もう少しだけ待っててくださいね、「小さな丸」さん
2008年1月より、これまであまり支援が届いていなかったアユッド郡での調査を新たに進めてきたピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、2月に入って調査チーム派遣のペースを上げ、井戸を建設するコミュニティを決めるとともに、井戸掘削場所の選定をほぼ完了し、コミュニティとの「井戸建設に関する覚書」の締結も進めてきました。今週すでに最初のコミュニティでの井戸掘削を完了しました。3月よりは井戸掘削をさらに本格化し、この地域で合計15本の井戸を建設する予定です。
地域の代表者と、コミュニティから選ばれた井戸管理委員会の各委員、そしてPWJの代表者との間で取り交わすこの「覚書」には、それぞれが責任を持って行う役割が記されているほか、コミュニティの人びとから井戸管理委員会の委員を選ぶことや、男性と女性の委員を同数とすること、などが明記されています。こうした内容について関係者の間で取り決めることによって、この事業は、井戸建設を直接担当するPWJだけで進めるものではなく、コミュニティとの共同作業であることを認識してもらうとともに、コミュニティの意思決定に、男性と女性双方の意見が同等に反映されることなどを目指しています。
写真左:木立ちを抜けコミュニティに到着
写真右:同行した政府関係者と話し合う
(C)PWJ/Kaoru TAKAHASHI
この覚書を締結する時は、選ばれた井戸管理委員の皆さんに集まってもらうのですが、委員の方だけでなく、近くに住む人びとや子どもたちまで集まってきて、その顔は皆真剣そのものです。井戸管理委員会の役割や、井戸掘削場所を説明し、人びとの理解を得た上で、委員会の委員一人ずつ、覚書に署名してもらうのです。
覚書に署名する委員たち
(C)PWJ/Kaoru TAKAHASHI
自分の番になり、真剣な面持ちで覚書に署名する女性委員の手元をふとみると、そこには小さな丸(○)が。これまで文字を学んだことのない彼女は、人びとが見守るなか、覚書の署名欄に自分のサインとして、この「小さな丸」を書いてくれたのでした。
「小さな丸」が書かれた覚書
(C)PWJ/Kaoru TAKAHASHI
委員の一人に選ばれた、この女性の喜びの言葉です。「今は、毎日往復4時間もかけて、遠くの井戸まで水くみに行っています。1回に運べるのはこの器に入る分だけ。雨の降らない乾期には、食事の回数を減らさなければならないこともあります。これまで50年生きてきて、きれいな水を手に入れられるのは初めてです。本当にありがとう。」
きれいな水が得られるのを喜んでくれた女性(右)
(C)PWJ/Kaoru TAKAHASHI
こうしてコミュニティの人びとの思いが込められた覚書が結ばれ、今週最初の井戸の掘削を始めることができました。小さな丸を書いてくれた、あの女性の住むコミュニティに井戸ができあがる日は、もうすぐそこまで来ています。
集まってきた子どもたちとPWJスタッフ
(C)PWJ/Kaoru TAKAHASHI