冬が来る前に—国内避難民への越冬支援を展開
11月も終わりが近づき、気温が40度を超える酷暑の夏から一転、イラクにも冬がやってきました。現在の気温は日中で18 度前後ですが、日が暮れると5度くらいまで下がり、吐く息が白くなります。また、雨の降る日も多くなりました。本格的な冬が来る前に必要な支援を届けるため、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ) は、本年4月から開始した国内避難民(IDP)への支援活動を強化しています。
テントで寒い冬を過ごす
(C)Peace Winds Japan
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、戦乱により国内外に避難しているイラク人は合計440万人(総人口約2,900万人の15%)で、うち200万人が国内に留まっています。200万人のうちの多くは、2006年2月に発生したサマラでのモスク爆破事件以降、主要都市を中心に激化する戦乱から逃げてきた人びとです。都市部の住民にとって、慣れないテント暮らしはつらく、初めての冬は大きな試練となっています。
PWJは、UNHCRおよび国際移住機関(IOM)の協力を得て、テント生活者を中心に4ヶ所のキャンプで生活する、のべ11,532人のIDPに対し、総額約71万8千ドル(約8,600万円)にのぼる越冬支援を展開しています。
=デラルークIDPキャンプ
=ギルダセンIDPキャンプ
(C)Peace Winds Japan
治安改善のめどが立たない中、支援活動を決定する際には、短期のニーズだけでなく、中・長期にわたって活用しうるものとなるように考慮しています。灯油や石油ストーブ、ビニールシート、冬服などの短期的に必要な物資の配布とともに、長期間のテント暮らしを可能にするためのコンクリート床の敷設や保護壁の設置、簡易水道施設の整備や、アラビア語で学ぶ生徒のための学校修復と増築、雇用創出のため技術訓練や収入向上支援など、幅広い活動を行っています。また、さらなる支援を行うため、UNHCRなど関係機関との協議も続けています。
(C)Peace Winds Japan
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PWJが活動しているイラク北部は、治安が比較的安定していることもあり、人口が急激に増加しています。避難民の流入に加え、2003年イラク戦争以前の戦乱により避難していた人たちの帰還もみられます。イラク情勢の悪化が長引く中、さらなる避難民が発生するのを予防するため、病院や診療所の建設といった、帰還が進む遠隔地での復興活動も並行して行っていきます。