4カ月間の技術者向け講座が近く修了
バム地域を中心に耐震技術普及の取り組みを続けているピース ウィンズ・ジャパン(PWJ)は、地元の技術者を対象にトレーニングコースを開講しています。4カ月間にわたる一連の講義と実技指導は近く終了し、受講生には、PWJとイラン住宅公社による修了証明書が発行されます。
バム地震の被害を大きくした要因の一つは、建物の脆弱性だといわれています。PWJでは、住宅を再建する住民にも、実際の作業にあたる建築・建設関係者にも、耐震技術の重要さを理解してもらうことが大切だと考え、大規模なワークショップ(研修・発表)の開催を経て、住民向けの耐震技術セミナーと、技術者向けのトレーニングの実施を決めました。
写真左:講義中の参加者たち
写真右:講師のPWJスタッフに熱心に質問する
(C)Peace Winds Japan
技術者向けのトレーニングは、耐震技術を確実に身につけてもらうため、連続のコースとして、2005年5月から以下の内容で開催しています。
・第1回講座「地震のメカニズム、構造ごとの変動」
・第2回講座&実技「コンクリートの性質、鉄筋の性質、および施工要綱」
・第3回講座&実技「基礎の重要性、および施工要綱」
・第4回講座&実技「壁(組積造)の施工要綱」
・実技「ベンチ作成」
・第5回講座「建設現場での品質管理およびマネジメント」
大半の講座は、2〜3日間の日程で、回によっては参加者をいくつかのグループに分けて実施。一連の講座を通じて、建物倒壊の原因や耐震技術の基本、耐震技術を中心とした建築・建設技術、現場運営の方法などを詳しく指導しました。たとえば「基礎の重要性」の講座では、基礎建設のさまざまな方法、基礎の形と力の加わり方、測量法、梁の役割、掘った後のレベルの取り方などを紹介。8月30日実施予定の最終講座では、建設現場の運営方法などを指導します。修了者は12人になる見込みです。加えて、講座ごとの参加も受け付けたため、各回とも地元の技術者に中心に計20〜30人が参加しました。
写真左:実技のトレーニングに集まった人びと
写真右:真剣にトレーニングに取り組む
(C)Peace Winds Japan
毎回受講しているヘイダリさん(39歳)は、地震で新築3カ月の家を失いました。その家のローンを支払い続けながら、将来の住宅建設資金を貯めています。ヘイダリさんは、震災による自宅倒壊の苦い経験から、どうしても地震に強い家を建てたいと希望。当初、参加予定だった弟に代わって第1回講座に参加し、PWJの耐震技術にほれ込みました。休憩時間にもPWJスタッフに熱心に質問し、自分の思い描いている理想の家について、熱く、話します。
トレーニングコースについて、PWJイラン駐在スタッフの大久保信寛は「この地域には元々、高い建築技術があったが、近代的な技術が入ってきたこともあって、伝統が断ち切られてしまっていたように思う。レンガをつくるときには水に30分くらい浸すこと、コンクリートの混ぜ方一つで強度が大きく変わってくることなど、技術者が忘れかけていた基礎を確認する重要な機会にもなっている」と評価。PWJは、今期のトレーニング終了後、9月から同内容のトレーニングを実施し、耐震技術の普及をさらに推進していく計画です。