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コラム&インタビュー

ペリリュー島出身のジェイソン医師。札幌での研修成果をパラオでの医療に活かす

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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後列右がジェイソン医師

映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』が公開され、大きな話題になっています。終戦前年の1944年9月、太平洋の小さな島をめぐる戦闘では日本兵約1万人のうち最後まで生き残ったのはわずかに34人。上陸してくる米海兵隊を前に、本土防衛のために持久戦を命じられた兵士たちは壮絶な死闘を繰り広げることになりました。

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そんな悲惨な戦争から80年を経て、ピースウィンズは今、ペリリュー島を含む太平洋の島嶼国パラオ共和国でKensingII号という船を使って離島の巡回健診・診療などを行なっています。そして私たちの医療チームの重要なメンバーのひとりがペリリュー島出身のアルラン・ジェイソン・カレイ医師です。ペリリュー島とはどんなところなのか、ジェイソン医師に聞きました。

「イチバン」の場所

――ペリリュー島ご出身と聞きました。

ジェイソン:はい。生まれはハワイでグアムに住んだこともありますが、小学校2年生から8年生(14歳)までペリリューで育ちました。パラオの中心コロール島で高校に進学し、アメリカ本土で医学部進学課程を履修して、キューバ政府の奨学金を得て医学部はキューバで修了しました。

――ジェイソンさんにとってペリリュー島はどんなところですか?

ジェイソン:「ホーム」です。とても美しい島で、ゆったりと穏やかな気持ちで過ごすことのできる特別な場所です。小さな島なので、みんながお互いをよく知っている。私にとって「イチバン(日本語で)」の場所です。ストレスを感じたり辛いことがあっても、ペリリューに戻れば穏やかな気持ちに戻ることができます。

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ペリシュー島には今も戦争の爪痕が残る

――今、日本では映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』が話題ですが、地元の子どもたちは戦争の歴史をどんなふうに学ぶのですか?

ジェイソン:小学校では少し歴史を勉強しますが、それほど詳しくは学びません。ただ、私の祖母は占領下の暮らしを知っていたので、よく話を聞かせてくれました。祖母の名前は「ウメコ」です。祖母の妹たちは「マツコ」と「エミコ」。私は3人がみんな私の祖母だと思っています。日系人ではありませんが、当時のパラオは日本文化の影響を受けていたからだと思います。ウメコは日本語が喋れるし、読み書きもできます。

――日本の名前の人がいるんですね!

ジェイソン:私の娘たちの名前は祖母たちからもらって長女がウメコ、次女はマツコです。

――へええ! ペリリューはとても親日的だと聞きました。日本軍がいたせいで激しい戦闘になったのに、恨みはないのですか?

ジェイソン:もちろん占領されたことに反発を覚えている人はいます。でも私が祖母から聞いているのは、米軍が上陸してくる前に日本軍は地元のパラオ人を船に乗せて北の島に避難させた。本島近辺は危険だからと。だからペリリュー島の戦いでは地元の人の犠牲者が少ないのです。そんなこともあって、パラオの人の対日感情はとても良いし、今でも日本文化の影響は残っています。まわりの人や環境に対して敬意を持つことは、日本の影響だと思っています。

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病気の早期発見で命を救う画像診断

――なるほど。話を変えて、少しジェイソンさんの日本での経験について聞かせてください。2025年3月から3ヵ月間、札幌医大で放射線画像診断の研修を受けたそうですね。研修はどうでしたか?

ジェイソン:とても多くを学びました。指導してくれた山先生(札幌医科大学放射線診療科准教授・山直也医師)は、食事も忘れるくらい働き詰めで(笑)、本当にたくさんのことを教えてくださいました。仕事だけでなく、週に3、4回自宅で食事に招いてくれて、サッポロビールや日本酒を飲みながら、いろんな話をしました。

――放射線科を専門に選んで、画像診断の専門家になったのはどうしてですか?

ジェイソン:これまでに受けた支援で、パラオには超音波やMRI、CTスキャンなどたくさんの機械はあるのですが、それで得られた画像を読み解いて診断する専門家が一人もいませんでした。だから誤診率が高かった。それを防ぐことが目的のひとつ。

もうひとつは、心臓病や癌の治療などパラオで足りない医療を受けるために外部の大きな病院に患者を送ることがあるのですが、多くの場合、画像診断だけのために旅費をかけて遠くへ行かなければならない。そして行った時には病気が進行していることが多い。

パラオ国内で早期発見することができれば、命を救うことができてコストも大きく下げることができます。ですから、私のいる病院で画像診断によって病気を早く見つけることがとても重要なのです。

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健診の様子

――島々を船でめぐるピースウィンズの巡回健診・診療でも協力いただいています。ピースウィンズとの協働はいかがですか?

ジェイソン:パラオにおけるピースウィンズの存在は、まさにゲーム・チェンジャー。画期的だと思っています。パラオの死因のトップは、高血圧や糖尿病といった非感染性疾患(生活習慣病)です。これは健診と適切な生活指導で未然に防ぐことができるものが多い。ピースウィンズと協力しながら、これを減らしていこうと思っています。

――ありがとうございました。

ジェイソン:オツカレサマデシタ(日本語で)

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広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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