるのは、ひとえにPWJを支えてくださる皆さまのご厚意の賜物です。PWJのスタッフ一人一人は、皆さまと被災地の人びとの心をつなぐ「架け橋」として、毎日の業務に励んでおります。これからも、私たちの活動をご支援くださいますよう、心よりお願い申し上げます。
【ミャンマーサイクロン 緊急支援 収支報告】
期間:自2008年5月10日 至2008年12月31日
・収入
収入項目 | 実績 | 今後の 収入予定 |
合計 |
ミャンマーサイクロン緊急支援特定寄付 | 7,628,318 | 7,628,318 | |
助成金(※1) | 141,840,986 | 61,412 | 141,902,398 |
助成金返還額(※2) | △2,439,590 | △18,451,677 | △20,891,267 |
合計 | 147,029,714 | △18,390,265 | 128,639,449 |
・支出
項目 | 実績 | 今後の 支出予定 |
合計 | |
緊急支援 | ||||
緊急初動調査 | 1,380,663 | 1,380,663 | ||
緊急物資配給 | 85,128,884 | 85,128,884 | ||
インフラ補修 | 9,018,590 | 26,331,733 | 35,350,323 | |
生活再建 | 5,456,832 | 5,456,832 | ||
広報 | 広告宣伝・報告費 | 178,500 | 178,500 | |
管理 | 東京本部経費(※3) | 1,144,247 | 1,144,247 | |
総計 | 96,850,884 | 31,788,565 | 128,639,449 |
※1 ジャパンプラットフォームおよびチャリティープラットフォームによる助成金
※2 初動調査および物資配給事業で助成を受けた残金の返金額
※3 特定寄付額の15%を限度に、日本国内における費用(事務所の管理運営費、調査・提言活動のための費用など)に活用させていただいております。