修復工事が完了した学校で授業再開
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は2009年8月から、イラク北部ドホーク州の西端、トルコとの国境沿いにあるザホ市で、小学校の増築・修復工事を進めています。増築工事は2010年1月完成の予定ですが、修復工事はこのほど終了し、真新しい校舎で授業が再開されました。
ザホ市は、1991年の湾岸戦争以降、経済制裁下にあったクルド地域で唯一認められた物資の入口であり、現在、トルコとの貿易の中継点として復興が進んでいます。市の統計によると、人口もこの15年間に約3倍の23万人になりました。
しかし、2003年までの経済制裁やそれ以降の不安定な治安、市の予算不足などのため、教育環境の整備は遅れています。そのうえ、人口増加による急激な児童数の増加により、学校の教室不足が深刻になっています。ほとんどの学校では、朝と昼の2交代制を取り入れていますが、それでも1クラスの人数は50人を超えています。さらに人口が過密な地区では、朝・昼・夕方の3交代制で運営されている学校もあり、児童や教員の負担が大きくなっています。
PWJでは、ザホ地域教育局長からの要請を受け、教育局や教員たちから聞き取り調査を行って、3交代制で運営している市内の学校のうち、ゴラン区のザグロス小学校とジュワン区のラワン小学校の2校をに、それぞれ6教室を増やす工事を行うことを決めました。また、ザグロス小学校については、校舎の傷みもひどかったため、修復工事も実施することにしました。
この修復工事のため、ザグロス小学校は9月中旬から臨時休校となっていましたが、10月15日に校舎内の修復工事が完了したため、10月17日から授業が再開されました。教室内のひび割れや割れた窓ガラス、ドアが修理され、新しいペンキが塗られた教室内で、子どもたちが授業を受けています。また、中庭の天井には、雨の進入を防ぐため、半透明パネルの「屋根」をつけました。これまでは、雨が振ると廊下や教室まで水が入ってきたため、落ち着いて勉強できませんでしたが、これからは雨を気にせずに勉強できるようになりました。
ザグロス小学校の女性教員は「まるで新しい教室みたい。子どもたちの顔もいきいきしているように見えるし、雨や風で窓が開いたりすることがなくなったので、落ち着いて授業ができるようになりました」と話してくれました。
PWJでは引き続き、ザグロス小学校とラワン小学校での増築工事を進めています。
※この事業は、外務省の日本NGO連携無償資金協力を得て、実施しています。