漁協を通じて550人にアワビ漁支援
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、東日本大震災に対応し、初年度は、漁業の復興に重点を置き、宮城県南三陸町のわかめ養殖の再開や、サケ・マスふ化場再開のための備品提供など、さまざまな支援活動を行なってきました。震災後二年目から現在にかけては、漁業の本格的な再開という大きな課題に向けて、現地の漁協を通じ、漁師のみなさんとともに取り組んでいます。
それには、数千万円から数億円に及ぶ船や漁具を購入する必要があり、政府や民間から様々な支援を受けていますが、漁師たちが自ら負担する額も大きく、共同でないと支払いが難しい現実があります。また、漁具を共同購入できたとしても、漁港整備の進捗が遅れているため、本格的な漁の再開に至っていません。
アワビ漁に関しては、漁具が流されてしまったことや、水産資源の保護を図るため、南三陸町では震災直後の再開を断念しました。政府の補助では、船などの高価格なものや共同で使える漁具などが対象となることが多く、漁師が単独で使用し、単価が低いウニ・アワビ用の漁具は、支援対象になりませんでした。しかし、一セット数万円するウニ・アワビ用の漁具を、月々支払う船の保険料やその他の漁具に加えて個人負担することは、漁師たちにとって経済的にかなり厳しい状況でした。
アワビ漁は、漁師たちにとって「冬のボーナス」とも呼ばれているほど、冬季の大きな収入源となります。また、通常の漁と違い、海の地形に合わせて漁のやり方が異なるアワビ漁は、漁師たちにとって、プロとしてのプライドをかけた勝負の醍醐味を味わえる、やりがいのある漁でした。例えば、平坦な地形で「縦獲り」という手法を用いる気仙沼市の本吉地区に対し、起伏の激しい歌津地区のアワビ漁では、「倒し獲り」という手法が代々受け継がれてきました。岩肌に擬態するアワビをいち早く見つけ、腕を振るって漁獲量を競います。PWJは、南三陸町の志津川・歌津両漁協と協力し、アワビ漁用の漁具を購入した組合員550名を対象に、その購入金額の一部を負担しました。
PWJは、これからも南三陸町の漁業の復興に向けた支援を続けていきます。