【南スーダン】洪水被災者を受け入れる地域と被災地の支援を実施
度重なる洪水被害に見舞われている南スーダン共和国(以下、南スーダン)。2022年4月から、とりわけ洪水被害の大きかったジョングレイ州などで被災した国内避難民(以下IDP)を受け入れている中央エクアトリア州ジュバ郡マンガラと、同じく洪水被災地となったアッパーナイル州メルート郡の2つの地域にて給水衛生支援を実施し、2023年3月に活動を終えました。
※活動開始の記事「【南スーダン】新たにアッパーナイル州での活動を開始しました」
活動開始後、鍵となったのは、修理・設置をした給水衛生設備を人びとが正しく使い、維持管理できるかどうかです。今回の活動を通して、2つの学びがありました。
「『自分たちで』管理する責任」
1つ目は、少ない世帯でトイレや水浴び場などを共有することで、自分たちできれいにし、大切に使おう、という意識が芽生えやすいという学びです。これまでの避難民キャンプでは、多くの人が利用する「共用」のトイレや水浴び場を設置したり、修理したりしていました。
一方、今回の事業ではアプローチを変更して、3~4世帯が一緒に使う「共有」のトイレや水浴び場を設置し、そのトイレや水浴び場を使う世帯を「キャンプ管理委員会」やキャンプリーダーとともに選ぶという方法を取りました。ピースウィンズにとって初めての試みでしたが、そうすることで、各世帯の人びとにとっては、設置された設備が「自分たちのものである」という意識が高まり、交替で清掃するなどして大切に使う様子が見られたのです。また雨季が始まる8月~9月には、豪雨で浸水しないように、とキャンプの若者たちがリーダーを中心にトイレや水浴び場の位置を確認して排水路をつくる姿もありました。
設置した水浴び場。入り口が外から見えないようにし、プライバシーの確保に配慮した。(メルートIDPキャンプ)
ある住民の方は「雨が降っている日に、近所の人から普段使っているトイレや水浴び場までは遠いので、近くのものを使わせてほしい、という声があったので、きれいに使うことを条件にトイレや水浴び場を貸した」というエピソードを話してくれました。トイレや水浴び場を設置することが、人びとが互いに助け合う機会になり、さらにその中で清掃や衛生の知識を伝えるきっかけにもなったことは、予想していなかった嬉しい効果でした。
「活動の当事者であるという意識」
2つ目は、キャンプ管理委員会やキャンプリーダーを巻き込み、活動はみんなのものであるという意識を高めたことによって、人びとの自立と協力体制が構築されたという学びです。IDPが生活するマンガラIDPキャンプとメルートIDPキャンプで実施した新型コロナウイルス(以下COVID-19)感染予防衛生啓発活動では、キャンプにあるマーケットに手洗い場を設置しました。この手洗い場を中心に活動するCOVID-19感染予防衛生啓発活動チームメンバーを選び、研修を行った際には、キャンプ管理委員会やキャンプリーダーにも参加してもらい、ピースウィンズスタッフから「キャンプの人びとのための活動」であることを丁寧に説明し、さらに3ヵ月間の啓発活動後は、キャンプ管理委員会やキャンプリーダーのリーダーシップのもと手洗い場の活用を継続してほしいことを伝えました。すると、啓発活動の後、各キャンプのキャンプ管理委員会やリーダーを中心に、マーケットで商品を売る人びとに対して手洗い場に設置する石鹸の寄付や壊れた蛇口の取り換えにかかる費用を募る動きがみられ、実際に人びとからの協力を得てそれが実現したことが報告されました。生活が苦しくなる中で、そうした動きがはじまる、ということはとても大きな一歩です。改めて、支援対象地のリーダーとなる人びとを巻き込み、そしてコミュニティの人びとともに活動していくことの大切さを実感しました。
設置した手洗い場(マンガラIDPキャンプ)
事業を終える前に行った聞き取り調査では、トイレや水浴び場に関しては「交替で掃除している」との回答があり、またCOVID-19感染予防衛生啓発活動については「マーケットの手洗い場を利用した」との声が人びとから聞かれたほか、啓発活動を通じて「石鹸を使って手を洗うようになった」との行動の変化も明らかになりました。
事後モニタリングの様子(マンガラIDPキャンプ)
COVID-19感染予防衛生啓発活動チームメンバーとディスカッション(メルートIDPキャンプ)
いずれ支援が必要でなくなることが、理想の世界です。そのためには、人びとの主体性や自主性を後押ししていくアプローチも重要です。本事業は終了しましたが、この1年で得た学びをこれからの活動にも活かし、ピースウィンズは引き続き人びとの主体性と自主性を高める事業に取り組んでいきます。
本事業は、ジャパン・プラットフォームによる助成金とみなさまからのご寄付で実施されました。今後とも温かいご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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