水のない過酷な状況で生きる人びと
本格的な雨期を迎える6月までに、来期の井戸掘削事業のためのニーズ(必要性)調査を終えるため、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)スーダンチームの一員として、連日フィールドへ出かけています。スーダン南部ジョングレイ州の拠点ボーの町から車で数時間かかる村々を訪れては、一番近い井戸までの距離や飲み水をどうしているのかなどの確認を続けています。過酷な状況のなかでも強く生きている人たちの姿は、感動的ですらあります。
(C)PWJ/Yukari NISHINO
ニーズ調査を行う前には、現地の行政府と調整をし、どの地域で調査をするかを確認し合います。行政側は、その地域に詳しい人を案内人としてつけてくれるので、案内人とともに調査に向かいます。必要な情報は村や地域によって多少の違いはありますが、集落の戸数や一番近い井戸までの距離、飲み水としてどういう水を使っているかなどの情報は欠かせません。この飲み水には、ため池の水、雨水、川の水などがあります。より大きなコミュニティのリーダーからは、彼らが考えるニーズの高い地域とその理由を聞くようにしています。
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また、水くみに従事するのは主に女性であることから、女性たちから聞き取り(ヒアリング)をすることで、実際の水のニーズがよくわかる、ということもあります。現地の女性は、女性スタッフ相手の方が話しやすいようですので、女性の聞き取りはなるべく女性スタッフが行うようにしています。こういったところに現地の文化・習慣を感じます。(ちなみにこちらでは女性が力仕事をするのが普通なため、PWJの現地人スタッフも、「きみの方が力持ちだから、これ持って」と普通にいってきます・・・)。
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驚くことに、乾期には集落内の水がなくなってしまうため、集落ごと川べりや湿地帯に移住するという人びとがかなりたくさんいることがわかりました。長い場合は何日もかけて移動するため、体の弱い人や老人は居残り、乾期の間じゅう留守番をする、というのです。
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ボーから車で約7時間半のところにある「ガール2」という村を訪れたときのことです。みたところ60歳くらいのおばあさんがぽつんと木の下に座っていました。家族は木のそばの古いトゥクル(家)を離れ、水場で生活しています。「水はどうしているのですか?」と聞くと、「ときどき近所の人が、ため池からくんできてくれる」とのことでした。しかし、近所に人の気配のする家は見えず、近所の人といってもかなり遠くに住んでいるようです。乾期終盤のまだまだ暑い真昼に、たったひとりでじっと座っている姿が目に残っています。
ボーから8時間ほど離れたパニャンという村では、手掘りの井戸を見せられましたが、これはちょっと感動的でした。PWJのこれまでの活動地域では、地下70m近くまで掘らないと質量ともに十分な水が出ないため、井戸は機械で掘削しているのですが、この村のおじいさんが私たちに少し誇らしげに見せてくれた井戸は、地面を15m以上、手で掘って作ったものでした。
水は濁っていて、くみに来ている人たちも「こしても色が変わらないし、病気にもなるので、本当は心配」といっていましたが、乾期に村を見捨てて移住せざるをえない人びとがいる一方で、村に残って生きていこうとする人びともいるということに、人間の強さのようなものを感じました。
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