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コラム&インタビュー

【ウクライナ・それぞれの4年(1)】イグナット・トゥレンコさん――前線付近からペットの救出活動を続ける

広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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トゥレンコさん=左

戦時下で厳しい生活を送るウクライナの人びとを支援してきたピースウィンズは、さまざまな現地団体と協力して事業を行っています。その中のひとつがウクライナ東部のドニプロ市を拠点とするNGOセーブ・アニマルズ・ウクライナです。

この団体は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月の翌月に活動を開始。戦闘の激しいウクライナ東部や南部でペットと共に生活する人の自宅や避難所などにペットフードやワクチンを届ける活動からスタートし、生き物を連れて退避できない人のペットや前線付近に遺棄された動物などを保護して新しい家族とつなぐ譲渡活動などによって、これまでに3,400匹以上の動物を助けてきました。そこでボランティア活動の中核を担うイグナット・トゥレンコさんに話を聞きました。

人とペットの関係は特別なもの

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――どうして動物保護の活動を始めたのですか?

トゥレンコさん:ロシアによる侵攻が始まってから半年間、国を守るため軍の仕事につきました。その後ビジネスの世界に戻りましたが、仕事で使う大型車を持っていたので、前線に近いハルキウなどから逃げる人びとの退避を手伝うようになりました。そのうち、友人がセーブ・アニマルズ・ウクライナを立ち上げたのですが、普通乗用車しかなくて救出できる動物の数が限られていたので、私の大型車を使って一緒にやることにしました。

2023年にはヘルソン州でカホフカダムが破壊されたことにより大規模な洪水が発生。この時、水の中から動物を救出するセーブ・アニマルズ・ウクライナの活躍が大きく報じられ、寄付も得られるようになって組織は大きくなりました。

今ではボランティアで構成される2つのチームが、ペットを置いて退避せざるを得なかった人びとの要請を受けて前線に近い地域に救出に向かっています。当初は遺棄された犬や猫を見つけられる限り助け出していましたが、シェルターの収容能力を超えたので、今は元の飼い主や新しい家族など「行き先の決まっている」生き物に絞って救い出しています。

昨日は40羽の鶏と2匹の豚を、先に退避していた元の飼い主に届けました。

――農家ですか?

トゥレンコさん:いえ、農家ではなく、普通の家族です。ウクライナの地方では、広い敷地の中でこうした生き物を飼っている家がたくさんあるのです。

――戦争はペットにどのような影響を与えていますか?

トゥレンコさん:爆撃音が続く前線付近に遺棄されて怯えていた犬たちは、噛みついたり、吠え続けたり、問題行動が見られることがあります。落ち着くまでに長い時間のかかる犬もいますが、新しい家族に迎えられた犬の多くは徐々に落ち着きを取り戻していきます。

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――前線付近に動物を救出に行く時は防弾チョッキをつけたり、できるだけ短時間で活動を済ませるなど安全に配慮しているそうですが、それでもリスクはゼロではないと思います。どうして危険があるにも関わらず活動を続けるのですか?

トゥレンコさん:ふつうに暮らしていても、今のウクライナに「安全」な場所はありません。それに前線で戦っている兵士に比べたら私たちのリスクは小さい。これが今の私たちにできることであるならば、この活動でウクライナの人びとの役に立ちたいと思います。

人とペットの関係は特別なものです。戦争が始まったとき、最も優先順位が高いのは人の命を救うことなので、ペットは一緒に退避できないことがありました。そういう場合に後から救出したペットを届けると、飼い主の喜びはもちろん、犬も精一杯尻尾を振って全身で喜びを表します。それは本当に幸せな光景です。ペットに出会えた新しい家族の喜びも同じです。

前線地区からのペット救出は大変ですが、再会や出会いの喜びを目にすると、やりがいを感じます。オーストラリアの女性で怪我や障害のある保護犬を4匹も引き取ってくれた人がいるのですが、この人が犬と一緒に幸せそうにしている写真をSNSにあげているので、それを見ても、この活動をして良かったなと思います。

初めてのコーヒーと初めての犬

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ペレア・ファミリー・ロースタリーの仲間たちと

――ところでトゥレンコさんの本業はコーヒー屋さんで、経営するペレア・ファミリー・ロースタリー(Perea Family Roastery)は、2021年のウクライナの焙煎チャンピオンになったそうですね。

トゥレンコさん:はい。2019年にコーヒー豆の焙煎と販売を始めて、2021年には焙煎選手権のチャンピオンに選ばれました。去年はウクライナ代表として台湾国際焙煎大会にも出場しました。残念ながらチャンピオンにはなれませんでしたが、いつか勝ちたいと思っています。

――人が生きていく上で不可欠なものではないけれど、コーヒーとペットには生活を豊かなものにするという共通項があるような気がします。

トゥレンコさん:ええ、同感です。コーヒーもペットも人生に大きな喜びをもたらしてくれます。最初に飼った犬と、人生最初のコーヒーは忘れられないものです。その意味でも似たところがあると思います。どちらも大切にしたいものです。

――ありがとうございました。安全に気をつけて活動を続けてください。

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生後2ヶ月の保護犬マーリーを撫でながら。レゲエが好きなのでボブ・マーリーから名前をとった

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広報:ピースウィンズ国際人道支援 ジャーナル編集部
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