【ウクライナ危機】カメラマンが見たウクライナ避難民の「今」その2
10月10日、ロシアによるウクライナへの大規模なミサイル攻撃が行われ、未だに不安な状況が続いています。ピースウィンズは、ウクライナの隣国モルドバで、戦禍を逃れてきた避難民の方々への支援を続けています。
今回も、モルドバ滞在中のピースウィンズのカメラマン近藤史門の見た、最前線の様子と出会った人々のストーリーをお届けします。
モルドバを経てドイツへ。4ヶ月ぶりのお母さんの元へ。
ピースウィンズがモルドバ支援に入った直後から支援しているNCUM。
ここはウクライナからの避難民が、主にドイツへと移動していくまでの一時的な滞在場所となっている避難所です。二段ベッドが敷き詰められた施設内では、大勢の避難民がドイツ行きのバスを待ちながら日々を過ごしていました。
以前訪れた際よりも避難民の数はむしろ増えている気がしました。
避難所の運営者曰く「7月頃まで減っていた避難民の数は9月からまた増えてきている。ウクライナではロシア軍の攻撃によって暖房インフラ (セントラルヒーティングシステム) が破壊されている地域も多く、寒くなるこの季節に国外に脱出してくる人が多い」とのことです。
やっとの思いで避難してきた人々にとって、暖かい寝床と十分な食料のあるこの一時避難所に文句を言う人は少ないですが、プライバシーの確保できない二段ベッド生活、トイレやシャワーの数も限られており、大勢の避難民が長期滞在するには厳しい環境というのも明白です。今回取材中にも何度も「次のドイツ行きのバスがいつ来るか知っているか」と質問を受けました。
ドイツでの受け入れ先が十分確保され、移住後の生活が保証されるまではバスも手配できません。避難所運営者はドイツの提携団体とやりとりし、移動させる避難民全員が安全にドイツで暮らせるよう手続きする義務がありますが、一方で避難民たちは1日も早くドイツへ移動し生活を落ち着かせたい想いが強いのでしょう。モルドバからドイツまでは少なくとも1500kmは離れています。いくら安全とはいえバスで行く道のりは厳しいです。また、その先で待っている言葉の壁にも悩まされることでしょう。それでも彼らはその先に安心できる避難生活を見ていました。
そんな避難所の視察中に写真を撮ってくれとポーズをとる若い女性が1人いました。
フレンドリーな彼女の名前はナンディ。昨日父親とこの避難所に到着したという彼女もドイツへ向かうバスを待っています。大学生の彼女は教員免許取得に向け現在はオンラインで授業を受けていますが、この避難生活の中ではなかなか授業を受けることもままなりません。
しかしドイツでは先に避難している母親が待っているのだそうです。4ヶ月間、彼女は母親に会えていません。ナンディもまた同じ質問を私にするのでした。
「次のバスがいつか知ってる?」
そんな彼女の夢は「Self Dependent “自立した女性になること”」だそうです。多くの人から支えられている今を思って口をついた言葉なのかもしれないですが、「勉強のことも、生活のことも、これからのことも、きちんと自分で責任をもって行動できる女性になりたい」そう言う彼女の目には、カメラの前でポーズを取っていた時とは違った芯の強さのようなものを感じました。
ピースウィンズ・ジャパンは、今後もウクライナの人々、そして彼らを支え続けるモルドバの人々と共に支援を続けてまいります。引き続き皆様からのあたたかいご支援をよろしくお願いいたします。