デモファームでの学びがもたらす実り
農業が人びとの生活の糧になっているウガンダ共和国西部チャカⅡ難民居住地区では、食料支援の減少や気候変動の影響による食料不足が大きな課題となっています。
この課題解決へ向け、ピースウィンズが設置したデモファーム(モデル農園)を舞台に、難民と現地の農家が畑づくりや栽培技術を学ぶ農業研修を受講。2024年10月から2025年1月にかけて初めての収穫期を迎え、研修受講者たちはデモファームの世話を続ける傍ら、収穫した野菜を市場などで販売しました。そして3月末、15名が研修を修了しました。

この研修後、修了生たちは、研修で得た知識や技術を自宅での畑作業にも取り入れ、少しずつ、研修の成果や生活の変化を実感し始めています。自宅に広大な畑を持つウガンダ出身のフェデレシさんも、そのひとりです。
「以前から見聞きしたことがあった農法ですが、デモファームでの研修を通してようやくやり方を理解でき、今シーズンは(自分の畑で)実践することができました」
6月、スタッフが訪問すると、息子たちと維持管理しているという畑を案内してくれました。
「それから、トマトはまだ若いうちからのマルチングが質の向上や収穫量の増加につながると分かったので、自分の畑でもやってみるつもりです」
マルチングとは、土壌の水分を保ち、病害虫を予防するなどの目的で、乾燥させた植物で土の表面を覆うことを指します。今後の計画を話すフェデレシさんの傍らには、すでにマルチングのための干し草が束になって用意されていました。


研修を通じて、野菜を育てることが収入につながることを知ったと話すコンゴ民主共和国出身の難民、ジャクソンさん。これまで自身の畑で育てる野菜は自家消費用の少量のみで、畑の大部分で穀物を育て、それを売ったお金で必要な野菜を買っていたといいます。
昨シーズンからは畑の土地面積のうち約半分を野菜栽培に充て、「野菜を育てるメリットを妻にも納得してもらうために、少しずつ試しています」と笑います。

そうして今回収穫した野菜から得たお金は、貯金のほか、子どもたちの学費、医療費、食料品、衣服など家族のための最低限の必需品に使うことができたとの嬉しい報告も。さらに「近頃は近所の人びとから農業知識に関する質問を受けることもある」そうで、研修で培った知識と技術を力にリーダーシップを発揮しています。なんとジャクソンさんがリーダーを務める農家グループでは少額ずつお金を出し合って養鶏も始め、収入源の多様化も実現させました。
デモファームでの学びは、着々と、研修修了生たち自身の生活、そしてコミュニティに変化を導いています。2025年3月末からは、ジャクソンさんたち修了生が講師役となって周辺の農家を対象に研修を行う新たな事業を開始しました。これにより、各々の生活の安定化に取り組むとともに、難民と現地の農家が技術の教え合いを通して協力体制をはぐくみ、社会の安定化も目指します。

※本事業は、外務省の日本NGO連携無償資金協力による助成、ならびにみなさまからの温かいご支援により実施しています。今後ともウガンダでの事業へのお力添えのほど、よろしくお願いいたします。