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【ブルキナファソ】肝炎問題を知ろう2 世界トップレベルの日本の肝炎対策

前回に引き続き、長く肝炎問題に携わってきたピースウィンズの榛田に、日本の肝炎対策と世界的な肝炎克服の取り組みについて、話を聞きました。
 
――日本の肝炎対策の経験は、ブルキナファソの役に立ちそうですか
 
7月に来日されたカニア博士(国立ムラズ研究所/患者団体「アソー・エパティット(肝炎とたたかう)」創設者・名誉会長)、サノンさん(B型肝炎当事者/患者団体「SOS肝炎ブルキナ」代表)も、日本の肝炎対策の取り組みには、大きな関心を寄せていました。置かれた環境や条件が違っても、向き合っているのは同じ病気です。お互いの国の取り組みから、学ぶことがたくさんありました。
 


第11回世界日本肝炎デーフォーラムにて

 
日本は世界の国のなかでも、もっとも肝炎対策の進んだ国の一つと言われます。医療技術の進歩とともに、献血のスクリーニング、母子感染防止事業、治療費の助成制度、ワクチンの定期接種化など、啓発や予防、治療のための対策を積み重ねてきました。その中でも、特にお二人が「財政的な制約が大きいブルキナファソでも、すぐにも取り組めるのではないか」とおっしゃっていたのが、ウイルス性肝炎に関する啓発活動の取り組み=「肝炎医療コーディネーター」の育成です。
 
――「肝炎医療コーディネーター」とは何ですか
 
「肝炎医療コーディネーター」とは、肝炎対策基本法にもとづいて、全国の都道府県で育成している人材の名称です。その目的は、「肝炎ウイルスへの新たな感染を防止し、肝炎医療の水準を向上させるためには、肝炎の予防及び医療に携わる人材の育成が重要である。このため、肝炎ウイルスへの新たな感染の発生の防止に資するよう、肝炎の感染予防について知識を持つ人材を育成するとともに、肝炎ウイルス感染が判明した後に適切な肝炎医療に結びつけるための人材を育成する必要がある」とされています(「肝炎対策の推進に関する基本的な指針」)。
 
肝炎のウイルス検査を受けること、感染が判明したら治療方針を定めるために受診すること、適切な治療を続けること、市民・患者さんのこのような行動を促進するのが「肝炎医療コーディネーター」の役割です。
 

※参考・出典:厚生労働省のページ(肝炎医療コーディネーターとは) 
 
――全国で育成に取り組んでいるのですね
 
はい。もともとは山梨県で、このような人材の育成が先進的に始まりました。現在は全国で取り組まれていますが、その「育ての親」とも言われるのが、佐賀大学の肝疾患センターで、前センター長を務められた江口ゆういちろう先生です。私自身、ピースウィンズのスタッフとともに、何度かお話をうかがっていますが、佐賀県では、大規模な広報活動や、この肝炎医療コーディネーターの育成などによって、20年以上つづいた「肝がん死亡率全国ワースト1」の地位を返上しています。ブルキナファソのお二人も、来日中、佐賀県を訪問して、江口先生からお話をうかがっています。
 
なぜ、この制度が重要なのかですが、私(榛田)の理解ですが、肝臓は「沈黙の臓器」とよばれ、肝炎にも自覚症状がほとんどありません。自覚症状が出たときには「手遅れ」ということも少なくないのです。普通の感染症や病気ですと、「痛いから病院に行く」ということで適切な治療につながるケースも多いと思いますが、そうではなくて、たとえ自覚症状がなくても、きちんと病気に対する理解をもって、検査や治療を受けることが大切になるからだと思います。
 
――重症化を防ぐことが大切なのですね
 
そうなのです。また、B型肝炎やC型肝炎に感染していることを知るのは、消化器内科、肝臓内科とは限りません。むしろ、それ以外の場所で知ることがほとんどではないでしょうか。献血のとき、手術、入院や老人ホームへの入居のとき(感染症の検査を一通り受けます)など、肝臓専門の先生がいないところで感染を知ります。
 
その時に、適切な知識とアドバイスを得られるかどうかは、その後、きちんと治療を受けて健康に過ごせるか、適切な治療を受けられないまま、重症化してしまうか、大きな分岐点にもなります。
 
そこで、病院の肝臓のお医者様だけでなく、看護師や技師、職員のみなさん、薬局のみなさん、あるいは行政の窓口やコミュニティのリーダーなど(患者さん当事者もふくむ)、肝炎の知識をもった方を多数育成して、各所に「配置」する。それぞれの方が、自分の近くで肝炎ウイルスに感染している方に出会ったら、検査や治療を受けるように声をかける、相談にのる、そういうことで、患者さんの行動をうながし、検査や治療につなげているのです。
 


肝炎医療コーディネーターが活用するための広報物を手に江口先生(左端)からお話をうかがう(佐賀県、江口病院にて)。

 
――ブルキナファソでも役割を発揮しそうですね
 
はい、そのためにも現地の調査が肝心だと思っています。
 
患者さんの行動変容を促すためには、どういうメッセージを伝えることが大切なのか。これは文化も異なりますから、日本のやり方をそのまま持ち込むことはできません。研究、開発が必要です。そして、そのメッセージを伝える人たちを育成していく。ピースウィンズが、現地ニーズ調査をふまえて本格化させていくアフリカの肝炎対策支援事業の中では、このことにも取り組みたいと考えています。また、その際、現地では医療資源も限られているとのことですから、現地の患者・当事者の方たちが、肝炎医療コーディネーターの重要な担い手になるのではないか、とも今は思っています。
 
――日本の経験や技術をいかして、肝炎克服のとりくみに貢献する、と
 
日本は、世界的に見ると、もっともウイルス肝炎対策の進んだ国の一つと言われています。WHOも、ようやく2016年の年次総会で肝炎の「排除(elimination=エリミネーション)」の目標を掲げ、その達成を各国によびかけています。
 
しかし、達成は容易ではなく、B型肝炎とC型肝炎の両方で目標を達成できる可能性があるのは、日本一カ国しかないのでは、という分析もあります(図参照)。
 

 
そのような日本の肝炎対策を進める上では、医療関係者、行政や政治など、多くの方の努力があったと思いますが、患者・当事者のみなさんの運動も大きな貢献をしてきました。このような当事者の運動やローカルな市民社会の取り組みが、肝炎の克服にむけて果たす役割の大きさは、2021年の医学雑誌「Trop Med Health」でも紹介されています(2021年)。
 
私はピースウィンズ入職前から、西アフリカのブルキナファソから肝炎の患者団体の代表を招き、日本の肝炎の患者さんなどと交流するという企画の実行委員会・事務局長を務めてきました。置かれた場所も条件も異なるけれども、同じ病気の人同士の交流と協力には、心をうたれました。
 

 

 

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