【バングラデシュ】福祉用具で生活が改善!障害者の自主性を高める支援を行いました!
ピースウィンズはバングラデシュ東南部のコックスバザール県でロヒンギャ難民と地元住民を対象として、彼らが主体的に自らの健康を守って行けるように支援活動を行っています。その一環として、障害者や高齢者、その家族を対象として生活面でのサポートの仕方や福祉用具の適切な使い方などを伝え、身体が不自由な方の自立を支援するための福祉用具を配付しました。体を動かすことが困難なことにより、体調や状態が悪いときでも通院を諦めてしまいがちな人々に、杖や車いすなどを配付して自力での移動を促し、彼らの必要時の医療サービスへのアクセスや生活環境を改善することがねらいです。
福祉用具の使用モニタリングでは、配付を受けた身体障害者の方から生活の質が良くなったという声が聞かれました。今回はその中から2名の声を紹介します。
●車いすによって自力での移動が容易になったカレダさん
車いすに座り笑顔を見せるカレダさんは、コックスバザール県の住民で、生まれつき足がありません。このため移動には家族の手を借りなければならず、母親や、結婚をしてからは夫に移動を介助してもらいながら生活をしていました。近隣へは一人でも外出することがありましたが、手を使って体を引きずるようにして移動せねばならず、体も汚れ、少しの外出でもとても疲弊してました。その状況を改善しようと杖などの移動の助けになる器具を購入することも考えましたが、家計にその余裕はなく諦めてしまったそうです。5年前にはNGOが近隣の3家庭で使用できる共同トイレを設置してくれたこともあったが、身体障害による困難を軽減することに視点を置いた支援を受けたことはなく、それ以降この地域にNGOが来たことはなかったと言います。
ピースウィンズは福祉用具の配付対象者を的確に選ぶために、候補者の障害の種別だけでなく、家庭環境や居住環境についても調査を実施しました。カレダさんはホストコミュニティと呼ばれる難民キャンプ周辺の村に住んでおり、家の周りに広いスペースがあって、カレダさんが自分で腕を使って車椅子に乗り降りできることから、車椅子を配付することが効果的であると判断し、カレダさんを配付対象者に選定しました。
カレダさんは、ピースウィンズが育成した保健ボランティアからの支援を受けて周囲や生活が変化したと、その喜びを語ってくれました。
「車いすを配付してもらったことによって、生活の質がとても改善されました。家の中でのちょっとした用事をするのにも、今までは家族の手を借りなければなりませんでしたが、今では車いすを使って自分で移動でき、家族の手が空くのを待たずにいろいろなことが自分でできるようになりました。体調が悪くなった時に一人で病院に行くこともできます。自分でできることが増えたことが本当にうれしいです。ピースウィンズは車いすをくれるだけでなく、家族に車いすのメンテナンスの仕方や、私のような身体障害者がどんな困難を持っているか、どんな介助が効果的かといった情報を提供してくれました。そのおかげで、家族の視野が広がり、これまで足がないために難しいと感じていた日常の雑務を引き受けてくれるようになりました。この他にも改善されたことがあります。雨季には特に地面がぬかるんで、屋外にあるトイレまで移動するのがとても大変でした。車いすのおかげでトイレに行きやすくなり衛生面の改善にも繋がって、とても助かっています!」
●ポータブルトイレの配付を受けたミナラさん
ロヒンギャ難民としてバングラデシュに逃れてきたミナラさんは3人姉弟の長女です。生まれつき両足が不自由で歩くことができません。このためミナラさんは、トイレへ行くことや介助を家族に頼らなければなりませんでした。しかし地域の共同トイレは家から遠く、特に夜間はキャンプ内の治安が悪くなるため、家族にトイレへ付き添ってもらわなければならないことに申し訳なさを感じていたと言います。また、トイレに間に合わなかった時に、自宅の衛生環境が悪くなってしまうことも辛かったそうです。この状況を調査した私たちは、ミナラさんへのポータブルトイレの配付を決定しました。
ミナラさんは配付を受け、こう話してくれました。
「ピースウィンズが私の状況を理解し、ポータブルトイレを配付してくれたことは、私だけでなく、家族にとっても喜ばしいことでした。私も家族の手を煩わせずに済むし、家族も遠いトイレまで付き添いをせずに済みます。女性だけでトイレに外出することはキャンプ内の治安を考えるととても怖かったのでその不安を感じなくて済み、とても嬉しいです。また、いつでもトイレに行けるようになったことで、自宅の衛生状態を保つこともとても容易になりました。」
ミナラさんは、啓発活動への参加も家族にとって良い効果をもたらしてくれたと言います。
「バングラデシュに逃れてきて経済状況が悪くなったことや、私が障害を持っているために私の世話をせねばならず、私が結婚をして家を離れることもできないことによって、家族はいら立ちを感じていたように思います。でも、保健ボランティアが私たちを啓発活動に誘ってくれたことによって、以前に比べて家族の中の雰囲気がやわらかくなり、以前よりきめ細かく私の介助をしてくれるようになったと感じています。私たちは高齢者と障害者との接し方のセッションに参加しました。そこで得た知識が生活の中で生かされているのだと思います。」
福祉用具がカレダさんやミナラさんの自立した生活に役立っていること、活動で実施した啓発活動によって当事者だけでなく家族にも良い影響があり、生活環境が改善したことが聞き、私たちもとても嬉しい気持ちになりました。ピースウィンズはこれからも誰も取り残さない持続可能な支援を続けていきます。皆様からの継続的なご支援が私たちの活動の大きな助けとなっています。これからも温かなご支援をよろしくお願い申し上げます。
※ピースウィンズの活動は、ジャパン・プラットフォームからの助成金や個人・法人の皆さまによるご寄付により、実施しています。