厳しい情勢のなか、病院改修進む
イラクでは爆発事件が発生するなど治安の悪化が懸念されていますが、支援の必要性は引き続き高く、ピースウィンズ ・ジャパン(PWJ)ではスタッフの安全確保に十分配慮しながら現地での活動を継続する方針を固めています。ジャパン・プラットフォーム(JPF)などの協力を得て6月から進めている病院等の改修・機材提供も、支援対象の計16施設のうち6施設ですでに事業が完了し、残る施設でも急ピッチで作業が進行中です。改修等の終了した施設ではさっそく、診療や各種のプログラムが開始され、現地関係者からも高い評価を受けています。
PWJでは、JPFなどの協力を得て、バグダッド、モスル、キルクーク、スレイマニア、アルビル、ドホーク各地域の計12施設の改修および機材提供、バグダッドとモスルの計4施設への機材提供を行ってきました。
現在までに、アル・カマリア感染症病院、アル・レジャ知的障害者施設、モスル戦争被害者センター(以上、モスル市内)、アイン・シフニ総合病院(モスル県アイン・シフニ地区)、カナ・ソール診療所(モスル県シンジャー地区)、イブン・アル・ルシュッド病院(バグダッド市内)の事業が完了しています。
いずれも重要な機能を持つ施設ですが、PWJが事業に着手する前は、戦争にともなう破壊や略奪、老朽化などにより荒れ果ててしまっていました。PWJは、外壁の修復や、天井・床の張り替え、トイレの整備などを進めるとともに、医薬品用の冷蔵庫や検査用の顕微鏡、ベッドや机、エアコンなどの機材の提供を行いました。
8月に開所式を行ったアル・カマリア感染症病院内には、PWJが提供した真新しいベッドが並び、トイレも衛生面に配慮した清潔な設備になりました。病院の機能回復も順調で、受け入れ患者数も徐々に増加しています。
また、アル・レジャ知的障害者施設は、社会福祉省(バグダッド)が管轄する知的障害者のためのデイケアセンターとしては現地でもっとも早く7月にオープン。戦争開始以来、ケアを受けられなかった子どもたちを対象に、心理的治療や識字教育などを行う「サマープログラム」もPWJの支援で実施しました。
イラクでは知的障害者を地域で受け入れる環境が十分ではないこともあり、今回の短期改修、機材提供、サマープログラム開催という一連の支援は、子どものケアと彼らの家族の負担軽減に大きく貢献。施設関係者はもちろん、現地関係当局やバグダッドの社会福祉省からも高く評価されています。