【ニジェール食糧危機】支援がもたらしたインパクト(その1)
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、ニジェール共和国フィレンゲ郡において、食糧危機の状況にある住民を、土地整備作業に参加させてその労賃を支払い、食糧を購入する手段を提供する「キャッシュ・フォー・ワーク」事業を、今年の8月から実施してきました。
住民たちは、11月2日に30日間の現場での作業を完了し、翌週の7日には、3回目(最終回)の労賃を受け取りました。
その翌日、私たちは対象の村を訪ね、受け取ったお金が、彼らの暮らしにどのような効果をもたらしたかについて、個々に聞き取りを実施しました。
まず訪れたのは、フィレンゲの町から車で約50分のところにあるトンボ村です。
この村は、支援対象地の中でも、一番遠くにある村のひとつです。
同行した現地スタッフが、まず私に教えてくれたことがあります。
スタッフが聞き取り調査をしている、下の2枚の写真をご覧ください。
違いに気づかれましたか。
男性スタッフが男性に話を聞く時は、上の写真のように対面していますが、女性に話を聞く時は、下の写真のように横に並び、さらに少し離れて座っています。
今回の調査前に、唯一の女性スタッフが退職してしまい、残ったスタッフは全員男性です。
イスラム教徒が多いこともあり、こうすることで、女性がリラックスして質問に答えられるような雰囲気作りを心がけているのです。
この村で話を聞かせてくれたハリマトゥさん(女性)。
村から離れた高台の現場での作業に最後まで参加し、3回にわたって労賃を受け取りました。
「それまで家族の食事は手に入るミレットだけでした。1回目のお金で、ソルガムやいんげん豆、調味料を買うことができ、子どもたちにおいしい食事を用意できるようになりました。」と話す表情は、とてもうれしそうです。
「2回目のお金が支払われたのは、(現地の人びとにとって重要な)
タバスキ(羊犠牲祭)の直前でした。家族みんなでお祝いするための食料を買い、残りのお金で子どもたちの服も買うことができました。」
スタッフの質問に答えるハリマトゥさん
誰が家計を握っているかは家によって異なりますが、こう話すハリマトゥさんの口調から、明らかに母親である彼女が、今回の支援で得たお金の使途を決めているようです。
労賃を男性の家長に渡している家も少なくないようですが、水汲み、洗濯、料理、掃除と、家事を一手に担い、さらに育児もきびきびとこなす女性たちの方が、実は、貴重な現金収入を、家族のために有効に活かす術を心得ているのかもしれません。
「昨日、3回目のお金を受け取りました。うちの娘に、男の子が産まれたばかりで、明日は初孫の命名式のお祝いなんです!今日は、イチギン村の市場の日(毎週木曜)なので、今、家の者をその支度の買い物に行かせています。」
ニジェールの人びとにとって、バッテム(Bapteme)と呼ばれる生後7日目に行う命名式は、親戚、友人、仕事仲間など、100人から、多いところでは数百人を招待して行う、盛大なお祝いです。
ハリマトゥさんにとっても、初孫の命名式ができる喜びはひとしおのようで、とびきりの笑顔を見せてくれました。
笑顔のハリマトゥさん
作業に参加した人びとから、こうして色々と話を聞いてみると、今回の支援は、お金が手に入って食糧が買えただけでなく、それ以上に様々なことに役立ったようです。
次回のルポでは、この支援が地域にもたらした成果について、さらに詳しくお伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに。
報告:齋藤雅治(事業部)
本事業は、ジャパン・プラットフォームからの助成金や寄付金により実施しています。
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